6章 デート
日曜日、俺とタカシはデートの約束をしていた。
よく考えると俺にとって人生初めてのデートだった。まさか女の子として初デートをするとは夢にも思わなかった、しかも相手は俺自身だとは。
タカシに最高のデートを味合わせるために俺はまず超ミニスカートを履くことにした。ハッキリ言ってすぐパンツが見えてしまうが中身が男の俺にはまったく気にならなかった。むしろ男たちの反応が面白い。
胸元もパッカリ開けた服にしようかな……ついでにへそ出しとかにするか。
トラウマ払拭のために待ち合わせはスカイタワーを避け駅前にした。
今日はタカシに人生最高のデートを味わわせてやるぞ!
待ち合わせの時間10分前に着いた。一人で待っていると周りの人達が俺を盗み見るように見てくる。こんなに可愛い子がこんな過激なファッションをすれば当然だ。しばらくしてタカシがやって来た。タカシは全身真っ黒で今度はマントだけでなくマジシャンのような帽子もかぶっていた。
(だからあのカッコはもういいんだって……俺より目立ってるじゃん……)
「もぉ、タカシくん遅いぞ……!」
「す、すいません!」
「早くタカシくんに会いたかったの……」
「タカシくんとデートが楽しみで昨日眠れなかったなぁ」そう言って俺はタカシの腕に手を回した。
まず俺たちはタカシの洋服を買いにウニクロに行った。とにかくタカシの洋服センスを変えなければならない。正直、厨二病なカッコは憧れではあるが、普通のファッションをさせなければ。悩むタカシに俺はポスターのモデルが着ている洋服をそのまま何パターンか買った。そしてその場で着替えさせた。
タカシは普通のカッコをしていると我ながらそんなに悪いビジュアルではなかったがさえないオーラはまだまとったままだった。俺もペアルック用の洋服を買ったが今は着替えるのはやめよう。
お昼ご飯はマクドンナルドでハンバーガーを食べることにした。店に入るとやはりお客の視線は俺に集中する、そして隣のさえない男に対しての嫉妬の目を投げかけていた。
(俺が知らない人たちに嫉妬されるなんて……)
ご機嫌な俺はタカシの向かいではなく真横に座った。
「タカシくんのコーラ、ひと口もらっていい?」俺はストローでタカシのコーラを少し飲みタカシの口にストローを入れた。間接キッス攻撃だ!
そして、ポテトを1本つまんでケチャップをつけタカシの口に入れる
「はい、あ~ん」その時、胸をタカシの肘に当てるのも忘れない。
「タカシくんがポテト食べてる姿素敵よ……」
「いやん、もう、響メロメロよ……イケズ」
「マイ……スウィート……ハニー……」
俺はタカシの耳に吐息を吹きかける。
緊張マックスのタカシがハンバーガーを食べると頬にケチャップがついた。
「もう、タカシくんたら、ケチャップついてるよ!」そう言って俺はタカシの頬についたケチャップを舌で舐めた。
(うげぇぇ~気持ちわりぃぃ~、さすがに自分とはいえ男は無理だ……ちょっと調子に乗りすぎた……)
ちょっと反省した俺はハンバーガーを少し残しタカシに食べてとお願いした、間接キッス第二弾だ。
「好きよ! 好き好き! 好き好きす~!」
俺たちの周りの男たちは俺たちのイチャイチャと俺の開いた胸や下着を覗くので気が気でないようだ。
それに気づいたタカシが出ましょうと言った。
「どうしたの~?」
「周りの人たちが響ちゃんを覗いていました」
(おっ……ちょっと嫉妬したかな……)
「守ってくれたのね……嬉しい……」
「あんまり人の多くない所に行きましょう」
俺たちは小さな公園のベンチに座った、タカシは無言のままだった。静かな空気が俺たちを包む。
振り返るとタカシに笑顔はなかった。よく考えれば、俺が演じてたのは男の理想であってタカシの理想ではなかった。いくら可愛いといっても俺はこの手の女は苦手だ。
「ごめんね、私タカシくんに喜んでもらえると思ってこんな服装で来ちゃった。イヤだったでしょう」
タカシは顔色を変えて俺の方を見た。
「いえ、とても嬉しかったです。でも周りの人が響ちゃんを変な目で見るのが僕は耐えられなかった」
「嫌いにならないでね……」
「僕のために一生懸命になってくれてありがとうございます。本当は周りの人達にジロジロ見ないでくださいって言いたかったのですが、僕には度胸がありませんでした。響ちゃんを守れなくてすいません」
俺はタカシの中に男らしさの欠片を感じてちょっと感動した。俺が「守る」なんてセリフを言うとは……
「私、亀が見たくなっちゃった!。亀井天神に行きたいな……」
「行きましょう」
俺はタカシの腕を組むのはやめて、手を握った。タカシはちょっと恥ずかしそうにした。
亀井天神で俺達は3時間程亀を眺めてから家に帰ることにした。お互い夕方6時からのアニメ『宇宙兵器マックロス』の最終回が観たかった。
亀井天神の入口にある鳥居を逆からくぐった所で手をつないで歩く俺たちはナナミちゃんとばったり遭遇した。
俺とナナミちゃんは目が合うとお互い下を向いてしまった。
◇
「ただいま~」
俺は家に帰ると俺のママが俺の姿を見て言った
「響ちゃん、ずいぶん凄いカッコね、デート? さては彼氏できたな? 彼氏の趣味でしょう?」
「違うよ~」
俺はママの鋭い考察にうろたえながらも部屋に駆け上がって行った。
ベッドに飛び込み考える。
今日の反省を踏まえ、次回のデートは俺の理想をタカシに味わわせてやろう!
そう誓った。




