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436 転生者と転生者殺しの友達関係は



「友達ならキスなんてしないですよね? ということはますたーだけなんですよ。友達でいようとしていたのは」


「でも、その……男女の友情はある派の人間なんですけど」


「はぁ〜……」


 やれやれとされて、唸った。

 なんだよぉ。いいじゃんか。


「私が言いたいのはそういうことではなく、友情関係っていうのはすぐ破綻するってことです」


「そう? そうとは思わないけど」


「いーえ。組織に属したり、離れ離れになったりするだけですぐに壊れます。そもそも友達とはなんですか? 話があって、一緒にいて楽しい人のことです? じゃあその人と離れ離れになったら……話もできないし、一緒にいることもできない。友達である必要がなくないですか?」


「まぁ、それはそうかもしれないけど。でも、少なくともイブが話をするまでは前みたいに話ができてたよ」


「それは話ができていただけです。さっきのは私が仮定をした『友達』になる条件ってだけ。でも、その友達っていうのは何か証明書があるものですか? 少なくとも私はますたーの友達という証明書なんて持ってません」


「なんだか耳が痛くなる話だなソレ……。友達っていう定義が曖昧って話?」


「です。だから、パートナーや仲間っていう一歩踏み込んだ関係になろうとしてた。それで言うと、あのアンっていう少女も同じような考えでしょう。友達っていうのは組織に属していたり、パーティーに属していたら無いも同然なので。友情よりも組織の決定権が優先されますし」


「……」


 エリルの言葉には納得をする部分が多かった。


 友情関係というのは【浅い縁】なのだ。

 そんなの他人にとってはどうでもよい。ましてや、浅い縁のため友達の同行を把握することができないため、敵対組織に属していた場合は手にかけなければならない……っていう事態に陥る可能性もある。

 

「ますたーとの関係をなんとかして繋ぎ止めようとした。不安定な友情関係よりも……家族や婚姻、仲間といった仲に持っていこうとしてた。したら、少なくとも敵になる可能性は低くなる。一緒に行動をすることができる。そうすることで……その人が自分の知らないところで死ぬこともなくなる」


 濃い縁である方が色々と都合を付けることもできる。

 それにこの世界は物騒だ。もしなにかあった時に縁が薄ければ薄いほど『優先度』は低くなる……と言いたいのかな。


「ますたーはこの世界にまだまだ馴染めてはいません。友達っていう関係が、この世界において何の強制力も説得力もないことを知らないんです」


「……だからイブはぼくと友達じゃなくて……もっと踏み込んだ関係になっておこうとした。それをぼくが拒否した」


「ってことです」


「…………そんなこと言われても……」


 イブは自分が置かれている場所をなんとなく理解していたから、仲の良い人を仲間にしようとしてた。

 でも、もし、そこでぼくがイブの誘いを受けていたら……転生者を殺す組織に属すことになり、今度は佳奈《アルマ》や他の転生者を殺す側に回っていた。


「……どっちみち、イブとは友達のままではいられなかった、か」


 何かを守ろうとしたら、何かの敵になるという構図はこの世界だけに限った話じゃない。

 でも、それを実際自分がするとなると……胸が苦しい。


「でも、これでハッキリしたじゃないですか」


 前かがみになり、視界に映り込んだエリルはにへらと笑って。


「大事な人は側に置いておきましょう! 主従契約! そして──そうっ! セ◯クスです!」


「したいだけでしょ。えっち」


「したいだけですよ!」


「そんなホイホイしてたら、痴情のもつれで殺されそうだ」


 ……結局、ぼくとイブは敵対関係になるしかないのか。

 転生者と、転生者を殺すために異世界から呼ばれた人。

 それが仲良くできることもないか。


 それでも、ぼくのことを転生者だと気づかない間は、まだ友達だって思っていてもいいだろうか。


「……そういえば、イブの魂はこちらの世界にやってきているって言ってたっけ」


「? そうなんです? あ、転移者とかなんとかって言ってたか」


 溶けかけてる雪を手に持ってるエリルがピタと止まった。

 ベンチの上に雪だるまを作ろうとしてるみたいだけど、そんな半透明で硬い雪の雪だるま……というかシャーベットだるまか。作っても楽しくないでしょ。

 

「じゃあ、ますたーの同期の中に彼女の魂がいるってことですね。ほお、面白いことを考えなさる」


 渋い人の言い方を真似して雪だるまを完成させていた。やっぱりシャーベットだるまじゃないか。

 まぁ、それは置いておいて。ぼくが思ってるのはソッチじゃない。


「魂が転生して、その外の肉体が転移者としてこっちに来てるって話だよね」


「……? じゃないです?」


「だったら、魂の抜け殻の状態になってるんじゃないの?」

 

「そうー……ですね。うん、そうだ」


 記憶喪失って話をしてたから、魂と記憶が結びついてるのはそう。

 で、若干、記憶が残ってるのは肉体に残った残滓だとして……それを魂として動いてるとは考えにくい。

 いってしまえば、今のイブは心臓がない状態で生きてる人間。

 

「じゃあ、今のイブの魂って……一体何なんだろう」


 

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