8章 浮気?
月曜日の昼休み、教室の隅にて俺の前には静奈ちゃんが戻ってきた。
「ねぇ、一つ聞いていい? 響ちゃんとタカシが付き合ってるって噂は本当?」
「ち、違うよ!」と慌てて俺は答えた。
「よかった〜。私ダーリンとヨリを戻そうかなって思ってて……」
(えっ……)
「良く考えたら、やった事ないのにいきなり8本ペンライト持たせたら戸惑うよね。頭には付けてくれたし、歌ももしかしたらアスカの後のロボット見てたのかもしれないなぁって思ったの……」
(だから歌詞見てたに決まってるって……)
「たぶん歌詞見てたんじゃないかな?」
「えっ! そうか! きっとそうだよね! 私ダーリンにまたデートの約束しちゃおう!」
まさかの静奈ちゃんの心変わりに俺は小さくガッツポーズをすると、同時にどうやってタカシを傷つけずに別れるかを考えねばと思った。
すると俺たちの隣へリョウがやって来た。
「あの~、響さん、よ、良かったら俺とメール交換して欲しいんだけど」
(は? 何言ってんだこいつ。いくらイケメンでも俺が男に興味があるわけないだろ……)
「そ、それで、できたら今度、映画かご飯食べにでも行かない」
(おい、こいつ俺に惚れてるじゃん。まてよ…ナナミちゃんがこいつに惚れてるのに俺に来るだと……)
なんか考えていると腹が立ってきた。その時俺の脳裏に邪念が湧いて来た。
(そうだ! こいつをその気にさせてから思いっきり振ってやろう! 完膚なきまで叩き潰してやる。非モテの恨み、世界中の非モテの恨みをお前は受けるのだ! お前に恨みはない、だがイケメンで生まれてきた事がいけないのだよ!)
「ありがとう、でもなんだか恥ずかしいな……」
「本当に……私なんかでいいの……」
「ドキドキして……手が震えちゃう……」
俺は頬を赤らめメール交換をした。
ホッとした様子で帰ろうとしたリョウを俺は呼び止めた。
「ネクタイ曲がってるよ……これじゃモテないぞ……」
俺にネクタイを直されたリョウも頬を赤らめながら教室へ戻って行った。
リョウが見えなくなると、俺はつい高笑いを始めてしまった。
「どうしたの、響ちゃん?」
静奈ちゃんに驚かれ俺は正気に戻った。
◇
次の日のお昼休み。
リョウが俺のところへやって来た。
「今度の木曜日の休日にサッカー部の試合があるんだけど良かったら観に来ない? その後ご飯に行こうよ」
(はっ、こいつ随分グイグイ来るな、イケメンの余裕か? サッカーなんか興味ある訳ねーだろが……面倒だ)
「ごめんね。その日はウチの猫のノラえもんがダンプカーにひかれてペッチャンコになっちゃってお葬式なの……」
俺はとっさに嘘をつき、泣く真似をした。
「ノラえもん……どうして私をおいていっちゃったの……あたし寂しい……」
泣いている俺にビックリしたリョウは大丈夫と声をかけた。
「ありがとう……リョウくんて優しいんだね……」
「お願い……肩を抱いて……」
リョウが緊張しながら俺の肩を抱く。
「リョウくんに抱かれると悲しみもどこかに行っちゃう気がするな……ありがと……」
俺は肩を抱くリョウの手を握りしめた。
「リョウくんの手、温かいのね……」
「こんなに優しくされたの初めて……嬉しい。でもドキドキしちゃって今日は寝れないかも……」
「このままどこかに行きたくなっちゃうな……」
その時チャイムが鳴った、リョウは教室へ帰って行った。俺は悪魔的な笑顔でリョウを見送った。
そして放課後、ふと俺は思った。
(待てよ、やっぱりサッカー観に行ってデートしてやった方が効果的だな……)
◇
次の日のお昼休み、俺は隣のクラスへ行きリョウを見つけ話しかけた。
「明日のサッカー行ける事になったの。ノラえもん、生き返っちゃった!」
「えっ、ダンプカーでペッチャンコなのに?」
「なんか、お医者さんがお湯かけたら元に戻ったって。もう元気で走りまわってるの。だから明日応援に行けるよ」
そう言うと俺は用意したお守りをリョウに渡した。
「これ……怪我しないようにお守り……」
「あ、ありがとう」
「頑張ってね……あたしのために……」
◇
次の日、俺はリョウのサッカーの試合を観に行くに当たって、最初のデートで着て行くか悩んで着なかったホットパンツを封印から解いた。 上はビール会社のタンクトップに透け透けのシャツで行こう。
鏡に映った俺はやはり可愛かった。
会場に着くと、周りの男だけでなく女の子までもが俺を見てきた。俺はつい髪の毛をかき上げたり脇の下を無意味に見せたりしてしまった。
試合中も気のせいか選手達が俺を観てしまって集中できないようだった。
試合はリョウの活躍によって2−0で勝った。
試合後、リョウが笑顔で俺の所へやってきた。
「観に来てくれてありがとう、おかげで勝てたよ」
「お疲れ様!」と言って俺は半分飲んだスポーツドリンクを渡す。得意の間接キッス攻撃だ。
「私、リョウくんが怪我しないか心配で……良かった、無事に帰ってきて……」
そして俺たちはランチを食べに行くことになった。 リョウは俺をヨンマルクカフェに連れて行った。お店まであと20m程になったので、
「あ~ん、私、もう歩けな~い!」
「えっ? あと、ちょっとだよ」
「おんぶして……」そう言って俺はリョウの背中にまわり胸を思いっきり押し付けた。
「リョウくんの背中大っきい……」
「ありがと……優しいのね」
俺たちはヨンマルクカフェで食事をした。リョウが奢るに決まっているので思いっきり高いのにしようとも思ったが今は好感度を上げる時だ。
タカシには逆効果だったが、俺はリョウの隣に座った。
「リョウくんに勝利のご褒美だよ、食べさせてあげる。あ~んして」
リョウの口にパスタを運ぶ時に胸を肘に当てるのも忘れない。
俺の執拗な攻撃にリョウは冷や汗をかいていた。緊張しているのが明らかに伝わる。
好きになるが良い俺を、お前が俺に告白したときがお前の最後だと思え!
リョウに気づかれないように悪魔的な笑いをする。 そして相変わらず店中の視線は俺に集中していた。
俺の計画は確実に実行されていた。大きな誤算はこれらの行動をタカシに知られてしまったことだった。




