第二話 " 絶望 "
暇潰しでもご覧頂けたら嬉しいです(´ω`)
どれほどの時間眠っていただろう。薄らと瞼を開き、ぼんやりと抗太の意識は覚醒していく。
身体の痛みはまだあるものの、動けないという程でもない。
ちらりとドラゴンが居た場所へ慎重に目を向ける。
周りは月明かり(月かどうかは知らないが)に照らされ、川は七色に輝いて見える神秘的な景色が広がっていた。
ドラゴンは相変わらずとぐろを巻いている。鼻息の様なものが聞こえる為、眠っているみたいだ。
取り敢えず目を覚まし命があった事に深く溜息を吐き安心する抗太。
森からは鳥の様な鳴き声や何かがカサコソ動く音も聞こえる。流石に少し怖いので、岩陰から少し身を出して淡い光を浴び恐怖心を誤魔化す。
「綺麗だなぁ」
空を見上げながら、ぽつりとそんな言葉を呟く。
碧色に輝く月と思われるものは、自分がいた世界とは違いとても柔らかく包み込む様な光をしている。
当然街頭や街の光も無い為、より一層その美しさが際立ち心做しか天空を飾る星達が元気良く見えた。
拝啓、お父さん、お母さん。今僕は異世界に居ます。そちらの僕はどうなっていますか?燃やされて骨になってますか?
そうなったらもう戻れません。燃やさないで下さい。無理か。
はぁ、と重い溜息を吐き体重を岩に預ける。
もう元の世界には戻れないかも知れない。何となくそんな感じがしている。だけど、ずっと引き摺っていても仕方がない。
こうして新しい人生を歩ませて貰っているんだ。それは感謝しないとな…何処かの誰かさんに。
俺を転生させた誰か。恐らく神様だと思うが、転生する前には会ってスキルや云々を貰うと言うのがメジャーな筈だ。
しかし俺にはその記憶が無い。という事は、神じゃない誰かが俺を?
誰がなんの為にどういう理由があって…知りたい事は山程ある。
ま、焦っても仕方ないか。幸い俺にはこの川がある。怪我しても疲れても入れば元通りだ。
なら、森を歩き回る為の体力を身につけよう。ドラゴンが居ない時間帯を見計らって、身体を鍛える。
現実世界でもランニングや筋トレはしていたし、バスケとか野球、あとテニスにサッカー…まぁ色々やってたからトレーニングをして体力作りしよう。
後は食料だな。今は動物を狩る武器なんて持ってないし食べれそうな木の実や草を片っ端から集めるしかない。
やる事は山積みだなぁ。
しんどい。 一人ってこんなにしんどいものだったんだ。
孤独感を味わいながら、抗太は夜が明けるまで一人ジャンケンや一人しりとりで時間を潰した。
朝(あさ、あした)とは、陽が昇ってから正午までの間のある程度の範囲の時間帯のこと。 時には午前と一致する。
つまり朝が来た。あぁ朝!朝ってなんて素晴らしいんだろう!
俺はこの朝の為に生きてきた!朝最高!朝しか勝たん!朝エクストリームスーパー大好き!
はっ、駄目だ。余りに暇過ぎて色々した結果、最終的に自問自答してたら頭おかしくなってた。
陽の光を浴びて正気に戻った抗太は早速行動に移る。
ドラゴンはまだ起きる気配が無い。足音を殺しゆっくりと森の中へ入れば食料探しを始めた。
「ん~、向こうの世界でなら食えるものは大体分かったんだけど、ここじゃ全然役に立たん」
周りには一応菌類であるキノコの様なものや、胡桃みたいな木の実も存在している。
だが、如何せん食べれるかどうか分からない。
即死級の毒を持つ物を食べてころっと逝くなんて笑えない話だ。
しかし、あの川の中で食べれば…多分大丈夫だろう。うん、大丈夫。もし無理だったら次回作にご期待下さいって感じでお願いします神様。居るか知らないけど。
とにかく今は試す他が無い。抗太は片っ端から食べれそうな物をポケットや腕に抱えて運び、また取りに行き…を繰り返す。
時間は分からないが、日はかなり高く昇り気温も上がってきた。
額に滲む汗を袖で拭いながら、一休みに川近くの木陰で幹に座り凭れる。
「かなりの量を取ったけど、九割まともに食べられるかどうかだな 」
取ってきた食料を漁り抗太は一応食べれそうな物を選別した結果、見た目と匂いを考慮し凡そ九割九分が安全な食べ物から除外された。
予想はしていたものの、流石に残ったほんの少しの食料じゃ小腹を満たす程度にしかならない。
やはり川に入りながら怪しい物を食べるという選択肢しか無さそうだ。
そんな事を考えていると、突然突風が抗太を襲う。その風の方角へ視線を向ければ、どうやらドラゴンが起床し羽ばたく準備をしている様子だった。
