初心者ダンジョンの傷跡
こっちではだいぶお久しぶりな気がする。
月一がほんとうにギリになるとは正直思ってなかった。……たぶんこれからもこれくらいのペースになるのかな? 正直わからん。
まあ、見てくれる人には感謝を送らせていただきます。いやほんとに。
戦闘での緊張もあって疲労感がやばいことになっている。これをこれから何度も経験していくとなると、鬱になるよ…。
俺は周りを見渡した。ユウは緊張感もあって汗をかいてるが特に問題なさそうだ。女性3人は抱きしめ合っている。生きてることを実感している感じだ。で、力堂は…………ってやばっ!
「誰か、力堂の手当してやってくれ! 俺らは回復魔法ないんだ。そろそろ力堂の体力やばそうだ!」
女性たちは言われて気づき、慌てて回復魔法をかける。てか今まで忘れられていたのか。………力堂、ドンマイ。
回復魔法の効果で傷は塞がったのでこれ以上は血は流れなさそうだし、後は失った血を取り込めれば問題なさそうだ。
「じゃ、俺らもやることやるか」
「……だな。さすがに死なれては困る」
俺らは手首を斬って血を瓶に流し込む。8分目くらいまで入ったところで手首を締めて血を出にくくする。
(確か、力堂の血液型はO、だったな…)
血の成分を変える詠唱を唱える。
「「血を糧にして生を求める。[汎界血変]!」」
知っての通り、人間の血液型にはA、B、O、ABの4種類ある。遺伝子の違いによって分かれているが、異なる血液を取り込むと拒絶反応を起こして最悪死亡する。それはこの世界でも一緒で、しかも回復魔法では失った血は元に戻らない。なので、こうやって体外から取り込むことで一時的に動けるようにするのだ。ちなみに、この世界には血液型なんて言葉は存在していない。この世界の人は、この魔法を本人の血を解析してそれを複製する、という感じで使っていたらしい。俺らはこの知識があるので誰かが試しにしてみたらうまくいったとのこと。(その時その場にいなかったので見聞なんだけど)
この魔法は、生活魔法と言って人間として最低限使える魔法だという。つまり、この世界では誰でも魔法は使うことが可能なのだ。誰でも使える魔法って意外と便利なものが多いから、詠唱なしで使えるようにはしておきたいな。
軽く力堂の腕を斬ってそこから流し込む。その後回復魔法をかけてもらい傷をふさぎ、終了だ。簡単な作業に見えるが一歩間違えれば死ぬので正直、もうしたくはない。なんで回復魔法かける前にしなかったかって? それは、唱えている間に流れている血の方が切って治すまでに流れるよりも多いと感じたからだ。力堂が死ぬ確率を減らすためさ。………嘘です。単に自分の流す血の量を減らしたかっただけです、はい。
疲れが来て俺はへたり込んだ。確実に貧血ではあるがな。
「お疲れさん」
「そっちこそ。さっきの貫輝? は凄かったぞ」
「ありがと。まだ完璧じゃないから不安だったがなんとかなって安心したよ」
実に軽い感じで喋っている。まあ、それだけ余裕があった、てことなのだろう。別の意味では余裕はないが。
「あ、あの!」
女性3人の内の一人―――確か、世良さん―――が俺に焦点を合わしている。
「どうした?」
「その………助けてくれてありがとう!」
そう言って世良さんは頭を下げた。他の2人も世良さんにならう。
「いや、たいしたことはしてないよ。……できれば頭を上げてほしいな。あまりそういうのは好きじゃないんだ」
「あ、うん」
少し首をひねりながら顔を上げる。どうしてなんだろう? て顔だ。いやだってさ、なんかこう、ムズムズしない? 誰かに頭下げられるのって。……俺だけかな?
少し気まずい雰囲気が流れたときに第三者の声がかかる。
「大丈夫!?」
「……美樹か。悪りぃ、少しトラブった」
隣の家に住んでいて、家族ぐるみで知り合いの美樹がやってきた。俺の数少ない気の知れた仲の人と言える。パーティーメンバーは………全員いるな。さすがにこんなところではそんなこと構ってられないか…。
「何か、あったの?」
「ここにいるはずない敵が出てきた」
みんなが驚く。ってか世良たちもか!? お前らあれと戦ったんなら気づけよ!
「どうしてわかったの?」
「即死付与の鎌なんてこんなところで出ると思うか?」
「………出ないね。出るなら入る前に警告を受けるもんね」
「そういうこと」
理解が早くて助かるよ。さすがゲーマー。
「どんなの?」
「リーパー。骨がマントと鎌を装備した格好だった。ステータスは………火力重視だったはず、物理方面で」
「そいつは、倒したの?」
「ユウと二人でなんとかな」
「そう…」
美樹の顔が暗くなる。何かよくないことがあったか?
