506 各々で依頼をすることに
昨晩はあまり寝られなかった。
恩人になにかあったら助けてくれと頼まれ、仲間だと言ってもらえた。
とても嬉しかった。本当に嬉しかった! ほんとうに!
早く強くならねば! と思ったので、夜通しでユラさんからもらっている通信魔法を理解することにした
そうして朝がやってきた。
「すまないな。団長からお怒りのメッセージが来てな……」
朝から元気のないレヴィさんはそう話す。
寝起きの悪いアンとアルマよりもしおしおとした顔をしている。
どうやら昨日の依頼の仕方が気に入らなかったマーシャルさんが、お怒りのメッセージを送ってきたらしい。
「さすが上位血盟だな。そこまで徹底してるのか」
「少しの遊びも許さないのね……」
と感心しているエヴァーチェのお二人。
さすが上位血盟。あれだけパーティーしてたのに切り替え上手なんだな。
そこから依頼を選ぶことになった。それぞれの血盟で行動をすることになったので、皆でそれぞれ別の依頼を受けてきた。
「エヴァーチェは? なにするんだ?」
「ダンジョン内の装備品集め。連続で死傷者が出てるらしいから、それの回収だな」
「墓荒らしね。地味な仕事を受けたわねー」
「受けれる依頼がコレしかなかったからな」
エルシアさんとユットロールさんがハハと笑いあう。目が笑ってないですよ。
「アサルトリアは?」
「俺らは平原地帯で暴れ回ってるモンスター退治だな」
「? そんな依頼なんてなかったぞ」
「ふっふーん、俺等は血盟宛に来てた依頼だ。ちょっと移動することにはなるがな」
「といってもそこまでかかるとは思わん。数日もあれば帰ってくる」
「ティータは?」
ふい、と話題を振られたので選んできた依頼をペラっと出した。
「僕らは南東の森の中のモンスター退治です」
「それ結構下の方のランクじゃなかったか?」
「僕の姉さんは銅等級の冒険者なので、一緒に受けるとなると」
「なるほどな」
アルマが冒険者なのは簡単な身分証明のためだけどね。
本人も別に冒険者としてやっていくつもりはないらしいし。
「アサルトリアは数日は帰ってこれないだろうから、しばらくは自由にしてくれると良い」
「どうせ、装備はすぐにはできねぇだろうしな」
「はあ~、結局はクラちゃんの服を変えれたのは二回だけかぁ……いっぱい買っておいたのになぁ……」
残念がるエルシアさんは、僕の方を見てきた。
そう、今の僕は初日とは違う女装をさせられている。
今度はボーイッシュな女性。黒とダークグリーンで統一をして、なんなら化粧もちょっとされている。
学ランにちょっと似ている。誰も突っ込まなかったから、もうスルーされるかと思ってたけど。
「大丈夫ですって。また一緒に旅もできると思いますし」
「マーシャルさんが厳しいからあ……ううう」
「また遊びましょ? ね?」
「うんっ……」
「「……」」
やめろ、男性陣。そんな目で見てくるな。
女装をしているのは本意ではないが、エルシアさんが泣いてるんだから慰めるのは当然でしょうが。
それが間接的に「まだ女装してくれていいですよ」みたいな話にはなってるけども。
「じゃあ、また」
そうして、僕らは血盟ごとに分かれることになった。
「あるじ、なんか今日はいつもよりウキウキしてませんか?」
「えっ、あ、うーん。あはははは……してるかも」
いよいよコトが大きくなってきたから慎重にいかないとな。
ムロさんは僕にだけ話をした。ここで、僕がアンやアルマに話をするのはまた違った問題が出てくる。
それに、人の話をペラペラと外で話すのは良くないしな。
(…………聞かれる可能性だってある訳だし)
目線をそちらに向けずに、一歩歩くたびに魔素感知の範囲を広げていく。
「……」
「いいことでもありましたか?」
「まーね」
「なにがあったんです」
「ナイショ」
「……」
眉間のシワすご。ごめんなさい。ムロさんに話を聞いて下さい。
「おにーちゃんはさ、なんでその依頼を受けたの?」
「ん? 聞きたい?」
「ギルドで結構悩んでなかった?」
「そーなんだよ」
「普通の依頼じゃないの?」
「普通の依頼だけどね」
受けた依頼は本当に普通の依頼だけどね。
「直近で、この森周辺でできな臭い話を聞いてね。鍛冶師の人たちが噂してたんだけど……どうやら強い冒険者ばかり狙う人たちがいるんだって」
「なんですかソレ……」
「気になったから、それの調査も兼ねてみようかなと」
強い冒険者ばかり狙う人。
普通に恐ろしいけど、興味がある。
もしかしたら転生者の可能性だってある訳だし。
「それがもし札付きだったらお金もらえるよ、お金」
アンの一件でリリーさんに解析士として依頼を出して、一気に金が吹き飛んでいったのだ。
ほぼ一文無し。依頼もまともに受けてないし。昨日の報酬金がちょっとあるくらいだ。
「お金はアルマがすぐに収めてくれるかと思います」
「あ! そうだよ! 私! プー太郎じゃなくなったの! 働き頭! 稼ぎ頭! 良いところに務められるようになったんだ」
「へー……」
【紫蘭之団】のことなんだろうな。あと、やけにお団子先輩とも仲良さそうだったから、なんか僕の後の便利屋枠にされてそう。
「期待してるよ」
「期待しておいて!」
くいっ、とアンに袖を引っ張られた。
「……」
やっぱりアンは気がついてたか。
「ちなみに、僕もアンも全然稼げれてないから頼むよ」
「た、多分大丈夫だと思う……! 無理だったら言ってみるよ!」
アルマだけが気がついてないみたいだ。
(かなり距離を取って尾行をしている人たちがいる。魔素をかなり抑えてる……この感じは魔導士かな)
なんで魔導士が尾行をしてんだって話だけど……。
僕は特にソレについて言及はしなかったが、袖を捲って腕を撫でた。
──フーシェンだろうな、多分。
こちらの会話を聞いている可能性もあるし、動きも見ている可能性もある。
それはアンも理解をしているようで、呆れ顔を浮かべている。
ここまでしつこいとは思わなかった。本当に面倒な人たちだ。
──殺す、という選択肢を取れるように。
なんて言葉を思い出す辺り、精神面も攻撃性が増してるんだろうな。
亜人の効果なのかどうか。
「おにーちゃん? 眉間のシワすごいよ」
手を汚す覚悟はしている。殺すつもりはないけど。
「いや、ね。アルマの戦闘を見たいけどどうしようかなーって思っててさ」
なんて言ってみると、この子はさぞ嬉しそうな顔をするのだ。
「えっへふーん!」なんだソレ「任せて、ソバドア先生にしこたま鍛えられた私の実力、見せて差し上げましょう!」
「楽しみにしてるよ」
フーシェンにアルマの術を見られるのも面倒だけど、まぁいいか。
やってみたいことがあるし。




