480 アサルトリアの祝勝会
山奥の館から街中まで馬車で行った。それなりの距離があった。
まぁ、日は暮れてはいるけど、丁度いい時間じゃないか?
メンバーはアンとアルマ、リリーさん、ユットロールさん、ムロさん。
アサルトリアのエース、エヴァーチェとティータの団長なんて豪華だな。
言われていた場所に着くと既に盛り上がってる声が聞こえてきた。
「先に始めてます?」
「まぁ、頼めば飯が出てくるんだ。我慢できる奴はいないだろうな」
外観だけ見てもかなり大きいのが見て分かる。
酒場とは言っていたが、これ……。
「冒険者組合ですか」
「結構大きいなここ」
「ユットロールさんは西部の冒険者組合は見ました?」
「まだ見てないな。荷物を抱えて来たらそこの人に着いてこいって言われた」
リリーさんの耳が動いてる。聞いてないフリしてるな。
「ここくらい大きいですよ。帰ったらまた見てみてください」
中に入っていくと中の様子は西部ギルドとあまり変わらなかった。
右手側が受付で左の全面が飯処になっている。結構埋まってるなぁ、貸し切りじゃないみたいだから他の冒険者さんも結構いるみたいだけど。
初めて冒険者組合に来た時にああやって冒険者が飲み食いしてたの思い出す。
「あ~!! クラちゃんだあああああああああっ!!」
そう思っていると、こちらを見つけた様子で人の塊から女性が飛び出してきた。
「あ! エルシアさんー!」
酒場と通路を隔てた木柵を乗り越えてきたエルシアさんにこちらも手を広げる。
「クラちゃああああ──」
おや、加速しすぎではないですか?
地面に着いた大きな脚は戦闘中でも中々見ないほどの加速を見せ、あっという間に僕の目の前までその大きな胸を接近させた。
「クラちゃんッ!!」
──ぶるんっ。
「おい、コラ」
「やめろ」
ムロさんとアンに掴まれて僕のとこまでは来なかったけど、あのまま来てたら僕吹き飛んでたな……。
首根っこを掴まれてるエルシアさんは足をバタつかせる。
「邪魔をするなよおおおお」
「あはは……」
「もう飲んでんのかよ」
「ったりめーだろ!! 飲まずにいられるかァ!」
「そうだぞムロ! オマエなんか待ってられるか!」
「くんのがおせぇんだよ~!」
やいのやいの言われて、ムロさんはハァとため息をついていた。
おっと、エルシアさん、そんな平泳ぎみたいに手をかかないでください。握手くらいさせてもらいますって。
手を握ると、エルシアさんは溶けるように笑った。
「ふへへ……うぉっ」
と思うと、もっと持ち上げられて手が離れてしまった。
「むうううううう、離せよお人でなしい!」
「離したらクラディスが食われるかもしれねぇからな」
「そんなに口大きくないよお!」
「あはは……」
これがこの大陸で上位五番目の血盟の人たちだとは誰も思わないだろうなぁ。
「あー! 褐色ロリババア!! ようやっと来たかこの野郎!!」
すると奥からでっかい声が喧騒を貫いてきた。
そこには、ジョッキを投げつけながら悪酔いをしているマーシャルさんの姿。
あーあー、あられもない姿になってるよ……。もう半分脱げてる……。
「誰が褐色ロリババアだこのアホタレ!!」
「褐色ロリババア以外じゃあなんて言ったらいいんだァ!? あぁ!? 色黒ガキ老婆かぁ!? ギャハハハハハハハ!」
笑い方完全に悪役じゃん。
……うわあ。リリーさんキレてるよ。
「おーい! お前ら飲むのやめろやめろ! 飲むな飲むな! 血盟主からの何度目か分からねぇ音頭だ!」
「今日だけで三回目だぞマーシャル!」
「うっせぇ!! 何回でも良いだろうが! 機嫌が良いんだよこっちは! なんてったって! 上位血盟だからなァ! アッハッハッハッハッハ!!」
机の上に土足で立っているマーシャルさんは酒を振り回し、その下にいる血盟員さん達がそれの被害にあってる。でも、そんなの気にしてない様子で遊んでる。
なんだここ。日本じゃないな。いや、日本じゃないけどさ。
何を始めるつもりなんだ。まだ寒風が入り込むギルドの入り口の側だ、引き返して出ていけるなら出ていきたいんだが。
「えーー! はー、あはー、えーーーっとなぁ。まずは、アサルトリアっつー血盟にいるてめぇらにすっげぇーーーーいい話があんだよ。聞けよ? 聞けよ!?」
「聞いてるっての~!」
「よっしゃ、耳はあるな、ちゃんと、よし、よし……えー、アサルトリア、血盟総合順位5位、おめでとう!!」
「うおおおおおおおおお!!」
ぱちぱちと耳の横で拍手をするマーシャルさんにつられて、みんなも拍手をしたり机を叩いたり。
さすが異世界。豪快だなぁ……。
「フーシェン! ぶっ倒した!! フーシェン、ぶっ倒したぞおおおお!!」
「おおおおおおおおお!」
拳を突き上げると、みんなも拳を突き上げて雄叫びを上げた。
「次は! 上位三位! 協会にいる連中引きずり下ろすぞコラァァアアア!!」
「っしゃあああああああああ!」
「うわあああああああああああ!」
「うわああああああああ!!」
冒険者組合を揺らすアサルトリアの人たちを遠い目で見つめていると、隣のリリーさんがこそっとやってきた。
「ほら、よかったろ、アサルトリアに入らなくて」
「あれを見るとそう思います」
「だろ。うちはせいぜいピザパーティーだ。あんな盛り上がることもない」
ティータは超少人数精鋭の血盟で、放課後の屋内部みたいな雰囲気が漂ってる。
やることはやるけど、仲良しメンバーで集まってのんびりしてる感じが。
「マーシャルは酒が大好きで、他の奴らも酒が大好きだからな。普段は良いんだが、こういう時だけは──」
「そんで! 今日、私達をどうしてもお祝いしたいからってわざわざ来てくれた奴がいる! なんと! 準上位血盟のティータの団長でーす!」
「リリーさんー!!」
「ちっちゃいー!!」
うわ。
「良く来たなぁ! リリーよ! 七番目! まぁ、私らには遠く及ばんがな!! ガッハッハ!」
「アイツ……シラフになった時に覚えてろよ……」
「そしてそしてー? そこにいる大男! なんと、こちらも準上位血盟! エヴァーチェの団長のユットロールでーーす!! 八位! 八番目っ! 拍手うう!」
「うおおおおお!」
「……」
うわ、ユットロールさんちょっと引いてる。
マーシャルさん全方位に喧嘩うってるな。さっきはフーシェンも煽ってたし、いたら危ないんじゃないか。
一応は変な人はいない……か。入墨も見えないし、大丈夫そうだけど。
「準上位血盟の団長2人がこうしてお祝いをしに来てくれた訳だ! てめぇら! 仲良くしろよ! 格下とは思うなよ! アイツラだって頑張ってんだ! 頑張ってんだよなぁ! 頑張っても私らは超えられねぇがな!! ガッハッハッハッハ!!」
悪酔いしてるなぁ。エルシアさんもムロさんに摘まれたまま「うおおおおおー」って一緒に盛り上がってる。
悪気がないのは分かるし、これで怒られないのは愛嬌があるから……。
「クラディス様」
「ん?」
「ちょっと行ってきます」
「え」
「少年、私も行ってくる」
「あ、ちょっ」
二人がズンズンとマーシャルさんの所に行ってしまった。
あぁ、愛嬌だけでは解決できなかったか……。




