442 敵城視察開始だ
話し合いの結果、リリーさんが着いてきてくれることになった。
アイリスが【紫蘭之団】の隊長で、アンの一件でも一緒に目立ってくれたこともあり、この人と一緒なら不自然ではない。
それに解析士だし。何かあった時は守ってくれるだろう。
──とは言わないけど。この人が最適なのは間違いない。
「私のことを都合の良い人間だと思ってるだろ」
隣から聞こえてきた言葉にギクッとして、その反応を見られてまた叩かれた。
もう、青あざになっちゃいますよ……今は女の子なんですから。
「い、いやぁ……やだなぁ、都合がいいだなんて……そんなヒドイことは」
「どーだか」
「優しくて、仕事を振っても受けてくれる、相談しやすいってことです」
「そーかい。……まぁ、血盟主が相談しにくいなら困るしな」
お、なんだか嬉しそうだ。良かった。
「というか正装がなくて、あの式典にもらったアレですけど良かったですかね?」
自分の服に触れながら隣のリリーさんに話を振る。
「正装だろう。私もなんだかんだ解析士の服装だ」
目まで隠れてる解析士の服装。正装というよりかは仕事着かと思ってたんだけど。
まぁ、たしかに【紫蘭之団】に加わったって公表したのは、解析士の方の姿だったもんな。それに同行してくれるのはそっちの方が僕的にも助かる。
そういえば、解析士=リリーさんってのは周知の事実なんだっけ。
「外ではなんと呼べば?」
「イレネロ。別に隠してもないが、仕事の時はソッチで通してる」
リリーさんの名字か。了解した。口を滑らさないようにしないとな。
そうして、僕はその建物を見上げた。
案内状に記されていた場所。山奥にあったロバートの館だ。
「あー、やだやだ。アイリス側の面倒も見なきゃならんとはなぁ」
「二倍お世話になってます」
「先に言うぞ。何があっても仮面は外すな。お前は顔に出る。ほんとに!」
指でどんどんと詰められ、仮面の下の顔をひきつらせた。
「分かってますって」
「分かったなら絶対に外すなよ、お前の失敗で殺された日にゃ恨む」
「分かりました」
「つまりは酒も何も飲むな。何も食うな。喋るのも最低限にしろ。ずっと私が隣にいてやるから」
わかったか、と目で凄まれ──なんでメカクシをしてるのに凄まれたと分かるかはさておき──僕は頷いた。
ひとしきり注意事項が終わったようで、リリーさん──あ、えっと、イレネロさんは扉の前に立っていた人物のもとに歩み寄っていく。
「招待状を」
「確認してください」
お淑やかな声色のリリーさんに遅れて、僕も門を挟んで反対側にいた人物に招待状を渡す。
しばし確認するような時間が経つと、扉を開けてくれた。
「さぁ、行きましょうか。アイリス様」
「ええ……イレネロさん」
すっげぇ声色の変化。いや、僕も頑張らねばだ。
私はアイリス。デュアラル王国の国定魔導士。
「──……ふぅ」
よし。行こう。敵の本陣に潜り込むのだ。




