529 ユラさんに達成報告を
「長かったわね~」
「ちょっと使うところが分からなかったので、でもバッチリです」
待っててくれたみんなと合流して鍛冶場を後にした。
「それでもう王国に帰るんですか?」
「ああ、団長がうるさいのなんのって……お前を待ってる間にも1回かかってきた」
「アサルトリアは本当に激務なんだな……」
「おたくは焦らなくていいのかよ、準上位血盟サマよ」
いやみったらしく言ってきたムロさんに、ユットロールさんは肩を殴っていた。
「うちの団員は働き者だからな! 俺は協会に行く手はずを整えなければならん」
「あ、そっか、ユットロールさん協会に行っちゃうのか」
「はい。といっても、すぐではないですがね」
「じゃあその間はエマさんが団長代理みたいな感じで?」
「あら、私も魔導士協会に行く予定よ? だから、エヴァーチェは事実上、協会に移籍する流れになるわ」
「おおおおおおー……?」
雰囲気で盛り上がったけど、協会側に移籍……とはなんだ?
「冒険者の王道な成り上がり方だぞ、知らないのか」
「そんな事言われましても……僕そんなに強くないですし」
というと、エマさん達が変な顔をしてきた。そんな目で見ないで。
「3つの協会の周辺には都市が形成されてるんだ。ある種の都市国家のようなものだな。魔王領との境界線だからそこで発生する依頼というのもレベルが高くなる」
「じゃあ、普通に血盟の順位を上げるにはそっちに行った方が良い?」
「そうなる。が、協会の街に行くには団長と副団長が協会に属している必要がある」あ、だからユットロールさんは剣闘士協会じゃなくて魔導士協会なのかな? 目のこともあるだろうけど「アサルトリアでいえばマーシャルは協会に属していないから、どう転んでも協会の方には移住はできない訳だ」
「へー……さみしくなりますね」
せっかく同じ王国に来てくれたのにさ。
「なに、クラディスさんもすぐに来るさ」
「……でも、うちの団長は、協会とか興味なさそうだから」
「リリーさんは興味ねぇだろうなー」
「まぁそんな感じで……」と言いながら、皆の輪から少し離れていく。
「? どうしたクラディス?」
「いえ、ちょっと野暮用で。お気になさらず〜」
忘れない内に通信魔法で結果報告をしておかないと。
アンが不思議そうな顔をしてきたので、ポケットの紙を指さしておいた。
意図が伝わったみたいだから、他の人達に気づかれないようにサポートをしてくれるだろう。
今のうちに魔法陣を構築して、と。
「……あ、あーー、もしもし、ユラさん?」
《……なんだ、クラディス様でしたか。驚きました》
「驚かせちゃってすみません」
良かった、繋がったみたいだ。
《複雑な魔法陣になりましたね。最初、攻撃魔法かと思って身構えました》
「あははー……ごめんなさい。あれから色々と改良をさせてもらって、魔素消費とかも少なくなったんですよ」
《ほお、魔素消費が》
「今はかなり複雑ですけど、そのうち簡略化できるところはしていこうと思います」
《おー──ぱちぱちぱちぱち──さすがお嬢様のお弟子様です──ぱちぱちぱち》
拍手の音が入ってる。真顔で拍手してる姿が思い浮かぶなぁ。
《たしかダンジョンに向かわれるんですよね?》
「すぐにではないですが。どうしました? 応援してくれるんですか?」
《もちろんです。場所はモルの大森林ですか?》
「多分、そうー……かな?」と適当な返事を返しながら(モルの大森林って中位ダンジョンってあったっけ……?)と思った。ぱっと思い出せなかった。
《頑張ってください。お嬢様もクラディス様の成長を待ち望んでいますので──誰と話してんだ?》お、誰かの声が入ってきた。誰だろう。男性の声……?《今はクラディス様とお話をしてるんです──クラディス様? 誰だ?──ティナお嬢様のお弟子さんの──あー、分かった分かった》これ聞いてていい話なのかな?《なんで弟子がお前と話してるんだ?──お友達ですので。仲良しですよ?》わ、なんかそう言ってもらえて嬉しい《そうか、まぁ、俺はちょっと出かけてくるな──あ、クラディス様がダンジョンに向かわれるそうなので、激励の言葉を──お! そうか、頑張れよ〜。気をつけて最下層まで行けな〜?》
「はい、ありがとうございます」
雰囲気的にちょっとやんちゃなおじさんって感じかな。
サングラスとかかけて海辺にいそう。陽キャオーラがひしひしと伝わってくる。
《律儀な奴なんだな、ありがとうって言ってるぞ──そうです。クラディス様はお優しく、ちょっと性格が面白い人なんです》聞こえてますよユラさん《モルの方か?……ん、分かった──行ってらっしゃい。あ、外にいるのは新人なので──新人〜? なんのこっちゃ分からんが、分かった──ではお気をつけて。すみません、クラディス様。急にグランツが起きてきたので》
「グランツさん……彼氏さんとかですか?」
《彼氏……ああ、違いますよ。私と同じくティナお嬢様に仕えてるんです。私に彼氏なんていませんよ?》
なんか、すごい間接的にユラさんが彼氏がいないことを聞けたぞ。
アンの視線が痛い……そういうつもりで聞いたんじゃないって。
「ティナ先生ってすごい人なんですねー……さすが軍事顧問……」
ユラさんと、ハインストのティナさん、そして覇軍の人たち。
交友関係ヤバすぎ。そんな人を叩きまくるナグモさんも何者って感じだし。
《そういえば、コレはこちら側から消すことは出来るんですか?》
「……消すことはー……あー、できないです。すみません、改良の過程で消しちゃったみたいで」
《まだまだ改良の余地ありですね。それでは、また近々お伺いすると思いますので、そのときはまた》
「はい」
《魔法でわからないことがあったら聞いて下さいね》
「分かりました。頼らせてもらいます」
《あと、クラディス様から頂いた彼ら、しっかりと働いてくれてますよ。最初は大変でしたが、叩けば素直に従う者たちばかりでした》
「あはは……役に立っているみたいで良かったです」
ユラさん怖い。あの表情で叩かれたら僕だったら泣いちゃいそう。
まぁ、あの人なら上手く使ってくれるだろう。
「では、また何かあったら連絡させていただきますね」
《ええ。では》
そう言って、僕は通信魔法を解いた。
魔素の消費……は全然消費してない。あれだけ喋ったのに。虚霊質を見つけてなかったら、こういうのにも気付けなかったろうなー。
「クラディス」
「うわ、びっくりした……レヴィさん」
「先の魔法はなんだ? 魔法の反応があったから気になっていたのだが」
「そうよ。ちょっと教えなさいな」
エマさんまで。
教えなさいと言われましても。……とりあえず紙を見せてみるか?
「知り合いの人にコレを完成させるって課題を言われて。それで、一回目の施策魔法がこっちで。完成したのは紙には書いてないんですが」
ユラさんからもらった紙と自分がまとめた紙を見せると、2人はそれを受け取ってジロジロと眺めていた。
そして、なにやらブツブツと話をして変な目を向けてきた。
「なるほど、よく分かった」
「うんうん……まぁ、誰にも言わない方が良いわね」
なんだよお、その反応。
関心をしてるかと思いきや、呆れてるみたいな顔をしてさ。
失礼しちゃうよ。




