471 ぼくは単純らしい
「そんなに驚かれなくても……」
なんでそんな困ったような顔をしてるんですか。
え、僕が悪いのかコレ……。
「驚いたのは申し訳ないんですが、もうちょっと、自然に出てきてほしいです」
「自然に出てきましたが……すみません」
ユラさんにとっての自然と、僕の自然の認識が違うみたいです。
「それでは改めて。お久しぶりです、クラディス様とアン様」
傘をさしながら頭を下げるユラさん。
本当に不思議な人だな、ティナ先生の周りの人は全員そうか。
「……話しかけるな、頭が痛くなる。せっかくいい気分だったのに」
「申し訳ありません。癖で……」
粛々とオーラが収まっていく。
ダダ漏れで歩いてるから目立ちやすい。アンにとってはそれを脅威を感知して辛くなるらしい。
「ユラさんはハートレイさんに会いに来たんですか?」
「お嬢様の旧友ですので」
「侍女頭さんとも知り合いなんですか?」
「彼女は昔に戦冠の隊長を務めていた人物ですので、話が面白いのですよ」
「え」
「お聞きになっていませんか?」
「初めて聞きました」アンにも振り返って聞くけど、首を横に振られる。
だから、あの人から強い人の気配がするのか。
アンも頭を抑えている。侍女頭さんにたんこぶを作られた場所だ。
「では、クラディス様達はどうしてここに?」
「匿ってもらってるんです。あと、単純に人を待ってて。おかげ様で冒険者のランクが上がるみたいです」
「それはおめでとうございます。では、迷宮に向かわれるのですか?」
「らしいです。まぁ、すぐではないと思うのですが」
「もうそんなに成長をされて……最近はお嬢様からの連絡がほとんどないので……強くなられましたね」
無表情のままスッと手を出されたので、ソレが撫でようとした手だと気づくのに時間がかかった。
なんだか、頭を撫でてくれる人が多い気がする。
あと、今の僕ってアイリスの姿だから、子どもではないと思うんだけど。
頭を傾けるとポンポンッと二回優しく触れられた。
「子どもの成長は褒めて伸ばすのが良いと聞きました。また、褒めますので頑張ってくださいね」
そんな不器用な言い方に思わず口元が緩む。
横からのアンの視線が刺さってすぐに固くなったんだけど。
「もういいだろう、はやく消えてくれ」
「アン様も」
「要らん」
「そう言わず」
「要らん! さわるな!」
「いえいえ、褒めて伸ばさねばならないので」
「追ってくるな!! 怖いんだよオマエ!!」
中庭で追いかけっ子をし始めた2人を眺め、触れられたところに手を重ねた。
「…………やっぱり単純だな、僕は」
褒められて嬉しくなってるんだから。
こんなんじゃダメなのになぁ……もっと大人にならないと。
緩んでいる顔を抓ってると、通路の向こう側に人の動きが見えた。
「……? 誰か来たのかな」
そう思ってみていると──段々と姿が見えてきて。
屈んでいた体を起こして、立ち上がった。
「お待たせ~、少年。連れてきたぜ~」
手を振るのはリリーさんで、その後ろには見知った顔がたくさんいた。
ナグモさん、ペルシェトさん。そして、なぜかいるユットロールさんと──
「うわ、巷で噂の国定魔導士様じゃねーか」
赤茶髪の僕よりも少し高い背丈の男性。
「ムロ……さん!」
ああ。
やっぱり、ぼくって、単純だ。
久々に会えただけでこんなに嬉しい気持ちになってるんだから。




