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531 転生者狩りが始まった


(珍しい三人が後ろで楽しそうに話してる……いいなぁ……)


 アルマとレヴィさんとエマさんっていう組み合わせ。

 なんの共通点があるんだろうか。

 魔法使い……? アルマも広義的には魔法使いだもんな。


「クラディスさん」と横から声がかかった「その外套似合ってますよ」


「お。見る目ありますな、ユットロールさん」


 と自然体で返してみたけど、ユットロールさんって呼ぶの疲れるんだよな。6文字って、ほぼ日本人の苗字と名前をそのまま呼ぶくらい疲れる。結構他人行儀だし。

 せっかくデュアラル王国に来てくれた訳だし、友達だし。

 そろそろ、良いんじゃないだろうか。


「ゆっ……ゆっちゃん……」


「……?」


 彼の眉間に皺が寄った。さすがに距離の詰め方が頭おかしかったらしい。

 なんでもないです、忘れてくださいと手を振っておいた。恥ずかしい。


「ゆっちゃんよりもトロールのほうが良いだろ」


 ムロさんの介入。ちょっと救われた気分。


「でもトロールって悪い意味じゃなかったです? だったらユット……ユウト? ゆーととか」


「エマにはそう呼ばれてるから、ユウトでいいですよ?」


「じ、じゃあユウトで!」日本人みたいな名前になっちゃったけど「ユウト!」


「はい。なんです?」


「なんでもないです」なんか照れちゃった。恥ずかしい「外套、似合ってます?」


「ええ、似合ってますよ」


「へへ……」


 こんな会話をしてるからか、ムロさんから「気持ち悪い会話してる」って言われた。誰かその人を小突いておいてくれ。


「まぁ、認知度はなさそうだけどな」ムロさんからの茶々だ。「血盟の紋章ってのは結構適当に作られてるもんだし、使われることなんて滅多にねぇし」


「アサルトリアの紋章なんて覚えてないしね~」


 エルシアさんも参戦し、ユウトも頷いている。


「それでもなんかリリーさんに護ってもらってる気がするから好きだ」


 こういう感覚がブランド物を身に付ける人の心理なのだろうか。

 見ろ! この服! すごいだろ! みたいな感じ。

 解析士に護ってもらえてるっていうのが、なんか、すごく嬉しいのだ。

 もしかしてそういう狙いもあるのか……? 


「白銀の髪と赤黒と金色は映えるわね、ほんとに」


「えへへへへ」


 エルシアさんに褒められて口角がぶち上がった。

 確かに、白と黒は反対だし、銀と金色も反対だ。

 なんか高貴な出だと思われるのでは! それはそれで嫌だけど!

 

「でも個人的に僕よりアンがすごい似合ってると思います。かっこ可愛いでしょ」


「アンちゃんは一気に風格が出たわ」


「これで性格も見た目もキツくなったな」


 なんて言うムロさんのスネをアンは思いっきり蹴っていた。


「姐さんは、なに着ても格好良いっス」


「ふん。見る目があるじゃないか、舎弟(ユウト)


 いつからそういう関係になったんですか。

 なんか、交友関係が広がっていくの見ると楽しくなるな。

 エヴァーチェとアサルトリアが仲良くなってくれると僕も嬉しいのである。

 

「帰りはどうやって帰ります? あの四輪駆動のにまた乗るんです?」


「いいや、あれはもう実用段階らしいから試さんらしい。普通に乗り合いの馬車か、トロールの金で専用ので帰るか」


「これ以上、俺の副団長の顔色が悪くなるのは見たくないので却下だな」


「アサルトリアが出すっての。誘ったのは俺等だしな」


「わ、ムロが珍しく先輩風吹かしてる……」


「俺は出さんぞ。アサルトリアが出すんだ」


 なんて言いながら街の中を歩いていると、大きな広間に差し掛かった。

 鍛冶の街と言いながら発展しているところは王国となんら遜色がない。

 出店とかも出てるし、人の行き交いも多い。

 種族はやっぱり鉱人(ドワーフ)さんが多めだけど、森人(エルフ)さんの姿も見える。手先が器用な種族が集まってるって感じかな。

 それに、なんか中央に人だかりがあって、紙をパラパラと投げている人がいる。

 大道芸人みたいな人なのかな。


「号外ッ! 号外──ッ!」 


 あ、なんだ、新聞か。

 

「号外ってことは何かあったのかな」


「さあ」


「戦争のことじゃないですか? ようやく一般公開されたとか」


「それが号外で出されるかっての」 


 ムロさんが鼻で笑ったので、僕も同じように流した。

 そうして、広場から視線を外そうとして──





「転生者が死んだぞッ!」




 

 言葉が耳を掠め、僕は立ち止まった。

 

「……」


 いま、なんて言った。

 あの男はなんと言った?