ドラゴンが何処かへ行くまで身を潜め、飛び立ったのを注意深く確認すると勢いよく川へ飛び込む。
「ぷっはー!これこれ、この身体が癒されていく感じぃ!堪んねぇぜ…」
抗太の疲労と怪我は瞬く間に治り、万全な状態となった。
さぁ、ここからだ。
掻き集めた食料を川辺に運び、先ずは食べられそうな物から手に取っていく。
疲労感は無くとも腹は減る。故に今持つ変なキノコにですら涎が出てしまう。
「神と大地と…あとドラゴンにさんに感謝を込めて、いただきます 」
かぷりとキノコを一口頬張ると、抗太はカッと目を見開いた。
「こいつ…食えるぞ!!!」
ガ〇ダムのア〇ロみたいな台詞を吐きつつ歓喜に身を震わせ、あっという間にキノコを食し終わった。
味はマジでしいたけだったよ。
「さて、次はこのくるくるしたやつ。俺の世界で言うなら…ゼンマイみたいな見た目だな」
これも怪しい匂いはしなかったし、普通のゼンマイとは違い毛のような物もないな。生で食えるか知らないけど。
戴きます、と呟けばエセゼンマイを口の中へ放り込む。そしてまたしても目を見開いた。
「うぇぇぇぇ!!!!ブェッゴホェオゴォハァァァ!? くぁwせdrftgyふじこlp !!!!」
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
おれは偽ゼンマイを食べたと思ったらいつのまにか吐き出していた…
な…何を言っているのか わからねーと思うが
おれも何が起きたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…ピーマンだとか100%カカオチョコレートだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…
絶望。この野菜の名前は絶望で決定。
川の水で口を濯ぎまくった後、ぜぇぜぇと息を切らし我に返る。
「初めてだよ。白目になり過ぎて眼球が裏返ったの 」
勿論ジョークだが、比喩しようが無い程苦かった。ありゃ食べ物じゃねぇ。
ぺっぺっ、と偽ゼンマイを捨て代わりの物を探す。
最初に食ったキノコが美味し過ぎてキノコが全部美味しそうに見えてきた…。
キノコと野菜、木の実で分別し、取り敢えずキノコから食す事を決めてはパクパク口の中へ放り込む。
美味い、キノコにはハズレがない!全部美味い!
喜びの余り涙が出そうになる。凡そ一日ぶりの食事だが、食のありがたみに感謝しかない。
中には少しピリつく物や渋めの物もあったが、絶望と比べれば大した事ではない。
そんなこんなで、取ったキノコの半分程度を食べ終わると満腹になった。
「よし、腹は満たされたしこれから鍛えるか。ドラゴンにぶつけられた岩を拠点にして、万全な状態で人がいる場所を探しにいこう!」
目標が決まればすぐ行動がポリシーな抗太。
まずは川辺で軽くランニングや柔軟をし、ポピュラーな腕立てや腹筋背筋、コアトレーニング等を行い疲れたら川へ入り回復。
そして川の中でスクワットやボクシングのシャドーを行い、運動しながら即回復の超効率で身体を鍛えていく。川の流れに逆らって泳ぐことも欠かさない。肺活量を増やすのも重要な基礎トレだ。
そんなルーティンをこなしながら、ふと抗太は思った。
これ、本当に鍛えられているのか? 川で回復してるとは言えぜんっぜん疲れないし筋肉の疲労も無い。一日でどうこうなる物とも思えないけど、少し心配だな…。
などと考えながら、抗太の基礎トレは夕方まで続いた。
「そろそろか」
前にドラゴンと会った時、帰ってきたのがこれぐらい空が茜色の時だった。
また吹き飛ばされるのは御免だからな。撤退撤退。
そそくさと川から出ると、濡れた服やズボンを隠れた場所の枝に干し下着一丁で岩の影に入る。
季節があるかどうかは分からないが、夜は余り冷える事はなく日中も少し暖かい程度の理想な温度。
トレーニングするにはもってこいの環境だ。
岩陰に入ってから数分後に、大きな羽ばたく音と共にドラゴンさんが帰宅した。
おかえりドラゴンさん。孤独な俺の唯一の片思いフレンド。
近くに人間が居るなど知る由もないドラゴンは、またとぐろを巻く。
早寝早起きなんだなぁ。夕方に寝るの早すぎるけど、ひとりぼっちは寂しいし一緒に寝よ…。
一日目を乗り切った事に安堵し、心の中でドラゴンに寄り添いながら目を閉じ睡眠に入る抗太であった。
ご覧下さりありがとうございました!
誤字脱字があれば、報告して下さると嬉しいです。




