4章 告白されたら
デートの翌日、いつもの教室の隅でお昼休みに俺は静奈ちゃんと向かい合っていた。
タカシは頑張ったようで静奈ちゃんはご機嫌だった。
「デート最高だったの~」
「映画どうだった?」
「宇宙に行ったロボットが超能力使えるようになるって話であんまり良くわからなかったな……でも最後にロボットが合体するところでタカシくんが号泣してて可愛かったの~」
「でね、映画の後ミスターミセスドーナッツに行ったんだけど、タカシくんメチャ可愛いのよ!慣れた手つきでトングもってマントをヒラっとなびかせて魔法使いみたいだった、全身黒で、先の尖ったブーツもカッコ良かったな。タカシくんああいう女の子のお店とかよく行くのかな……」
(あのカッコでいいんだ……)
満足そうな静奈ちゃんを見て俺も満面の笑みを浮かべていた。静奈ちゃんのノロケ話は続く。
「その後、スポーツヤルッチャに行ったのね、バッティングセンターでタカシくんがバットを振るんだけど、タカシくん凄いんだよ! 毎回2回転するの!だからマントがコマみたいで素敵だったな。結局一回もバットにボールは当たらなかったけど、誰よりも回転したんだよ!」
(想像しちゃうな……)
「私決めたの、次のデートで告白しちゃおうって!」
(えっ!……)
「次のデートはいつなの?」
「今日。学校終わってからタカシくんとボクシングを見に行く約束したの。今度は私の趣味に付き合ってくれるって、優しいよね。大好き~」
(また、俺の未知なところへ……そして今日なの……早いな……)
でも、静奈ちゃんがこんなにも俺のことを……俺は感動していた。タカシは初めてのデート頑張ったんだな。今日も頑張れよ、上手く行けば告白がまってるぞ!
◇
ルンルンの静奈ちゃんと別れた後、俺はタカシを見つけた。
(よくやった……)
俺はタカシを見るなり人目も気にせず抱きしめてしまった。俺の頬を涙が伝わる。陰キャで人見知りの俺がここまで……自分で自分を褒めるとはこういう事だ。
美少女の俺が涙をながしてタカシに抱きついている姿はまわりには異様に思えた。
(えっ、あの二人付き合ってんの?)
(響ちゃんがタカシくんに振られた?)
タカシもいきなり俺に抱きつかれて硬直して動けないでいた。我に返った俺は周りに人がいるのに気づき、タカシの腕を掴むと人けのないところへまた連れていった。
「昨日のデート頑張ったんだね! 偉いぞ!」
タカシは恥ずかしいのか下を向いている。
「静奈ちゃん、ご機嫌だったよ! 今日もデートなんでしょ、頑張ってね」
(…………)
「もし、静奈ちゃんが告白してきたらどうする?」
タカシは下を向いたまま答えない。突然、自分には縁がないと思っていた女の子とデートをしたり付き合えそうになっているのだ。頭が大混乱を起こしてるのは当然だ。夢を見ているような気持ちだろう。
「余計なことは考えないで、告白されたら受けるのよ」
「こんなチャンス二度とないかもしれないんだからね」
「つ、付き合うって何すれば良いんですか……?」
(正直、70年童貞だった俺もよくわかっているわけではないが……)
「大丈夫、普通にしてたらいいの!」
「余計な事考えちゃダメよ!」
「は、はい」
その時チャイムが鳴って俺達は教室へ戻った。
放課後、俺はご機嫌の静奈ちゃんとタカシが校門を一緒に出て行くところを遠くから見届けてから家に帰った。本当に静奈ちゃんは告白するのだろうか? 果たしてタカシの行方は?
◇
そして次の日、同じように昼休みの教室の隅。静奈ちゃんが俺の前に座る。
「私、タカシくんと付き合うことになったの」
よっしゃー、俺はついガッツポーズをしてしまった。そして感動のあまり静奈ちゃんの手を握り、
「静奈ちゃん、タカシをよろしくお願いします」とまるで親のようなセリフを言ってしまった。
「ひ、響ちゃん、そんなに喜んでくれるなんて……」
70歳、童貞で一生を終えた俺に彼女が出来たのだ、これこそ奇跡としか思えない。涙が溢れて止まらなかった。
タカシが教室へ帰ってきた。また抱きしめたくなるのをグッとこらえ近づくと耳元に小さな声で「おめでとう」とだけ言った。また涙が溢れてきたので、俺はすぐタカシから離れて席に戻った。
「響ちゃん、泣いてるよ……大丈夫?」
一条ナナミ、クラスのマドンナ的な存在で俺の憧れの子が俺を見て心配して肩を抱いてくれた。
ふと横顔を見るとナナミちゃんは可愛すぎた……
突然足された幸せを胸に俺はナナミちゃんに抱かれながら思った。
タカシ、静奈ちゃん、末永く幸せに……
だが、幸せはそう長くは続かなかった……




