522 ひとさらい
二人の団員と仲良くしたいため、団長の弟だと偽って近づいた。
そして、主従契約を結んで今に至る。
文字面だけで見たらヤバイことしてる気がするけど、なぜかそんなにヒドイことはしていないという謎の自信がある。
まずはエリルに聞いておいて、次は街の人たちに聞き込みをしないといけない。
から、どうしても冬山の皆と別れる必要がある。
「また遊ぼう?」
『ママとまだいっぱい遊びたい……』
「またすぐに時間作るから、ね?」
『ヤだぁ……!』
デイジーの両翼に包まれて身動きが取れない。
イヤイヤ期……というより僕が忙しすぎて頻繁に会えないんだ、ごめんよ。
デイジーやダンカン、モンドが小さくなって一緒に街で暮らす〜みたいな展開があったら良かったんだけど、討伐対象になっちゃうしなぁ。
さすがに魔獣使いになったとしても街中でずっと一緒にいられるとは限らないし、一緒にいれたとして悪目立ちはしたくないし……。
『デイジー、ご主人が困ってるじゃないか』
『そうだぞー』
『困ってないもん……困ってないもん……』
(どうしたものか……)
結局デイジーが泣き止むまで一緒にいて、転移で別れることになった。
前はすんなりと別れることができたけど段々とデイジーも感情が出てきたというか、なんというか。
……傍からみたら、僕、頻繁に会わない母親かぁ。
(……もしかして、毒親……?)
いや、それでも頑張って会ってるはずで……うん。
でも、デイジーが寂しがってる時点でそんなに会えてないってことだもんな。
「大丈夫か? アイリス弟」
「うん……別れるって辛いなぁって思ってさ」
長期休みが取れたら冬山に入り浸ってやろう。絶対そうしよう。
(はぁ)重たいため息を体の内側で留めた「聞き込み、行こっか」
約束通り街中でハーフエルフとダークエルフの聞き込み調査をしていった。
だが、なかなか情報というのは出てこない。
これは難航しそうだ……。
「おー、クラディスって……なんか増えてね?」
「ムロさん。えーと、こちらは知り合いです」
「って、幾千ノ剣のムロとレヴィじゃねぇか」
「本当に有名人と知り合いなんだな」
「クラディスさん、そちらは……?」
「ユットロールさんも。知り合いです、こちら」
「今度は……ロベル王国の若虎とその副団長か」
(え、ユットロールさんロベル王国の若虎って呼ばれてるの……?)
ちょっとおもしろいな。
ムロさん達と合流したら、反対方向からユットロールさん達もやってきた。
冬山の皆と遊んで、依頼をして、聞き込み調査をしてたから丁度良いくらいの時間が経ったみたいだな。
「お前、何者なの?」
「ただのガキだって」
僕が二人にあわせたかったのはこの人たちだ。
ダークエルフとハーフエルフのことを何か知ってるかも知れない。
領土戦争らへんから姿が見えないということは、ある程度上の年齢の人なら分かるだろうということで。
「この2人はダークエルフとハーフエルフを探してるらしいんです。何か知ってることはありませんか?」
「ダークエルフと」
「ハーフエルフねー……」
ムロさんとユットロールさんは首を傾げる。
「丁度、領土戦争の辺りから周りから同胞が消えたんだ」
「帰ったら集落もなかった」
「ふむ……ダークエルフの知り合いは昔いたが戦争で死んだし、ダークエルフの部隊ってのもあったがそれの消息も分からん」
「そこに俺はいた。仲間がどうなったかはよく知ってる」
ユットロールさんの話はそこで終わった。ダークエルフの部隊なんかあったんだ。
「俺は領土戦争には参加はしてねぇからよく分からんが、その時期はよく人さらいがあったと聞く。それに巻き込まれたんじゃないか?」
「人さらい? 初めて聞くぞ」
「一時期、行方不明者がたくさん出たって話が出た。が、それが全部転生者だったんじゃないかって話になって沈静化したんだ」
そんな話があったのか。結構みんな初耳みたいな顔してる。
転生者の情報を追いかけていたムロさんだからこそ知ってる話だな。
「そういえば……四ノ柱の隊長が変わったのもその時期だったか」
くあとろ? とアルマに聞かれたので、剣闘士協会の強い人だよ、と話す。
四ノ柱は皇、戦士卿の次の階級であって、そこの隊長ともなれば剣闘士協会のナンバー4になる。
「それは転生者だと言われていただろう」
「ああ。だが、ダークエルフだった」
「……!」
「協会の人間の一部戦力は領土戦争には加わっていない。そのダークエルフ、アルベルトも加わってはいなかった」
聞いたことがない名前が出てきた。
「だが、消えた、と」
「ああ。後々、転生者だったので処刑をしたという報道だけされてな」
「あの時期はバタバタと人が殺されたものね。今ほど冷静じゃなかった」
当時のことをそういう目線で聞くことがなかったから、素直に聞き入っていた。
そうか。転生者側からしたら怯える毎日だったけど、傍からみたら「人が消えた=転生者だった」という話で、それはそれで驚きだっただろう。
──転生者が死んだ理由の多くは内部告発だった。
仲間内から売られ、捕まった転生者が仲間の情報を吐いて。
(それこそ、ダミアンさんとムロさんのように)
そうなれば、人が急に消えるほど転生者が捕まるっていうのも──
(…………)
いや、そうじゃないだろ。
これ……誰も気がついてないのか?
「一つ、良いですか?」
僕は皆が納得を仕掛けている中、手を上げた。
「……?」
「転生者は称号Ⅰ持ちです。そんなたくさんいないと思います」
皆がその一瞬だけ呼吸をするのを止めた。そんな空気になった。
それほどまでに誰も気にしてなかったところだった。




