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517 襲っていた理由



 正直に言って驚いていた。

 種族スキルを使ってみようと思ってたけど、アレほど高圧的だった二人が僕に向かって頭を垂れたのだ。

 すぐに解除をしたが、亜人という存在が最上位種っていうヤバイ奴だと再確認することができた。

 

(……そんなほいほい使って良いスキルじゃないな、コレ)


『ママー、もう喋って良い?』


「いいよー。ごめんねデイジー急に呼んで」


『急に呼ばれてうれしい』


「えへへ」


 嘴をグイグイと押し付けてくるので、撫でてやった。

 すっかり大きくなっちゃって。おばさんよりも大きいんじゃないか?


『ママ! なにする! なんでもできる! デイジーつよい!』


「今はちょっと待機かな。後でね」


『むぅ……』

 

 種族スキルには、身体変化、下位種支配、下位種統治の3つがある。

 身体変化に関しては分かっているし、下位種支配がさっきの奴。でも、下位種統治に関しては良くわからない。

 主従契約の延長線上みたいなアレなのかな。

 使ってみたいけど、統治ってなんか仰々しいしな。

 

「俺達は同胞を探しているんだ」 


 おっと、話し始めてくれたか。

 しばらくずっと黙ってたからどうしたもんかと思っていたんだ。


「質問をしただろう。ダークエルフとハーフエルフを見たことがあるかと」


「うん」


「知らないと答えたろう」


「うん」


「いないんだよ。王国に住んでて生活をしている同胞の1人や2人を国内で見たか?」


 記憶を思い返しても誰一人いない。

 ログリオさんと麻央さんは生活というかなんというかだし。


「領土戦争以降、ハーフエルフとダークエルフの姿を見なくなった」


「戦争で全員亡くなった可能性は?」


「我らはあの程度のことで死ぬほど、柔くない」


 舐めるなよと目で凄まれるが、流しておいた。

 プライドがあるんだろうし、それを至上命題にしているのは分かったが、殺そうとしてきた人の圧に臆することはしないとも。


(でも、本当にそうなんだよな。名前とか本当に聞いたことないもんな……)


 ハーフエルフは特殊な技を使う。パーティーにいたらその分、戦闘能力は格段に上がる。

 ダークエルフも鬼人族と並んでパワー系の種族だ。

 本来なら剣闘士系の上級冒険者で彼らの名前を聞いてもおかしくない。

 それに街で見かけないし、名前もそんなに聞かないとなれば心配もするか。


「だから、俺等は名前を上げることにした。善行をしても名は売れん。悪名ならすぐに轟く」


「分かったかな、レコードホルダー。分かったら消えてくれ」


 エコーが地べたに座ってこちらを見上げてくる。口が悪いな、この人。見た目はすごい好青年って感じなのに。いたよな、生徒会役員なのに性格が悪い人。そういうタイプだ。ローゲンさんの方は気難しそうな顔してるのにまだ融通が利く。


(悪名の方で名前を売ろうとするのは炎上商法的なアレだよな)


 確かに名前を売るには手っ取り早い。

 探してもいない同胞を見つけるためには、見つけてもらう必要がある。

 探していないということは隠れているという確率が最も高いからだ。

 それこそ麻央さんのように山奥でひっそりと隠れている場合だってある。

 だから、手段なんて選ばずに相手を殺してでも名前を売る必要がある……か。


「まぁ、自分たちの品位を落とすようなやり方はしない方がいいだろう」


「何も知らない者が何を上から」


「そんなやり方で名前が広まっても、同胞は誰も嬉しくないんじゃない?」


 これに尽きるよな、ホント。


「懸賞金じゃあ名前と顔は書かれない。だけど、武勲を上げたら名前が売れる」


「それが難しいからこうしてやってるんだろ」


 まぁ、その気持ちも分かる。


「じゃあ、君等が逆の立場だったら指名手配の同胞に会いに行こうと思うのかい?」


「……」


 ここで即答をしない辺り、なにか彼ら自身の中にもこのやり方に「違和感」を感じていたのだろう。

 話を聞く限り、2人は不器用だ。

 実力はある。けれど、戦い方しかしらないから、そういう面でボロがでる。

 ダークエルフやハーフエルフが全員優しく、犯罪に手を染めない人で構成されていたら「指名手配されている? 同胞が? そんな訳がない!」となるかもしれないが、そうではないのだ。

 どれだけ優しいと言われている人であっても犯罪を犯す可能性がある。

 世間一般的に優しいとか言われてた国の民だったけど、別に全然そんなことなかったしなぁ。


「それに君等が目立った時、どうやって皆は君等にコンタクトを取るんだ? 連絡先でも書いてある訳でもない」


「…………」


「何も考えずにやってたの?」


 呆れた。見切り発車も良いところだ。

 ……まぁ、いなくなった同胞達を見つけたいという気持ちは尊重されるべきだ。

 だが、さすがにやり方が不味い。

 なぜ、同胞がいなくなったのかという理由が分からない以上、自分たちで自分たちの種族の顔に泥を塗りたくるのは避けた方が良い。

 他の人らはダークエルフが問題を起こしたらダークエルフ全体を見る。ハーフエルフが人を殺したなら、ハーフエルフの評価が下がる。

 同胞のことを愛しているなら、それほどまでに心配をしているなら評価を下げるようなことはするべきではないのだ。

 

「2人がどれだけ頑張っても、指名手配書に書かれた以上の内容は汲み取れない」


「それはキミの主観的な話だろ」


「じゃあ、君等は黒薔薇の騎士に会いに行ったかい?」


 言葉を詰まらせるってことは、会いに行ってはないんだな。

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