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第三話 " 抗太の抗はあらがう "

 


 …もう何日が経過しただろうか。同じドラゴンと同じ時間に眠り同じ時間に起床。そして食料集めに行き身体を鍛える。


 はっ!俺は何日か分からないなんて失敗はしない。ちゃんと岩に線を引いて数えてたもんね!遭難した時とかに使うといい。遭難しないのが一番だけど。


 今日で三週間が経過した。ドラゴンとはもう親友(いっぽうつうこう)だ。


 相も変わらず同じルーティンをこなし、絶望(エセゼンマイ)を避けて食料を探す日々。

 しかし抗太は不思議と飽きる事は無かった。現実だって、起きて学校行って部活して飯食って寝るのルーティンだったし今更である。


 一つ変わったとすれば



 「最近全然疲れないな」


 そう、森の中で走ったり木登りしたりする程度では全く疲れなくなったのだ。

 川の中で無ければ、スクワットや腕立ては千回程度でギブアップしてしまう。腹筋も同じだ。

 どうやら成果はあるみたいだが、抗太は油断しない。

 せめて一万回出来る様にならなければ安心は出来ないと踏んでいる。

 ここは異世界、たかだか千回で慢心していてはいつ命を落とすか分からない。


 あ、因みに自作の斧を作った。木の実を割るのに使えて便利だし自分を守る道具にもなる。一先ずは安心だろう。


 慣れた手つきで食料を採取し、ある程度集まれば拠点へと帰る。


 ここ三週間で分かった事は、苦味が強ければ強い程次の日の体調が良くなると言う事。良薬口に苦しとはこの世界でも通用するみたいだ。とは言え、絶望は絶対に食べない。


 ドラゴンはいつも同じ時間に飛び立ち同じ時間に帰って来る。もう見慣れた光景になった。


 どうして気付かれないか未だに分からないが、運が良いと思っておこう。


 「さてと、今日もやりますかね〜」


 ドラゴンが飛び立った後に大きく伸びをすれば川辺でいつも通りのルーティンをこなし始める抗太。


 だが、今日は何故か胸騒ぎがする。


 ふるふると首を振り基礎トレに集中しようとしたその瞬間、


 凄まじい轟音が鳴り響き、思わず耳を塞いでしまった。


 「は…ちょ、何何!?」


 まさかドラゴン帰ってきた!?と焦りを隠せない抗太。慌てて岩陰に隠れて様子を伺う。


 その音は上空から聞こえている様で、金属音やドラゴンの声らしきものが聞こえる。

 縄張り争いかと思ったが、その予想は覆された。


 ドスン!!


 と巨躯なドラゴンが地面へと落下してきたのだ。その衝撃で地面は揺れ、鳥達も焦った様に上空へ羽ばたく。



 「ど…ドラゴン!!」


 目の前に倒れているのは、いつも一緒に眠っていたドラゴンだった。

 全身に切り傷の様なものを負い、息も絶え絶えの様子。


 誰がこんな事を…と辺りを見回すと、ドラゴンより一回り小さい飛龍に乗った騎士と思われる人物が数人取り囲む様に降下し飛龍から降りた。


 「──…、── 」


 「 ───── … 。」


 言葉が分からん。でも、ドラゴンを落としたのはこいつらで間違い無さそうだ。


 息を潜めながら観察を続けると、騎士の一人がナイフを取り出し、いきなりドラゴンの爪を剥ぎ出した。


 ぎゅぅ!と苦悶する様な声を上げ、抵抗しようとするも光の縄の様な物で固定され動きを封じられてしまった。


 ちょちょちょ…マイフレンドに何してんだコラ!!痛がってるだろおい!


 等と身を晒して言う度胸も無い。


 一本目の爪を剥ぎ取られ、次は二本…三本と剥ぎ取られていく。


 剥ぎ取られる度に辛そうに声を漏らすドラゴンに、抗太は強く拳を握り締める。


 何がマイフレンドだ。勝手に友達名乗っといて助けないなんて、都合よく友達って言葉を使ってただけじゃねえか。


 …そんなのは嫌だ。勝ち目がなくたって、このドラゴンを逃がす時間さえ稼げればいい。


 大丈夫だ、俺は死なない。死ぬことにも抗う。諦めないが俺の取り柄だ。

 抗太の抗はあらがう!運命に抗え…!