「転生者……って言ったか?」


 広場中央を見つめていると、ユウトが周囲を警戒するように僕の横に並ぶ。

 ムロさんは顔色一つ変えずにそれを眺めている。

  

「あるじ」


 という耳打ちがあって、開いていた瞳孔を瞼で閉ざす。

 ──一瞬、知り合いの誰かが死んだのかと思った。

 だが、冷静になれ。転生者の知り合いなんて数は少ない。

 

(麻央さん……は大丈夫だ)


 彼女がそんなにすぐに死ぬわけもない。それに、ハインストのメンバーだ。

 麻央さんが死ぬより先に僕が死ぬ確率の方が高い。


「ちょっと気になるので見てきていいですか? ついでに出店で何か買ってきます」


「俺も行こう。奢りますよ、何が欲しいですか?」


「わたしも行きます。お、お腹ぺこぺこなので」


 アンとユウトが着いてきてくれるらしい。

 

「ありがと。何食べましょうか」


 少し待ってもらうことにして、僕ら三人で中央の広場へ歩いていく。

 人だかりの理由がそれで捌ける気配がないってことは、信憑性が高いってこと。

 

「表情を変えないようにな」


「分かってますって」


「──転生者が死んだらしいぞ!!」


 人を呼び込む声。

 興奮した様子で僕たちの横を走っていく人。

 新聞を手に持って喜びながら人だかりから抜けていく少年の顔──

 

(ああ)


 くそ。


(こういうのに慣れないといけないのに)


 死ぬのを歓迎されてるってのはどうも居心地が悪い。

 群衆の中から飛び出してくる人たちの表情は皆、幸せそうな顔をして。

 その口からは、よかった、安心した、という安堵する声も聞こえてくる。

 中には興奮をしたまま耳をふさぎたくなるような罵詈雑言を散らす人だっている。

 転生者に身内を殺されているらしい人は叫んでいた。


「ざまあみろってんだ! 化け物が!」


「一人残らずぶっ殺せ! 今度こそ戦争に紛れ込まないように!」


「監査庁バンザイ! 監査庁バンザイーッ!」


(……僕たちがどんな気持ちで生きてるかを知らないくせに)


 そう思っていると、アンが近くに寄ってきて手を握ってくれた。

 僕の拳は震えていたらしい。

 ユウトも肩を叩いてくれた。ありがたい。

 幸いにも人だかりの中に入らずとも、その号外は地面にも落ちている。

 それを拾おうと手を伸ばすと──

 

「かつてのレコードホルダーは転生者だったらしいぞ!!」


 という言葉で、拾おうとしていた手が拒んだ。

 

「……レコードホルダー?」


 それって……。

 強張っていた手で新聞紙を拾い上げて、反対を見ると──

 そこには見知った顔が2つ映っていた。


「スケア……」


 ――『かつてのレコードホルダーは転生者だったと監査庁が公表!』――


 その見出しで書かれた記事に目を滑らしていく。


「アイツ……転生者だったんですか?」


 アンの言葉になにか返そうとしたが、口が言葉を選び終えるまでに読み終えてしまった。新聞を握っている手に力が入り、クシャッと紙面にシワが走る。

 

「クラディスさん……?」


「…………スケアが死んだ。いや、殺された」


 何を言っているのか分からない様子の二人は各々、新聞記事を拾い上げる。

 くそ……なにがどうなってるんだ……!


(スケアは転生者じゃなかった……)


 アイツには称号なんてなかった。

 ちゃんと確認したから間違いなんてない。

 それに、僕が驚いてるのはそれ以外にもあった。


「あるじ……この名前、もしかして」

 

「うん……そうだよ。だから、混乱してるんだ」


 そう、この新聞記事には見知った顔が2つある。

 一人は狼人(ウェアウルフ)のスケア。

 そして、その殺した人物の名前と顔写真──肩下まで伸びるロングヘアー、顔つきは天使が拘って作り上げたといえるほど美しい。


 ──僕の友人。


「イブが……スケアを殺してるなんてさ」


 監査庁に所属するイブ・レイン・アーマリアが、スケアを殺していたのだ。




 第7章:悪徒同盟──完

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