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0/幽影
痛烈なまでに耳をつんざく無音は残響となって耳を覆う。
浮いた思考に先導されて歩く様はさながら囚人だ。
ざわめく人の声、川の流れに逆らうような足取りは酷く重い。
一歩一歩が泥に掬われているようにずり、ずりと音を立てている。
思考は泥臭く、血生臭い。
だというのに、空虚で、何もない。
自然と足は気付けば暗闇に。
汚泥に塗れるならば、それらしく。
血に塗れるならば、全身を。
憂うのならば運命を。
煉獄の炎でさえ焼き尽くせぬ重りが胸に貯まる。
踏み出す先にあるのは、纏わりつくような闇。
人の作る光は歪で不自然だ。
故に今の俺には無惨なまでに忌々しい。
だからこそ、背を向けて歩む俺は逃げている。
そんな俺に囁く影が一つ、ポツリと、雨戸から垂れた一滴の水のように純粋な黒が安穏とした闇に溶け込んでいた。
その声に俺は頷いて、気付けば俺の手に瓶が一つ、小さなセカイが乗っていた。




