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448 断罪者達の自己紹介


 麻央さん……なんで、こんな場所に!

 それも転生者なのに、敵の本陣に堂々と現れて。

 なにを考えてるんだ……! 危なすぎる……!


 ──そろそろ……勇気を出そうと思ってるの。


 あの時の言葉は、このことを言っていたのか……?

 でも、なんで、そんな。


「オイ、あれ……竜騎士だろ……? なんでここに」


「なぜ、ハインストに転生者が……?」


 真ん中を歩く麻央さんに向かってざわざわとした声が飛ばされる。

 転生者だ。殺さないと。なんでこんな場所に。どんな顔をして来てるんだ。それらを理性で抑え込んだ声だ。


(思ったより大人たちに理性があって良かった)


 いや、先の約束の効果か。

 それに、ログリオさんやロバートの手前で飛びかかるようなことはできないか。

 派閥の主が決めたことに首を横に振るほどの度胸がないのだ。

 そんな中、麻央さんはゆっくりと歩いて他のメンバーの元に行き、こちらを振り返った。


「これでハインストは全員揃いましたので。さっそく一人一人から挨拶をしてもらいましょうか」


 ロバートがそう話すと、ログリオさんが最初に前に立った。


「先も挨拶をしたので短めで。誠心誠意、頑張らせて頂きます」


 というと、少し遅れて拍手が送られた。

 だが、すぐに収まり、次はその横にいたウィンストンさんに代わる。


「ウィンストンだ。転生者に特段思い入れはない。誰が、誰に、どこで、いつ、殺された、とか。そういうのに頓着はしていません」


 それはほとんど失言だった。

 麻央さんの登場で放心をしていた貴族は、ギョッとした表情になった。

 止まっていた脳みそを蹴り上げられたような衝撃だったのだろう。自然と「はぁっ!?」というらしからぬ声も上がったほどだ。

 

「私が団長に着いていく理由は彼が強く、私の研究に集中させてくれるから。転生者はその傍らに殺します。それが約束ですので」


 癖が強いというか、癖がないというか。

 魔法使いというのは得てして「捻くれた人」が多い。

 だから、この人のこの態度は至って普通のことなのだろう。


「今まで通り、仕事をするだけだ。なので皆様が私に向ける期待は不要です。普段通りのパフォーマンスをする。私はそれだけです」


 そう言葉を締めくくると、控えめな拍手が送られた。

 ウィンストンさんの態度に不快感を示す人も少なくない。

 だけど、彼の普段通りの仕事というのは、貴族たちやこの場にいる誰よりも高水準であり、期待以上の成果を生み出すということなのだと思う。

 頑張る、とか、応援よろしく、とか。そういうのではないのだ。

 あのレベルにまで行った人の「いつも通りのパフォーマンス」ほど恐いものはない。


 ウィンストンさんが身を引くと、今度は横のティナさんが出てきた。


「ティナです。よろしくね……の前に、ウーさんの発言に眉間のシワが寄っちゃってるからリラックスしましょうか。はーい、肩回して~」


 ガラッと変わった雰囲気に慣れぬまま、ティナさんの言う通りに肩を動かす。

 

「はい、ちょっと5回くらい飛びましょうか。酔ってる人はコケないように。はい、1,2,3,4,5。おっけー」


 自らも同じように飛ぶと、ティナさんはパチンッと拍手(かしわで)を1回。


「心配しなくても大丈夫です。ハインストは強い。しっかりと。皆様が思ってるより。それはこのウーさんも一緒だ。だから、応援しなくても良いです。だって、現状で既に応援してもらってるんだ。これ以上、応援されちゃったらみんなが疲れちゃうでしょ?」


 ニコッと微笑んで周りを見る。

 

「なので、今まで通り皆さんはいてくれるだけでいい。私どもも、今まで通り強く有り続け、転生者を倒します」


 最後は語気を強めて、拍手を盛り上げるように手を動かす。

 パチパチパチとティナさんに操られる拍手は、落ち着かせるように動かされた手によって収まっていく。

 そして、次の人にバトンタッチ。次は……。


(イブ……)


 その顔は僕が知っているイブの顔じゃなかった。

 大人びた顔。背筋はまっすぐ伸び、顎は少し高く上げられている。

 きれいな目は鋭く伸び、周りの温度を下げてしまうほどの冷たい目。


「ボクは転生者が嫌いです。ボクの横にいる奴も嫌いです。嫌いだから殺します」


 短くまとめて、体を引いた。

 ティナさんが「せっかく、盛り上げたのに」という顔をしてる。

 が、それに反応も示さずに反対の隣の人物を流し目で見やる。


(……麻央さんだ)


 周りの貴族たちの雰囲気が固くなった。

 その身動き一つすらしにくい状況の中で、彼女は前に出た。

 鉄靴が柔い絨毯を押し返し、中身の詰まった控えめな金属音が寂しく鳴り響く。

 呼吸の音すら聞こえてこない。僕なら緊張で押しつぶされてしまうだろう。

 だが、彼女はそんな中でも怖気づくことなく、顎を上げた。

 

「わたしは──」


 そうして麻央さんは話し始めた。



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