514 100レベル差
アンとアルマに後処理を任せて、僕はこの2人と全力でぶつかることにした。
レベル差があろうとも関係ない。関係ないったら関係ないのだ。
フーシェン相手にアルマの技を見せた処理とか。
普通に魔法を使ってそれを見られたこととか。
そんなことは一旦、どうだって良い。
今は──ただ──この戦闘に──没頭だ!!
「《止まれ》ッ!」
ビタッと体が止まった。
「はあ! なるほど! そういう能力か!」
そしてその硬直状態で、ローゲンが武器を振り下ろすと!
単純だけど良い連携だ。よほど普段一緒に行動してるのだろう。
でも、動きを止めただけで、魔素の流れを止めた訳じゃあない。
「フンッ!!」
振り下ろされた磨り潰されてしまいそうなほど巨大槌を黒い魔素で受け流した。
体を掠めて地面に落ちた瞬間、体の硬直が解けた。
──時間経過か? それとも視界から外れたか?
なにはともあれ、術者を狙うのが定石だな。
振り上げも当然早い。普通ならこんな大ぶりの後は隙だらけだっていうのに!
跳ね上がるように体を動かし、ローゲンの顔面に短剣をねじ込もうと手を伸ばした。
「クッ──!?」
避けるか。そりゃあ、そうか。
上体を反らしたことでその後ろにいたエコーと目が合う。
「《武器を手放せ》!」
握っていたはずの武器が手から弾かれたように落ちていく。
珍しい技を使う。やっぱり声にしたのが実際におきるみたいだな。
──昔にそういうのを聞いたことがある気がする。
勉強会でだっけ。
たしか、分血の森守人の中で代々伝わるユニークスキルだった気がする。
「今だ!」
悩んでいるとローゲンの手が顔を覆った。
これ、掴まれると、死ぬか。死ぬな。
なら──こうだな。
ローゲンの手に五指を絡めた。
「!?」
握りつぶそうと力を込められるので、こちらも同じように力を込める。
だが、さすがに無謀だったか。
「オレを舐めるなよレコードホルダー……!」
──暗黒森の番人はその強大な力が故に、迫害された過去を持つ。
なんて話を聞いたことがある。
なるほど、これは想像以上だ。
ギヂッと骨が軋む音が聞こえてきた。
「舐めちゃいないよ。むしろリスペクトしてる」
ので、落ちていた武器を黒い魔素で拾い上げて肘辺りに短剣を突き刺さした。
「グッ!?」
「なんだそれ……黒い……魔素?」
緩んだ瞬間、懐に入って僕のほぼ2倍ほどある巨漢を背負って投げた。
「ヌオっ!?」
そして振り向きざまにエコーの喉に黒い魔素を這わせようとすると、
「《吹き飛べ》!」
再び、体が持ち上がって行く。
ミシミシッと周囲の空気が悲鳴を上げた。
が、ソレの対処方法は既に確立させている。
──黒い魔素をエコーとローゲンに纏わせた。
「空中散歩と行こうぜ──ッ!!」
グンッと内臓が押しつぶされそうな圧力がかかり、僕たちの体は再び空中へ。
そして、静止したタイミングで空中の二人を魔素で掴んだままぶん回した。
「ハッハァ──ッ! あ──!! 楽しいなァ!」
そのまま遠くの山肌に向かって放り投げ──僕は飛行と衝撃を併用して二人の元へ飛んでいく。
ドンドンドンッと衝撃を空中に叩きつけながら加速、加速、加速──ッ!
ユットロールさんがしていた小技。あの人の衝撃の使い方は参考になる。
──と、その時、目の前に空気の塊が届く。
「ッ!?」
寸前で避けたがソレはエコーが放ったと思しき魔法だった。
その数は確認できるだけでも30は越えていて、僕が角度を変えても追撃をしてきた。
「……さすがっ……!」
方向転換を行い、その攻撃から逃れようとしてもソレは追ってきていた。
(伊達に100も離れてないな。技の一つ一つのグレードが違う……)
追撃から逃れようと地面スレスレを飛んでいると、太陽の光を遮る影。
「──!」
上から振ってきたのはローゲンだった。
触れたら──死ぬな、コレは。
黒い魔素を木々に引っ掛け、体を強引に静止。
狙いが外れた彼の武器は地面に突き刺さった。
「チィッ──!」
だが、その攻撃は地面を波のように蠢めかせる。
地震という魔法があるが、それに近い地面の動き。
(これ、まずい、か)
その揺れの動きができるほど地面は軟らかくなく、破片となってその体を跳ねさせる。
そちらに向けて土壁を出し、破片を全て無力化し──ローゲンが壁を突破って現れた。
何度も地面を叩きつけながら襲いに来るソレを避けていると、背後から魔素反応。
「スゥ──」振り向けば、頬袋を膨らませているエコーの姿「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
咄嗟に耳を塞いだが、間に合わなかったらしい。
地面を動かし、周囲の木々の葉を散らすほどの咆哮。
フォレストウルフのとは比べ物にならないな……!
幸い、威圧に対しての耐性はあるため、恐怖状態になることはない。
が、目から血が流れ、耳の機能は停止。
内臓なんかも内側から出血をして止まらない。
「くっそ──」
即座に自分の身体に治癒魔法をかけながら、追撃をしてくるローゲンを避けた。
レベル差が100もあって、実践経験も豊富。
彼らの指名手配書には領土戦争後から現れたと書いてあった。おおよそ20年弱ほど彼らは指名手配をされながらも生き続け、今もなおその名を轟かせようとしているのだ。
「ああ──」体が疼く「いいなこれ──」右手が疼く「あったまってきた」
楽しいな、これ。追い詰められてるというのに、楽しい。全力を出すって楽しいんだな。
「フッ──」
エコーの攻撃により地面が抉れ、ローゲンのぶん回しで木々が更地になる。僕は黒い魔素と飛行と衝撃を使ってソレを避けて戦う。
「いい加減くたばれ──」
「うるせぇ!」ローゲンの一撃に黒い魔素を纏わせ、その場で発火させた。「燃えてろ……!」
「ぐっ──」
その隙に真上を飛ぶエコーに向けて飛翔。
短剣を片手に持っていると、エコーは舌をベェと出した。
「《堕ちろ》!!」
グンッと体にかかる重力が膨れ上がった。
そんなこともできるのか……!?
これ──呼吸も──出来ない──!
「ッ──!」
飛翔する速度よりも早く落下していく体。
まずいこのまま地面にたたきつけられたら──
──ジクッ。
その時、右手の魔障が「俺を使え」と言ってるかのように熱くなった。




