518 おっかない姉にそっくり
「彼女が暗黒森の番人であるということは調べたらすぐに分かることだ」
「だが、転生者だ」
「情報を知ってるかもしれないじゃないか」
「……知らない可能性が高い」
「つまるところ、君等2人は同胞の情報を少しでも知ってる可能性がある札付きに会いに行こうとしなかった。危ないから、転生者だから、そんな指名手配書に書かれただけの情報と人づてに聞いただけの情報でそう判断したんだね」
ちょっと後ろの方の方で「お兄ちゃんが理詰めしてる」ってぼそって聞こえた。
「ああなったあるじは怖い」ってアンの声も聞こえる。
『ママかっこいい』というデイジーはまぁ、いいか。あとの2人は後でちょっとお話をしようか。
「じゃあ、君等側もそう判断をされてしまっても仕方がないだろ」
「……」
「……」
大の大人にクソ生意気に講釈を垂れる僕って何様なんだろうなぁ。
典型的な面倒くさい大人になりそうな気がする。
……まぁ、そのときはその時だ。誰かに殴って止めてもらおう。
「そこで、僕は君達に手を貸したい」
「……?」
「王国を救った人たちの汚名が広まるのは避けたいんでね」
というのは建前な訳だが。
「耳障りがいい言葉だな」
「お前にメリットはない話だ」
「いいや、あるね」
不安なときこそ言い切る。
リリーさんが僕にやってくる人心掌握のやり方の一つだ。
「君たちに借りができる」
不安な時こそ、こういう断定的な言葉が身にしみていく。
「俺らに何を求めてるんだ」
「札付きだよ~? 変なことはできない。それにたくさん人を殺した」
「いいや、すごい簡単で重要なことだ。君ら2人にしかできない」
そういうと僕は人さし指を一本立てた。
「僕の姉さんに力を貸してやってほしいんだ」
きょとんとした顔を浮かべられた。
「アイリス。紫蘭之団の団長で、君等の隊長に当たる」
「それが姉……? お前は、アイリスの弟だというのか……?」
ニヤリと笑ってやった。
「家で愚痴られたんだよ。いま、すごく、大変らしいからさ。王国の部隊の団長だろう? 目立つのが苦手なのに目一杯頑張ろうとしてるんだけどさ、中々上手くいってないみたいで」
あははー、と苦笑いを浮かべる。
実際問題、勝手に隊長に任命され部隊員をまとめ上げれる気がしなかった。
それでもって色々と忙しいし、打ち解けれる時間なんてなかったし。
「だから、2人は姉さんが安心して仕事ができるように場を整えてほしい」
べつに対立する必要がないなら、対立なんてしたくはないのだ。
仕事環境なんて良すぎるくらいでちょうどいい。
「その前に弟……男……? お前がか?」
「ついてないでしょ」
「ついてますよ、なに言ってんですか」
今日の格好は確かに女装をしてるからアレですけど。
「だが、おっかない感じがたしかにそっくりだ」
(アイリスがおっかない……?)
アイリスの姿で2人と話をした時に感じた印象としては「心の壁があって打ち解けるのが難しそう」だった。
明らかにこちらを警戒している顔をしていたし、テリトリーに入ってくるなという顔を二人ともしていた。
なんだ、お互い様だったのか。
「確かに、お前はおっかない姉にそっくり。雰囲気が怖いんだ雰囲気が」
「そんなことはないと思いますけどねー……」
「じゃあ、手を貸すっていうのは具体的にどういうことをしてくれるのかな」
エコーさんからの問いに僕は意味ありげに笑ってやった。
「有名人とあわせてあげましょう」




