第一話 " こんにちは、異世界 "
新しく描き始めた小説です。コメディーな部分が少し多いです。
惰性でも良いので見て頂けたら嬉しいです!
これは、俺がまだ" 現代 " にいた時の話だ。
俺は麻宮 抗太。何処にでも居た普通の男子高校生だった。
友達も普通に居て普通の成績。家庭も裕福でも貧乏でもない…いや、どちらかと言えば貧乏な部類に入ったかも知れない。
まぁそんな俺が普通では無くなったのが、ついさっき。
子供がボールを蹴って遊んでいたら、そのボールが公道に出ちゃってさ?
お察しの通り、俺はその子を助けて車にバーン! 見事にお陀仏したんだよ。
じゃあなんで今こうやって話せてるかって?
「 気が付いたら身体は傷一つなく見知らぬ森の中にほっぽり出されてた。だなんて言っても、誰も信じないよな…」
麻宮 杭太は確かに死んだ。自分自身、それをちゃんと味わったからだ。
身体から血が抜けていく感覚、朦朧とする意識…最後に思い出したのは家族との思い出。所謂走馬灯というものである。
しかし、現に生きている。これは奇跡と言うべきなのか…?
「 服は車に跳ねられる前の学校の制服。スマホは…あぁ、そりゃ画面バキバキだよなぁ。でも財布は無事か、良かった 」
本当なら叫んで助けを呼びたい所だが、無闇に叫んで体力を消耗してはいけないと考え、今優先すべき事は…
「水と道を探す事。川沿いを歩いて上流にいけば、もしかしたら人が住む場所があるかも知れないし」
そうと決まればすぐ実行。ここが何処か分からない以上、早く人を見つけて安心したい。
生きているのなら一縷の望みはあるんだ。もう一度家族に会えるかも知れない。
藁にすがる様な思いだが、希望があるなら俺は諦めない。
それが、昔から俺が一番得意とする事だから。
「スマホが使えない以上ここが何処か確認する方法は無いし、取り敢えず歩こう」
森を歩き始めて1時間程が経過した。
「 はっ、はっ…!村どころか、人の気配すら感じないんだけどっ!?」
覆い茂った森の中は何処を見ても同じ景色、流石に飽き飽きしてくるわ!
それよりも、一番懸念していた自体になってしまった。
それは、川が見つからないという事。
川がなければ人が住む場所が存在している確率は皆無に等しい。
目尻から零れそうな涙を薄汚れた袖で拭いながら、再びひたすらに川を見つける為に歩き続ける。
そして、歩き始めて空が少し赤く染まり始めた頃 、念願のそれが眼中に飛び込んできた。
「 あ、あった!あったぞ!」
さらさらと流れる川の音が聞こえた方向へと疲弊した身体で走っていくと、そこにはまさに清流と呼べるような透き通った水の流れる川が広がっていた。
杭太は思わずぴょんぴょんとスキップしながらその川へと飛び込むと仰天した表情を浮かべた。
疲れきった身体はみるみると回復し途中で草木を分けて出来た傷も元通りになってしまったのだ。
一体どういう原理で傷や疲労が癒えたのか考えてみたが、ここは知らない世界。自分の常識は通用しないだろうと、抗太は考える事をやめた。
十分に水を浴びて川から這い上がると、大の字に寝そべって空を見上げる。
「本当にここは何処なんだ」
そんなことを呟きながら空を眺めていると、杭太の周りが何故か暗くなった。と思いきや、突然近くで轟音が鳴り響いたのだ。
その衝撃で杭太は声を出す暇もなく近くの岩に身体を打ち付けてしまう。
肺から空気が無理矢理押し出され、カハッと苦しそうな声を上げながら岩からずり落ち、その存在をうつ伏せたまま顔だけを上げ確認する。
「 そんな、嘘だろ…」
その存在は、神話でしか聞いた事のない存在。
鋭い牙に口から少し漏れる炎塵。とてつもなく大きな翼に黒く鈍く輝いた鱗。
それは何に比喩するでもなく、どこからどう見てもドラゴンであった。
「いきなりドラゴンとエンカウントとかついてねぇな…RPGによくある負けイベントかよ 」
痛みに軋む身体を何とか起こし、岩陰へと隠れる抗太。幸いドラゴンは此方に気付いていないのか、抗太が水浴びをしていた川で身を休める様にとぐろを巻いている。
その様子にほっと安堵し、ずるずると腰を付く。
ここへ来ていきなりドラゴンなんて普通は死を覚悟するだろう。
未だに信じ難いけど、あれドラゴンだよな。うん、どっからどう見てもドラゴンだな。
えっ、本当に?ドッキリとかじゃなくて?でもドッキリにしちゃ俺を傷付け過ぎだよな。相当恨み買ってるな誰かに。
そんな覚えは無いし…あぁもう!!色々あり過ぎて頭ん中ぐちゃぐちゃしてる!
ガリガリと頭を掻き、一度今起きている事を整理し始める。
ここは俺が知らない世界で、森の中にいつの間にか居た。多分異世界なんだと思う。
こう言うファンタジーな事は偶に読ませて貰ったライトノベル?だったかな。ああ言うのでしか見た事がない。
まさか自分に起こりうるなんて…いや、かの有名なSF作家であるジュール・ヴェルヌは言った。
『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』と。
ロマンのある名言だと思っていたが、こんな状況に置かれれば嫌でも信じるしかないだろう。
今ある異世界の知識はライトノベルで読んだものだけ。
であれば、まずは定番化しているあの言葉を呟いた。
「ステータス、オープン」
何も起こらない。言葉が間違っているのか?
「ステータスウィンド、オープン」
これもダメ。
「開け、俺の窓!」
ダメだな、うんダメ。これはちょっと変態味を感じる。
様々な言葉を試行錯誤したものの、結局それらしきものが現れることは無かった。
って、俺はいつまでドラゴンと居ればいいんだ!? 身体がすげぇ痛いから川に入りたいんだよ!お前のせいだぞ!お前の!!
岩陰から物凄い形相でドラゴンを睨み付ける抗太。でも2秒でやめた。
怖すぎる。万が一目があったら漏らす自信しかないもん。
もうすぐ日暮れだと伝える様に、空は茜色に染まっている。
疲労からくる眠気も相まって瞼が勝手に落ちそうになるが何とか耐えていた。
ドラゴンが居るなら、きっと他の化け物もいる。夜は活動が活発になるとか読んだし眠ってる間に食われるのは絶対に嫌だ…でも眠い、限界。
自分の意識など嘲笑うかの様に瞼はキスをし、抗太は眠りへと誘われていった。
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