 無謀にも岩陰から飛び出すと、石の斧を持ち騎士達へと特攻する抗太。

 騎士達も虚をつかれた様子で身構えるのが遅れる。


 「う……ぉぉぉぉぉぁぁ!!」


 石の斧を一人の騎士めがけ振り下ろすと、鈍い音を立てて兜が割れ地面に叩きつけられる。


 自分の力に驚く暇もなく、今は目の前の騎士の注意を引く為に斧を振り回す。


 相手も抗太へと斬り掛かるが、抗太の目にはその剣が酷く遅く見えた。

 剣筋を読み回避すれば、腹部へ一閃斧を振り抜き騎士を吹き飛ばす。


 川に入れば回復されてしまう為、なるべく川から距離を取り戦う抗太であったが戦闘など初めての素人。

 相手はドラゴンをも仕留められる精鋭達だ。虚をついた攻撃で三人程度は倒せたものの、まだ人数がいる。


 「…この光の縄さえどうにか出来れば!」


 足元に転がる石ころをがむしゃらに騎士達へ投げつけ怯んだ隙に、抗太は光の縄に手を掛けて引っ張る。


 …ビクともしない。ドラゴンを縛る縄だ、やわな訳がない。

 それを承知で抗太は紐を引っ張り続けた。


 石で作れる隙などたかが知れており、直ぐに体勢を建て直した騎士達は抗太へと斬り掛かった。


 抗太は…避けない。無防備な背中を斜めに切られると、鮮血が飛ぶ。



 〜…!! 熱い……痛い痛い痛い…!!!



 今すぐにでも手を離して川へ入りたい。でも離してしまえばドラゴンが殺されるかも知れない。


 だったら瀕死まで壁になろう。俺は…絶対諦めない!!


 頭の血管がはち切れんばかりに手に力を込め引っ張り続けると、ミシリと音を立てて縄の一部が細くなる。

 それを見た騎士は慌てて抗太に再び斬り掛かるが、抗太は倒れない。

 精一杯力を込めて斬っているのに両断を果たせないのだ。


 痺れを切らし首元を狙い定め剣を振り抜くと同時に、一本の縄が千切れる。


 「っしゃおらぁぁぁ!!」


 ガッツポーズを取る動作で運良く剣を躱すと、ギロリと背中を切った相手を睨みつけ"次はお前だ"と言わんばかりに迫り寄り斧を振り下ろす。


 が、盾で防御されてしまい斧も衝撃に耐えきれず壊れてしまった。


 くそっ…万事休すか。と考えた刹那、突然地響きが全員を襲う。

 ドラゴンが暴れだしたのだ。

 四本の縄の内の一本が無くなった事により抵抗が可能になったドラゴンは身を捩り縄を解こうとする。


 それを抑えに入ろうとした騎士を、抗太は素手で殴り飛ばした。


 「いったぁぁぁ…、じんじんするぞ手が…!」


 しかし、何としても行かせまいとファイティングポーズを取り相手の前へ立ちはだかる抗太。


 その気迫に一歩足を引いてしまう騎士達だが、プライドからかそのまま剣を構えて距離を詰めてくる。


 「焦って動きが見え見えだぜっ!」


 先行してきた相手の攻撃を回避し上段蹴りでカウンターを合わせつつ、その後ろから迫るもう一人の騎士の攻撃を身体に少し受けつつも左フックでカウンターを入れてダウンさせた。


 あとは一人。痺れる頭を何とか動かしながら、最後の一人に詰め寄った瞬間、腹部に強烈な痛みが走った。


 視線を下げて痛みの原因を確認する。


 矢だ。光の矢が俺の腹に刺さってる。これはヤバい。


 力なくその場に膝を付くと、矢は消えて穴の空いた腹を手で押さえて止血を試みるが血は止まらない。


 口内に鉄のような味が染み渡る。これはあの時と同じ…俺が車に引かれた時もこんな味がした。


 最後の騎士が指を銃のようにして構えると、そこに光が凝縮されていく。



 また死ぬのか、俺は。こんな所で…ドラゴン一体助けられず死ぬのか。




 そんな事は絶対に許されない。俺は死にたくない…死んでなるものか。




















 抗え。



















 プツリと抗太の思考はそこで途切れた。

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