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486 最高の一品を作れるかどうか



 鍛冶屋と言っても、受付などはない。

 じゃあ鍛冶場っていうのか? 工場(こうば)? 

 武器を作る所でそのまま武器を売ってくれるのはそうなんだろう。

 作業ができる場所が入口に広がっていて、その奥には通路、二階もあるようだ。

 熱などが籠もりそうな造りなのは意図してるのかな。


(鉱人(ドワーフ)は熱に強いとかって聞いた気がするからソレか。頓着してないとか)


 あとは温度調整が楽ってのもあるのか。風通りがよかったら季節や天候に左右されるもんな……なーんて思ってウロウロとしてみる。

 ムロさん達が鉱人(ドワーフ)のお偉いさんみたいな人と話してる間、暇なのだ。タルトさん達がいた場所とはやっぱり違うなー。


(でも、こういうのってどこで注文するんだろう)


「おい、お嬢ちゃん。あんまウロつくなよ危ねぇぞ」


「おじょう……?」


 お嬢ちゃんって言われた……。あ、おい、こら、君たち笑うな。

 

「アサルトリアのモン以外はなんだ? 見に来ただけか?」


「いいや、武器を作ってもらいたいのだ」


「ほぉ?」白髪の鉱人(ドワーフ)は髭を扱いてユットロールさんを見上げる。「武器を見せてみろい」


「いや、俺じゃなく……そちらの」


「んぅ?」振り向いた所に僕がいたので眉を潜められた「お嬢ちゃんが?」


「はい。お願いできたらと思って……」


 と話をすると、僕ではなく再びユットロールさんを見上げた。


「悪いがウチは高いぞ? もっと手頃な武器から初めてみるってのはどだい」


「手頃な武器は探していない。あの方に合う武器を作ってもらいたいのだ」


 ちらと見てきて髭を扱いた。うわあ、露骨に嫌そう。


「見た所、どこぞの貴族様じゃろう? 作った武器が庭の手入れに使われるんは勘弁じゃぞ」


 あ、え、貴族? 僕が貴族? 

 きょとんとして大きな鏡に写ってる自分を見た。

 まぁ……うん、まぁ……見えなくは……ないか。

 上級貴族には見えないにしろ、下級貴族には見えるかも。

 お忍びでやってきましたって感じ? あと武器とか使わなさそうな見た目だもんな。分かる分かる。


「大丈夫ですよ、あの方は強いですので。双剣で問題ないですよね?」


「はい。双剣をお願いします」


「……はぁ、双剣、双剣ね。駆け出し冒険者が良く扱う武器じゃな。ほんで、よぉ死ぬ。片手剣と盾辺りがええんでないか?」


「いいえ、双剣で。ずっと使ってきてるので」

 

 面倒くさそうに禿頭を掻く鉱人(ドワーフ)は、肩を竦め、すとんと落とした。

 やる気なさそう~。無骨な職人って感じがして良いけど。


「ほいじゃ、ほん」と言ってズイッと手を出してきた。「材料、よこしな」


「ん」


「材料だよ、お嬢様。材料くらい取ってくるのが普通だ」


 へー、そうなんだ。

 材料。材料か、何かあったっけ。


「これって使えますか?」


 収納袋に手を触れ、麻央さんからもらっていた素材を出した。

 上位ダンジョンの上に彷徨っていたモンスター達の希少な部位。

 ギルドに渡すの忘れてたんだよな。換金しようと思ってたのに。


「お、おめぇ、これって」


「使えませんか……? なら──」


 仕舞おうとすると手を握られた。


「いいやっ! 使える! だが、これはどうやって……あんたが捕まえたのか?」


「僕が倒したのもあります。モルの大森林の中とかで色々ありまして」


 素材を手に取って眺める鉱人(ドワーフ)さんの目が輝き始めた。

 自分が思ってたより、良い素材だったのかな。

 だったら──そうだな。

 

「でも、アドバイスどおりに他の店に行くことにします。僕は手頃な武器が良いそうなので」


 出した素材を収納袋に戻しながら入口の方へ向かおうとすると。


「あ、ちょっちょーーーっと待てぃ! 作る! 作らせてくれ!」


 なんて声をかけられた。

 そんなにいい素材だったんですか。そうですか。


「……どうしようかなぁ……」


 でも、それで仕事をするかどうかを決められるとこっちも嫌な気持ちになるし。


「ちょっと失礼な態度取られちゃいましたし……職人さんはお客さんを選ぶのは分かりますが、お客の方もお店を選ぶことはありますよね?」


 白髪の鉱人(ドワーフ)の元に降りるように近づいていくと、口をひくつかせていた。

 

「謝りゃあいいのか……?」


「いいえ」


 そんな訳がない。

 癖が強いのは百も承知。鉱人(ドワーフ)さんはいきすぎた職人気質によって、つんけんどんとしていると聞いていた。だから、この手の態度を取られるのは想定済み。

 だから、これは、あくまで駆け引き。


「私が職人さんに求めることは【最高の一品を作っていただけるかどうか】です」


 人さし指を上げて自分の鼻先に触れ、目を細めた。


「満足をさせられるモノを作っていただけますか?」


 自分はただのお客じゃないぞ、ということを暗に知らせる。

 幸いにも貴族だと勘違いをしてくれているらしいしな。

 太客だと思ってくれた方が、色々と都合が良いのだ。


「……。お嬢様よ。俺ぁこの道何百年と生きてきてんだ」


 鉱人(ドワーフ)さんは顎を上げ、ハンッと鼻を鳴らす。


「俺以外に最高の一品を作れる奴ぁいねぇよ。任せな」


 さすが負けず嫌い。いい関係を構築できそうだ。


「ありがとうございます。素敵なおヒゲさん」


 職人さんをその気にさせて満足げに笑っていると、ユットロールさん達の顔が固まっていた。なんですかその顔。エマさんは驚いてるし。


「……クラディスさんって人を操るのが上手ね、怖いわ」


「なんですか、操るだなんて。失礼だなー」

 

 普通に接しただけだよ。

 基本的な人心掌握。良好な関係を構築するのに必要なコミュニケーションだ。


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