523 同胞たちの居場所は
「そんなに消えるほど転生者がいる訳がない……。だって、勇者はそんなにいないし……賢者だっていないじゃないですか」
みんなは心の何処かで【転生者】が特別な存在だと思っている節がある。
だけど、他の称号Ⅰ持ちと同じで、稀有な存在なのだ。
いくら魔王の脅威に打ち勝つために異世界から呼ばれた者たちだとはいえ、そんなに多いわけがない。
(……けどこの場にいる人達でさえ、そんなこと思ったこともなかった)
大勢捕まった。
転生者を大量に確保ができた。
あの人も、あの人も、あの有名な人も。
そんな訳がないのに。転生者は異世界人だから、という理由で片付けられていたのだ。
「……たしかにそうだな」と、ムロさんも唸っている。
「転生者探しに躍起になって誰彼構わず捕まえて殺した……疑心暗鬼にはなってたけど……」
エマさんも顎に手をやって考え込んでいる。
「その中には転生者じゃない人間もいた……?」
「……」
信じたくない話だが、事実だ。
人数が明らかにおかしい。
「だが! 俺達の同胞はに子どももいた。全員が転生者だってなる訳が」
「おいおい、子どもだろうが爺さんだろうが婆さんだろうが腹に子どもがいようが殺されたんだぞ。その理論は通用しないだろ」
「しかし……」
「じゃあ、同胞は全員……殺されたのか……?」
「その可能性もあるな」
2人の表情が抜けて落ちていく。
領土戦争の後の転生者探しで大勢が死んだ。
その中に彼らの家族がいた可能性がある。
誰だってこんな話は聞きたくないだろう。
「だが、ダークエルフやハーフエルフは一箇所にまとまっていた訳じゃあない。今もどこかで暮らしてる奴らもいるだろ。それこそ、お前らみたいにな」
「……それを探すためには」
ローゲンは僕の方をチラッと見た。
ふむ、ちょっと感じたことをまとめてみるか。
「人里離れて住んでる場合、こちら側の情報は一切届かない。だけど逆ならある。人は動けば情報が残りますから」
「……?」
「それが戦争から十数年経ったのに情報が無いんです」
ARCUS第四地区は魔王に侵略され、左下の四分の一部分に押し込められている。
そこが現在の人類の生活区域で、人が溢れ、森の中にはモンスターが溢れている。
依頼で森に入れば戦うし、街の中で目撃されずに暮らすなんてのはまず不可能。
じゃあどこにいるのか、と。
「人に見つからずに過ごせる場所がこの大陸にはありますよね」
「……魔王領?」
「じゃないかと思いました」
「……」
モンスターはいれど、人の目に触れることが滅多にない。
生きているとしたらこの生活圏にいない可能性は大きい。
「まぁ、可能性の一つだ。が、お前らの種族は強く、森の中でも生きていける。なら、魔王領でも暮らすことは出来るだろうな」
「………………そうか、なるほど」
「言われてみればそうだな」
どうやら腑に落ちたららしい2人は顔を見合わせて、僕の方を向いてきた。
「感謝をするぞ、弟。少し視点を広げて探してみるとする」
「ありがとね。ちょっと冷静になった気がするよ」
「がんばってくださいね。それと、よろしくおねがいしますね」
なにが、とは言わなくても伝わるだろう。
そして、そこで2人とは別れることになった。
あっという間だったけど、これで部隊の仲は保たれると期待をしておきましょう。
……それにしても、魔王領なら人の目に着かずに生活をすることができる、か。
「…………」
「おにーちゃん?」
「? どうしたの?」
「いや、なんか、嬉しそうな顔をしてたから」
「え!? してた? してたかな……」
自分のほっぺを触ってみて、んー、と唸る。
なんで嬉しそうな顔になったんだろ。よくわかんないや……。
「じゃあ、そろそろ武器、取りに行こうぜ。いい加減できてるだろうし」
「だな」
わ、そういえばそうだった。武器だ。武器を作りに来てたんだ。
「ぼ、ぼくも行きます!」
「当たり前だろ、はやく来い」
自分の武器や装備と出会えると聞いて、一気に胸が跳ねた。
色々あった後にデザートを食べる気分だ。めちゃめちゃ楽しみ。