「………無茶はしないでね。またああなるのは嫌だよ…」
「………わかってるさ。あの時のような無茶はしない。それくらいは学習してる」
「そう…」
昔あったことを掘り返されるとは思ってなかったが、これは美樹との約束だ。これからもちゃんと守らないといけない。破る気もないけど。
「力堂君は、大丈夫なの? あれはさすがに…」
「応急処置はした。後はゆっくり休ませれば大丈夫だ。元の身体が幸運を呼んだよ、あれは」
「さすが筋肉バカ」
「違いない」
落ち着いてきたからか空気が緩くなった。俺らは笑みを浮かべる。
「………そろそろいいかバカ夫婦」
「「!!」」
間に入るかのようにユウが割り込む。いつもの光景だからいいけど、気になる言葉があったな。
「誰がバカ夫婦だ」
「お前ら以外誰がいるんだよ」
「どこを見たらそう見えるのかわからな--」
「全部だ全部!」
「そ、そんなこと、あるはずないじゃない、ねえ?」
「ん? ああ、そうだな、あるはずがない」
「えっ」
「ん?」
「な、なんでもない!」
「?」
「………お前、いっぺん死んでこい」
「はあ!? お前にだけは言われたくねえよ!」
「………この状況下においてはそれは通用しないと思うぞ」
「知るか!」
体力的にも落ち着いてきたのでみんなで5階層まで降りることにした。あまり大人数で歩くのは咄嗟の動きがとりづらくなるから嫌なんだけどな…。まあ、大人数だと生き物が警戒して襲ってこないっていう考え方もあるからなんとも言えないところだ。
そうして俺らは5階層のボス前の部屋に辿り着いたのだが…
「どこにいるんだ?」
「さあ? 俺に訊かれても」
先に待っているはずのアルザさんがいないのだ。今回はボス戦はせずに手前まで行って帰ることになっているのだが、いないのはどうしてなのだろうか。俺らよりここについては詳しいはずだからヘマをしない限りここに来れるはずなんだけどな。
「何かあったのかな?」
「………どうしてそう思う?」
「壁が所々赤いよね。あれってもしかして………」
「そうでないことを信じるよ」
「だ、だよね!」
そんな最悪の展開を考えたらフラグになり得る。考えないことが大事だ。警戒はするけど。
後から他のパーティーもやって来たが一向にやって来る気配がない。………本当にどうしたんだろう?
そして、取り残されてないかの確認のためジークが最後に来たことで全員揃った。アルザさんを除いて。
「あいつ、どこ行ったんだ? 仕事をほったらかすようなやつではなかったんだがな…」
そういうこと言うのやめてくれ。どんどん死んだ説が浮上してくるから。
「仕方ない。まあ、あいつの力ならここの敵ぐらいどうにかなるだろうし…。俺らだけで帰るか」
それでいいのか? ちょっと適当すぎませんかね?
「さすがにそれは可哀想だと思うんですけど…」
「嘘だよ! はっはっはっ」
と言うことで部下の人2人を残して俺らは帰ることになった。………ほんとに嘘だったのか?
さて、ダンジョンを出る方法は3通りある。まずは自力に戻る。これは普通だな。二つ目はアイテムの『帰還の記憶(効果はリ◯ミト)』を使う。少し値段が張るが、1番安全だ。そして三つ目は---
「絶覇斬!!」
「ギャオオオオオォォォォ!!!」
ボスを倒すことだ。
「いや~、凄かったな」
「そうだな」
城に戻り、二人で話をしていた。
「あれくらい、俺らでもできるようになるんだろうか?」
「さあ? ただ、素質だけ見たら異世界人は高スペックらしいしな」
「あれを超えるっと。俺ら、とんでもねえな」
「まあ、過信せずに精進すればって話だけど」
それで死んだら単なる阿呆だしな。
「だが、折角なら最強になってみねえか?」
「俺がか? 嫌だよ。そういうのはユウが担当だろ」
「いや、俺は最強じゃ無くね? いつもお前に負けるし」
「それはユウがいつも手加減しているからだ」
「………毎度お前は過信し過ぎだ」
「過度な信頼はしてないはずだけど」
「……そうだな」
ユウが窓の方を向き少し遠い目をしながらそうつぶやいた。その顔に俺は妙な感覚を覚えることとなった。




