⑦よい読者ではない私は
今回、このエッセイに書いたような私の罪から思考して得た教訓は、よい読者ではない私は、大人しく、自分の住処に潜り、牙じゃない腕を磨くべし。ということのように思います。
ふふ。案外、こういった自分の住処でひっそりと腕を磨くということこそが出来ることの方が珠玉だということなのでしょう。
……昔、子供のころ知って、ずっと忘れられないエピソードなのに名前を忘れてしまった海外の作家さんのお話を思い出します。
--その方は、なんと、誰にも気づかれないまま、小さな自らの書斎で長編小説を生涯書き続け、未完のままこの世を去ったのですが、天涯孤独の上、仕事では同僚に馬鹿にされながら、周りには小説を書くことを趣味にしているなど一言も漏らさず、ひっそりと亡くなったのです。
……その彼の遺品整理の際見つけた方が、見つけ出してから、彼の遺作は多くの方の目に留まるようになる……哀しいお話に聞こえますが、その方の話を本に纏めていたその著者の方は、こう綴っていたのです。
「彼は、きっと誰にも見つけられなくともよかったのだ。彼自身がこの幸福な小さな城で彼の幸せな世界に浸っていたのだから。……ただ、私自身は残念でならない。彼は、生涯、自らの小説は誰にも認められないと思っていたようだが、私はそうは思えない程素晴らしいと彼の作品を認めているのだから」
**
子供の頃見たエピソードでしかも今になってみればその方の名前すら思い出せないのですが、その時の気持ちはずっと忘れられずに刻まれている気がします。
……私にとって作家として幸せな方は、……だから今でも、自らの幸福だけを知るその彼の姿であるからです。




