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527 魔素の単位


 僕が出したのはユラさんから渡されていたほとんど解読済みの通信魔法の紙。

 使えることはアンとユラさんで実証済み。残る問題は魔素の効率化だけだ。

 だから、何かの助けになるかと思っていたんだが……。


「ふおおおおおおおおおお、なるほど! なるほどな!! なるほど……!!」


 思いがけない食いつきにちょっと引いた。

 折りたたまれてた紙の魔法陣を見て、魔導書を広げてパラパラと見ていってる。

 助けになってるみたいで良かったです。怖いけど。


「転移魔法の応用。魔素を記録媒体とするのは同じ考えだが、なるほど……音声はこういう風に……そうか、たしかに理にかなってる……。波形情報として届けるのは確かにそうだ。となると映像記録よりも簡単に記録が出来る……が、映像記録と音声記録が別々に撮ることになるからズレが生じるか」


 昔の録画とかもあったなー、音声と映像がズレるやつ。

 

「同時に記録すれば良いが、となると中央の魔石への変換方法を──」


 ぶつぶつぶつぶつと考え込んで、紙を広げてなにやら書き出してる。

 これで大丈夫かな?

 

「じゃあ、フィヨルさん……僕はここらへんで」


「待て! 待って! 待って欲しい! 君の意見も聞きたい! これは君のか!?」


「いや、知り合いので。宿題として出されたんです」 


「宿題だって? とんでもないんだな……ちなみに、キミは使えるのか?」

 

 論より証拠か。

 フィヨルさんへ飛ばすように魔法陣を設定し、少し離れて魔法を飛ばした。


「聞こえます?」


《おおおおおお!》まずい、耳が潰れる《聞こえるぞ! 声もそこまで変わりないな》


「……ってな感じです」


 指先で魔法陣をクルクルと回すと、それを穴が空くほど見つめて。


「……魔法陣と比べたら、私がするべきはそこまで複雑じゃなくて良い。が、魔石の書き換えに時間がかかる……ん、まて、この魔法は魔素消費が大きめではないか?」


「そうです。結構疲れます」


 そこに気づくとは、結構な魔導書を読み込んでるんだな。

 いや、こんな魔導具を作れる辺り、魔導に関しては僕よりも秀でているだろう。


「それでは意味がないな。……問題は、どこだ。……ここか、転移魔法の原理を使っているから魔素使用量が多いんだな」


「ここを改良したくて色々と考えてる途中なんです」


「転移をやめたらいいんじゃないか? なにもズレなく話す必要はないだろう」


「それができたら苦労はしないんですよ」


「座標指定はどうだ」


「座標指定をするにはかなり近距離にいないとできないです」


 転移魔法を簡略化したのが座標指定だけど、自分が検知できる範囲内じゃないと反応をしないという欠点がある。僕が座標を指定できる範囲はせいぜい3kmほど。それ以上離れている場合だと機能しなくなってしまう。


「じゃあシンプルに魔素消費量を少なくしたら良い」


「いや、だからそれが難航をしてるんですよ」


 できるものなら最初からやってますってソレ。


「この魔法を分解して考えると、声の振動を魔素に記録させ、その魔素を転移で飛ばし、受け手側でそれを変更する、という三段階に分かれている。ここで一番魔素を使っているのは最初の魔素に記録させているところ。ここを簡略化できたら消費量は少なくなるだろう」


 ……となると、この魔法陣で言うと……ここか。

 既に完成されていた部分。


「……記録させる魔素の効率化を図れば、消費量を抑えることができる」


「そう。シンプルでかつ合理的だ」


 フィヨルさんは先ほどなぐり書きをしていた紙面を広げながら僕の近くにやってきた。そして、該当箇所を指先で突く。


「今、この組まれている文字は完璧に見えるが、定期的に魔素を送る量についての言及が甘い。これでは無駄が多すぎる。もっと小さな単位で送ることができたら」


「小さい単位、ですか」


「そうだ。まぁ、それも難しい話なんだがな……魔素を細かく理解するにはそれ相応の理解が必要。転移魔法の分野、そして魔素自体への理解度が必要だ。となると……これを作った君の知人は転移魔法の扱いが上手いが、魔素量が多い人物ということかな……魔素量が多いとここは別に障害にはならないからな」


 フィヨルさんの説明を聞き、僕は唇を押さえていた指をゆっくり離した。


「………………そうか」


 なるほど。

 完全に見落としていた。

 使用魔素量を少なくするために、単位を小さくする。

 僕はソレを知っている。

 魔素の最小単位。


「虚霊質か」


 僕が見つけたソレなら、この問題を解決ができるかもしれない。

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