1vs12のタイマンバトル ー 2
「うむ、素晴らしい魔道具だな! だが、それでは金を持っていたら勝てる、みたいに思われるから次からは使わないでくれよ!」
あまりの威力に唖然としていたみんな--俺もその一人だが--だが、必死で俺にソードビットを使わないように言ってくるジークによって動き出した。ただ、一言も発さずに次の人と変わる様子はちょっと息苦しい。………俺、選択間違えたな…。次の人からは魔法が得意とはいえ近接武器がメインの人たちが多いから、そいつらは落ち着いて捌けば大丈夫だろう。魔物と変わらないしな。
相手は袈裟斬りを仕掛けてくる。俺は相手の剣を左切り上げで打ち上げる。跳ね上げられた相手は完全に無防備となる。俺は[瞬歩]で間合いを詰め、うつ伏せになるように倒し首筋に剣を当てる。
「それまで! 勝者、アキト!」
俺は力を緩めて相手を離す。12戦全勝した俺は相手に一礼をしてフィールドから出る。
壁にもたれかかって座り次の、ユウの試合を見る。片手剣を振り回し、相手の攻撃の隙を与えず完封していっている。笑顔で倒していく様は、少しキモかった。まああいつなら負けることないだろう。俺はさっきまでの闘いの感覚を確かめることにした。
模擬戦でしか機会が滅多にない対人戦。回数をかけられない分、中身をよくする必要がある。だから12試合それぞれにコンセプトを設けてそれをこなした。例を挙げるなら、最後の試合は相手を無力化する練習である。
冒険者としての依頼に警察まがいのことをすることがごく稀にある。警察よりも冒険者の方が武力面で強い場合があるため、手強い人の取り押さえなどでは冒険者に依頼することがあるのだ。俺も一度依頼を受けてみたことがあるのだが、上手くいかず誤って相手を傷つけてしまったのだ。取り押さえなのだから殺傷はあまりよくない。無傷で捕らえるのがベストだ。報酬も減るし…。
というわけでわざわざうつ伏せにしたのである。ちなみに最後に使った[瞬歩]は、歩法技術なのでスキルに出ないと思っていたが体術スキルとして追加された。瞬間移動のような能力だが直線にしか進めず、壁とかはすり抜けられない。まあ、弱点はあるが戦闘時には使いやすいスキルだ。間合いを詰めるのにはすっごく役立つしな。
まあコンセプトがどうこうと言ってきたが、最初のソードビットは単に使ってみたかっただけだったりもする。だが、あれはあまり使わないことにしよう。人になんて使ったら即死してしまう可能性があるし。それを考えるとあの不良(笑)は実力はあるのだろうな。地面が溶けるくらいの高熱を放つビーム。生半可なバリアでは貫通して死んでいただろう。実際に貫通はしてなかったし。やっぱり筋力とかも関係してたりするんだろうか?………俺も基礎をもうちょい強化しておこう。
ユウも全て終わらして俺の方へやって来た。
「おつかれー」
「おう」
なんだか、面白かったアニメや映画を見た後の余韻に浸っている人が重なった。
「楽しかったか?」
「ああ! やっぱり対人戦はいいな! 遊びだと特に!」
笑顔でそう言ってくる。必死にやったであろうみんなに少し可哀想な思いを持ちながら俺は少しげっそりした。
ユウはみんなといる時より俺といる時の方が笑顔でいる。理由はわからんが俺にはそのように見える。だからなのか、俺らはよくネタにされる。--腐女子の。ちなみに、学校の腐女子会ではアキ×ユウらしい。何があってもユウ×アキにはならないらしい。なんでも、無邪気な子を静かに冷静に貪り尽くすのがいいらしい。………わからん。
俺のクラスにも不和さんという腐女子がいるのだが、それ系が出た時の興奮度は凄かった。だいたいは俺を捕らえて話を聞こうとするのだが、お前女子なのか!? てくらいの力で取り押さえられ、どこから取り出したのか手錠を柱を通してかけられ尋問される。いかに重要で必死なのかが伺える。
その光景は週に1回は起こる出来事として、学校では恒例になりつつあった。どっかの噂で、あいつら実は付き合ってるんじゃね? なんて言われてるのを聞いた。また、本当は怖くて泣いているアキを裏で不和さんがくってるんじゃないか? なんて噂もあった。……………もう嫌だ…。
だが、俺は不和さんとはそれなりの仲を築いている。アニメの趣味が合うため、休み時間に話したりしている。そんなとこも付き合ってる疑惑に繋がるのをアキは気づいていない。
「そういやお前の最後のやつさ、わざとタイミングを遅らせて力の入ってないところを打ったろ?」
「……ああ、そうだよ」
そこがバレてるとは思わず驚いた。
例えばだが、ボールを二人で反対側から同時に同じ力で蹴ると、ボールはどちらにも動かずに止まる。だが、人間は、だいたいボールに当たった時が一番力が強く、そこから先は少しずつだが力が弱まる。その弱まった時に反対側から蹴ると後から蹴った方が力で勝つのだ。また、始めに蹴った方がそこから力を加えようとしてもどうしても遠心力を加えて蹴った方が力が入り、そして強いというわけだ。
実際にやってみるとわかるのだが、これを使うと多少は力を入れなくてもボールを前に進めることができる。サッカーをしてると案外役立つ技術だ。練習は必要だがな。
「よく気づいたな」
「? そんなのお前がしないわけないだろと思っただけだよ。体型、腕力、初動。その辺りを考えたら行き着くんじゃないか?」
普通はそこまで頭回らないんだよな…。これだから天才は…
「まあ誰でもできることだし、気づけたら今後役立つからな。気づけたやつはラッキーということで」
「まあ、そのための模擬戦だしな…………そういや、お前もできるんだよな?」
