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484 誰を待ってるんだ?



「おい、あれ……」


 ハートレイ公爵領。

 北に登れば魔王領地まで広がる森林地帯があり、南に下ればペネロ王国、東にはイニシアの森林地帯と、ARCUS第四地区の中央に位置をしている領地だ。

 ロベル王国との国家間戦争において最前線となった戦地でもあり、今でこそ経済活動が活発に行われて王国まで運ばれる物資の経由地にもなって復興をしたが、領地より更に西には未だにその傷跡が残っている。

 冒険者の拠点なども多く存在していて、この街を拠点とする血盟や商会も多い。

 そんな人の往来が多い場所であっても中々見ない光景があった。

 

「あれは……上位血盟と順上位血盟の……」


 街行く人びとの視線の先にいるのは10人に満たない冒険者の集団。

 ギルドを待ち合わせにしている様子で、入口の少し離れた横に立っているのだが、その顔ぶれは錚々たるものだった。

 

「アサルトリアのムロとレヴィ、エルシアだ」


 直近の血盟順位でフーシェンを下し、上位血盟に躍り出た血盟の働き頭(エース)達だ。

 翠金等級のエルシア、蒼銀等級のムロとレヴィ。その実力は誰しも知っている。

 そして、


「その横にいるのは……エヴァーチェのユットロールと副団長のエマじゃねぇか」


 新進気鋭の血盟で上位迷宮を攻略し、転生者との戦闘をして撃退をしたと噂をされる血盟の団長と副団長。

 翠金等級のエマ、蒼銀等級のユットロール。彼らの躍進ぶりに嫉妬する者は多い。

 そんな者たちがなぜ同じ場所で話をしながら人を待っているのだろうか。

 あんな集団が待つ人物とは一体──と思っていたところ。


「遅れてすみません~!」


 ふい、と皆の視線がそちらに流れた。

 呆気に取られるとはこのことか。

 あれほどの冒険者達を待たせていたのは白髪の少年と黒髪の少女達だったのだ。


「遅いぞ~」


「ごめんなさい、佳奈(アルマ)が全然起きてくれなくて」


「重たいから中々運べなくてな」


「ちょ、皆の前でそんなこと言わないでよお……」

 

 誰だ。あの三人は。何者なんだ。

 あれだけの者たちと親しく話せれるほどの奴なのか。


「あれ、レコードホルダーじゃないか?」


 誰かが呟いた言葉が一気に伝播した。

 レコードホルダー。

 その名前を冠するのは、ダンジョンを最速の記録でクリアした者だけ。


「クラディス・ヘイ・アルジェント。ティータに引き抜かれたルーキーだ」


「アイツが……。じゃあ、その後ろにいるのが」


「そうだ。闘技場の最多連勝記録で、転生者に疑われた……不堕姫」


 転生者だと疑われた人物と、その主人。

 その二人の胸元には白金等級の認識票がぶら下がっている。

 平均が白金等級以上の血盟の混合集団が、クラディスが来たことで動き出した。

 している会話は彼らの元までは届かないけれど、その雰囲気は誰も近づけない何かがあった。

 

「でもよ、アイツは知らないよな。あの色々デケェ女」


 視線の先には肩の少し上で揃えられているショートボブの女性。

 深いフード付きの格好をして体の曲線はそこまで見えないにしろ、顔の小ささと胸のデカさが目に入る。

 下半身も肉付きが良く、男が好きそうな姿をしている。

 おおよそその肉付きから魔法使い系だというのは予想が付くのだが……。


「たしかに……アルマって言ってたか?」


「パーティーメンバーじゃないのか? それかティータの雑用とか」


「……エロい体だな」歩くたびに存在感のある胸元に目が行く。「顔も良い」


「あのルーキーの彼女とかそんな感じじゃねぇのか?」

 

 その言葉が聞こえたのか、最後尾にいた人物がバッと振り向いてきた。

 切れ長の瞳、長く伸びた髪の毛がメラッと怒りに燃えるように見える。

 

「不堕姫だ……聞こえたか?」


「いや、さすがにこの距離だ。聞こえるわけ……」


 ジィと睨みつける彼女はふいっと視線を外して集団について行った。

 その時にアルマがクラディスと腕を組んでるのを見かけ、強引に割り込んだ。

 驚いている二人を前に、アンはアルマを恨みったらしく睨み上げる。


(コイツがあるじの彼女なわけがあるか。この駄肉女が)


「ちょっ、お肉摘まないでっ、いたいっ」


「……」


「なんで無言なの!? アンちゃん!? 怒ってる!? ごめんって」


 ガスガスッと脇腹の肉をツマミ、ハンッと鼻で笑っていた。

 そんな愉快なことをしているとは露ほどにも思わず、それらを見つめていた群衆はあの集団がどんな集まりなのかをしばらく話し合っていたという。




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