プロローグ
これは、日常の裏に潜む声に魅入られた者たちの非日常のお話。
八月五日午後二時。
蝉時雨が窓を叩いている。
僕は病室を尋ねた。
目の前にはベッドに寝かされた少女が一人、死んだように眠っている。
隣には僕より背の低い少年が少女を見つめている。
隣に座る少年は僕に語った。
「────何故、なんでしょうか」
呟く疑問は誰に向けたものか。
僕へ向けたものじゃないことは確かだ。
「何故、妹が」
胸に満たされて溢れた一部が言葉として部屋に響く。
僕はその吐露をただ、聞き続ける。
「コイツは、こんな目に合うような生き方はしていなかった」
握りしめた拳は強く握りすぎたのか白くなっている。
表情は見えない。
泣いているのか、怒っているのか。
「医者は、もう、目が覚めないと」
諦観を孕む言葉にかける言葉を思い付けず、外に浮かぶ入道雲に視線を移す。
「助けたい、のに」
声が、震えている。
限界が近い。
糸が、切れてしまいそうだ。
だから、僕はいつも通り、言葉を垂らす。
「願うことに罪はないよ」
「………そう、ですか」
少年は少しだけ胸が空いたような、曇りが晴れたような顔で僕を見る。
その顔が嬉しくて、僕は言葉を続ける。
「君は、妹さん思いだね」
「はは、そうですかね」
照れ臭そうな声は年相応だ。
「じゃあ、僕は行くよ」
「もうですか?」
「ああ、待たせている人がいるからね」
腰を上げ、病室から出る時に別れ際に、少女を見たときにその隠れた胸元にキラリと光るガラスが見える。
それはまるで、中身の無い瓶のようだった。
中身を無くしたのか、元々無かったのか、少女の首には瓶がかかっていた。
「きっと、君を助けてくれる人がいるはずだから」
「………貴方は違うんですか?」
「僕もそうさ。君に力を貸すことを厭う事はないさ」
「嬉しいです」
別れを告げて部屋を出る。
僕は至福を胸に歩き出した。
私の面白いを詰め込んだ作品なので、楽しく読んで頂けると嬉しいです