「そりゃあ出来るさ。まあ、俺は対策もちゃんと考えてるけど」
「……………やっぱ、お前はパネェわ」
「?」
対策なんて俺には思いつくことはできない。せいぜい相手の剣が当たる前にダメージを当てるくらいだ。それを考えれるのだからこいつはおかしい。改めてこいつはやべえやつだと実感した。
朝比奈さんの5試合目になり、俺らは目の前の光景を考察していた。
「…………剣筋が見えねえな…」
「…………ああ…」
いや、困惑していた。正直、女子だということで過信していたところがあった。だが、目の前の光景を見ると凄さが伝わる。前の4回の闘いを見た後で相手は足がすくんでおり、ただ一方的に相手の施しているバリアを壊れるまで斬っていた。ただ、だいたいは2、3回で粉砕する。俺だったら8回はいると思う。…………マジパネェ。
「技術もあるが………たぶん、筋力も俺らより高いのかも」
「ステータスは今までの生活によって値が変わるからな…」
つまるところ、ここにいる子供の誰よりも鍛錬をしており筋力が高いのだ、女子が。男子としては悲しくなる。
「…………筋トレもしっかりしないとな…」
「…………そうだな…」
俺の次の目標を見つけた瞬間だった。
朝比奈さんも全員倒すだろうと思っていたのだが、思わぬことが起きた。
「朝比奈さん、どうしたのかな?」
「慣れない動きをしている感じがしたな。どうしてなんだろな」
「さあ…」
剣で払い距離が開いたとき、剣で突こうとしていた動きを止め魔法を放っていた。その動きがぎこちなく、魔法を放ったときに相手にバレて躱される。その後相手が攻撃してくるがなんとか剣で受け止める。そんな動きが3、4回起こっていた。明らかに何かを試そうとしている感じだ。
相手もそれを理解したのか、剣で払ってきた時に最小限の動きで躱してカウンターを狙おうとしてきている。朝比奈さんが攻撃を受けるのも時間の問題だろう。
「………あれかな? 確か払った時って相手が大きく下がることがあるから、そこをさらに魔法で慌てさせて隙を作るっていう戦法を試してるのかな?」
片手剣を使う冒険者からそんなことをレクチャーされたことがあったのを思い出し、もしかしてと考察してみる。動きから察して可能性が高そうだ。
「……ああ、そんなのあったな。だが、あれは朝比奈のスタイルにあってないんじゃないか?」
元々その動きをするのは一撃の速度が遅い人が行うものだ。そうすることで自分の隙も減らすことができるためである。だが今までの試合を見るに、朝比奈さんの剣は速さとそれに似合わない力強さが売りだと思う。それなら動きに入っている突きでいいと思う。まあ、突きは隙が大きいから危ないのは事実だが。
「もしかして学校で何度も言われてきたのかな?」
「………確率がありそうだな。先生の中には堅い人もいる。しつこく言われてきた弊害、か…」
なんか可哀想になってきたのでやめさせるべきだとは思った。だが、これは朝比奈さんの試合だ。俺たちは助言するべきでない。気づくことはないだろうが、諦めていつも通りやることを願おう。
「そこまで! 勝者、ユキナ!」
結局、朝比奈さんは負けてしまった。原因は先生にあるが、こればっかりは仕方ない。結局教えられた技術を使うかどうかは本人に委ねられるのだから。勝利したことに喜んでいる12人。それを聴きながらとぼとぼと俺たちの方へやってくる朝比奈さん。なんか、可哀想だった。
「その、ドンマイだったな。………あの動きはしないほうがいいぞ」
「明らかに朝比奈の剣にあっていなかった。誰に言われたかは知らんがやめとけ」
俺は優しく言って納得させようとしてたところをユウがキツイ言い方で同じことを言う。それを実感していたようで「やっぱり…」て顔をしていた。
「まあ、私もそれを実戦で知れただけ良かったということにしておこうと思う。本当の争いでやってしまっては死んでしまうしな」
切り替えは早いようで安心した。これで落ち込むようなら甲斐甲斐しく面倒を見なきゃなんなかったしな。
「さて、これで今日の訓練は終わりだ。勝てた者、負けた者、どちらも何が必要か理解できたと思う。そこを上げる必要があるかどうかしっかり見極めて欲しい。では解散!」
最後の一言に引っかかったが、その後は自由時間となった。みんな、各々のやることを考え行動していた。ある者は今回のことを受けて練習相手を探したり、またある者は休暇を取ったり、またある者はより詳しく理解するために図書室に向かったり。前より何か意思を持って動けてると思う。これが目的だったのかな?
ちなみに勝利の報酬は一日指定した人を借りられる権利だった。指定できるのは国の魔導師か騎士だが。…………うん、貰って嬉しいけど何か違うんだよな…。みんなも微妙そうだったし。
そんな中、俺ら3人はジークに呼ばれ騎士団長室にいた。
内容は今後の行動についてだ。元々、そこに新しく入る異世界人の指導のため先に来ているのだ。何時ぐらいがいいか、どれくらいの人数か、誰ならいけるか。そういった説明を受けた。騎士や魔導師はまだどうにかなるが冒険者は命の危機がすぐ近くにある。俺の状態はより詳しく訊かれた。俺としては指導とか得意じゃないからしたくないのだが…なんて言おうと思ったが周りからのジト目にどうしようもなくなり、二人ならいけると言っておいた。
二人なのはそんな大人数で行きたくないのと、一人だけだとワンマンみたいな感じで嫌だったという安易な理由だ。そこらへんは適当なのだ。
うん、メンドクセー。
月一もそろそろ怪しくなってきた…。無理だったら許して




