481 お持ち帰り
「お、お、おー? ンだぁ? やんのかぁ!?」
「うるせぇ、どけ」
喧嘩にはならなかったけど、マーシャルさんが机から引きずり降ろされてた。
「結構、好戦的なんですねあの2人」
「そりゃあ血盟の団長だからな。冒険者をまとめ上げて、実力も十分な奴が好戦的じゃない訳がない」
「リリーさんは怖い……」
アルマはリリーさんに何されたのさ。
すると、うぉーー、と盛り上がる声が聞こえた。
そっちをみると……代わりに二人が机の上に立ってた。なんでだよ。
「エヴァーチェの団長のユットロールです。この度は上位血盟になられたアサルトリアの皆様にお祝いを言いに来ました。そのうち、追い抜かすのでその時までその地位を温めてくれてたらと思います」
「リリーだ。なめんなよクソガキ共。フーシェンが落ち目になったからお前らが上に行っただけだ。そんなに油断してるなら、私やコイツの血盟が追い抜かしちまうぞ」
なんて言いながらリリーさんはユットロールさんの腰を叩いた。
あ、またあのヒト、人誑しみたいなことしてる。私がじゃなくて、私やコイツって言うとか、ほんと上手いんだよなぁ。そういう講座でも開いてくれたらいいのに。
「ひゅー、言うじゃねぇか! ロリババアとルーキー。だがよぉ、今日はそんなギスギスせずに行こうぜ! なんてったって祝勝会なんだからよォ! なァ!」
肩を組まれて面倒くさそうな2人に、マーシャルさんが畳み掛けてる。
頑張ってください2人とも。とくにユットロールさん。アサルトリアの人と会うのは初めてだと思うし、ノリも多分違うと思うから。
「オマエ、ノリいいなぁ、ユットロール。報告会ン時に会ったっキリだったよな?」
「一度や二度しか行ったことはないがな。この王国は遠いのだ」
「じゃあお疲れの一杯、乾杯~」
「ぐぼっ……!!」
アルハラもされてる。頑張って。
「あ~! アンちゃんだあ! 久しぶり~!」
という声が横から聞こえてきた。
「……? お前ら……ああ、あの時の」
「えー、隣りにいる子も可愛い! ねぇ! 名前は!?」
「あ、アルマって言います……」
「私達さ、アンちゃんがうちに来た時に受付のやり方を教えたんだけどさー」
「そーそー、ガチガチのアンちゃんから色々なことを聞いて──って、そこにいるのはクラディスくんじゃん! 久しぶり~」
「どうも……」
誰かと思ってたけど、あの時の人達か。
血盟お試しの時の兎人と只人の女性。アンがお世話になったっていう、受付の。
「じゃあっちでお話しましょ!」
「あ、ちょ」
「わーい! なに話します!」
……あ、2人が連れて行かれてる。
アルマはノリノリだけど、アンは嫌そう。
「楽しんでおいでー」と見送る気持ちで手を振っておく。
アサルトリアとティータは同盟を結んでるから仲良くはしておこう。
「なんだか順番に連れて行かれてるな」
「次はムロさんの番ですか?」
「おいおい、俺はアサルトリアだぞ。オマエだよ」
それまで首根っこを掴まれていたエルシアさんが解放され、僕の体が下から持ち上げられた。
「え」
「お持ち帰り~!!」
「ムロさぁぁぁん!!」
「頑張れよお〜」
そしてそのまま僕の体はアサルトリアの皆様の元へ直送された。
祭りで人がいっぱいいる所に連れ込まれた……というより、なんだか、蛇に丸呑みされたんじゃないかってくらいの圧迫感がある。
ぎゅむ、ぎゅむっ……ううっ……。
皆から酒の匂いがして、声が大きくて……居酒屋で仕事してたけどこんなトコに放り込まれたことはないよお。
「クラちゃあああああん、これ、たべてええええ」
「はいぃ……美味しいです……」
「……でしょ? にへっ……でしょぉ?」
……ほんとうにエルシアさんは美し可愛い人だな。勘違いさせてくる系の女性だ、ほんと。
酔っ払ってるからいつにもまして行動力もすごいし。
そう思うとまた運ばれ、席に座らされ、エルシアさんが横にドスンッと座った。
「ここ座っててね~! いま、ジュースとか! じゅーす……ミルクがいい?」
「あ、ジュースで。なんでも飲みます」
「うゆー」
うゆ……返事か、返事か?
「おお、クラディス来ていたのか」
「うぉっ」
急に反対側から声をかけられたと思うと、そこにはレヴィさんがいた。
普通にいた。普通の姿だ。飲んでるのもお茶らしき飲み物で……姿勢良っ。
「よくこんな中でそんな普通にいられますね……」
「慣れた」
「……アサルトリアの人ってこんなにいましたっけ?」
「マーシャルが今日は奢りだーって言った辺りから人がなだれ込んできたのだ。それと知人や友人も連れてきてよしとしている」
「ああ、それで……」
「クラディスが来ると聞いてエルシアが喜んでいたんだ。面倒かもしれないが相手をしてやってくれ」
「それは構いませんけど」
僕はレヴィさんの顔を覗いた。
目が合う。あ、そらした。そんな態度を取っていいと思ってるんですか!
「……レヴィさんは喜んでくれなかったんですか?」
と言いながら、その腕に手を重ねてやった。
「…………お前は、本当に、ずるい奴だな」
「ふふ」
レヴィさんはからかいやすい。
久々だからか緊張してる様子だったのでほぐしておこう。
「だから、俺はアイツに勝ったの! 昇級試験の相手で」
「だって俺等は見てねぇもーん!」
「そうだぞ! 一回負けた相手にそうそう勝てる訳もねぇ」
「だーかーら!!」
「アンちゃんこれも食べな!!」
「あ、いや……」
「アルマちゃんはよく食べるねぇー、育ち盛りなのねー」
「美味しいご飯は美味しいので!」
皆が楽しそうに話してるのを聞きながら、最初は居心地が悪かったのがだんだんと良くなっていった。
お酒の場特有のぶん回される感じ。でも、疎外感はない。
知ってる顔が多くて、いるだけで楽しくなる空間。
……いいなぁ、ここ。
「クラちゃーん! じゅーす! もってきたよおー」
「ありがとうございます」
両手で受け取って、飲んでみる。
ちびっ。
「あ」
「ん?」
「これ、お酒だぁ……」
うわあ、視界が揺らぐう……度数たっかぁ……。




