495 ムロのステータス
「転生者って……あの転生者ですか?」
落ち着くまで待ってもらい、僕はベッドの端でそう聞いた。
ムロさんは横に座って、レヴィさんは椅子をこっちに向けて座っている。
「ああ。オマエと一緒の転生者」
「でも、全然そんな感じじゃ……」
「ほんとに気づいてなかったんだな。鑑定があるんだろ? してみたら良い」
「あ」
そうか、そういえばそうだ。
鑑定をしてみて──って。
名前:ムロ
称号:なし
「……え、普通の人じゃないですか」
鑑定した結果、ムロさんに称号はなかった。
「他の場所は? 見てみたか?」
「他の場所って……? ん? 名前が……」
名前:魔素を変えれるんだよ、すごいだろ。
年齢:見えてるぜ、アホ面が
レベル:-123044ってのもできる
称号Ⅰ:なんで女装で来てねぇんだよ。今日一日は女装って話だったろ。
「はっ……なんですか、これ!?」
「魔素を隠蔽することができんの」
「ええっ!? 最強じゃないですかソレ!!」
ニヒッと笑うムロさんに興奮していると、ステータスがフッと変わった。
名前:ムロ
年齢:ここは内緒だな
レベル:797
称号Ⅰ:転生者
レベルッ……797……!
「つよい」
拙い語彙力ではそれくらいしか出てこなかった。
500から上がりにくくなるレベルで800に届きそう。レベルで言えば、ケトスやイブよりも圧倒的に上……。
「こんなに強くて、ステータスの文字を変えることができるとか」
「ああ。鑑定士の目を欺くことが出来る。便利だろ」
「じゃあ、本当に転生者……え、ちょっとまって! 本当に分からなくなってきた! 本当に転生者なんですか!?」
「ああ」
「本当に……? 本当の本当に?」
疑ってんのか? って目を向けられたのでこちらも同じような目で返す。
欺くことが可能なら、僕のことを欺いてる可能性だってある。……おそらくないだろうけど、一応だ。
「通天閣」
「お」
「TOKYO」
「おお」
「サムライ!」
「おおおおお!」
「日本で知ってるのはコレくらいかなー。クラディスは日本人だろ?」
「あ、え? そうですけど」
「なーんかそんな感じしたんだよ。変に真面目なところとか? 最初の頃にいただきますとか言ってたし」
え、言ってたっけ。言ってた気もする……。
「じゃあムロさんは外国の……」
「おうよ。まぁ、自分がどこの国にいたかも覚えてはねぇんだけどな~」
ムロさんは笑顔を浮かべる。でも、なんだかいつもの笑顔では無い気がした。
染み付いた表情をしてみたって感じの顔。
僕はその表情を見て、不思議に思った。
「でも第二期の転生者ですよね……? だったら、転生した時期は30年前とかそこらじゃ」
「……」
デスクスタンドの灯りが揺らめいたからか、ムロさんの表情が寂しそうに見えた。
……仮面が剥がれる。そういう言葉が正しいのかも知れない。
ムロさんのそういう顔なんて見たことなんて無かった。
人間だから当然ある感情なのに。
「クラディス、ムロのスキルは見たか?」とレヴィさんは言う。
「いや、まだ……」
「見てみると良い」
▶名前:ムロ・アルゴル
▶レベル:787
▶種族:只人
▶称号
――称号Ⅰ:転生者
――称号Ⅱ:死に続ける者 回帰者 長命種
▶ユニークスキル:時間遡行 魔素隠蔽
現れたユニークスキルと称号Ⅱに、僕は意識が持っていかれた。
その部分をなぞり、ステータスボードの向こうで天井を見上げているムロさんに焦点をあわせる。
「これ、ムロさん、時間遡行って」
「それのせいで俺はこの世界にずっといるんだよ。何百年とな」
いつも元気な人が萎れたように笑う。
それだけで、僕はこの言葉に嘘などないことがわかった。




