434 約束を取り付け
「集まり……パーティーのようなものですか」
「あぁ。定期的に開かれている関係者を呼んでの宴だ。本来はもう少し早めに執り行われる予定だったのだが、先の件があったからね」
監査庁の関係者が集まるパーティー。つまり、敵の顔のお披露目会という訳か。
「どうだろうか。アイリスくんと会いたいという人が大勢いてね、皆が心待ちにしているんだ」
「お言葉ですが、ロバート公。アイリスは──」
「前向きに検討をさせてください」
「……アイリス?」
お団子先輩には悪いが、この機会は逃すわけにはいかない。
敵の顔、敵の次の動き。それらを把握できる機会というのは、望んだとしても普通は得るなんてできない。
だが、アイリスが賢者だという地位を確立した今、リスクをほとんど獲らずにリターンを得ることができる。
「監査庁の方たちとは一度、会ってみたいと思っていたんです」
「そうか! ならば、また後日に招待状を送らせてもらおう」
「ありがとうございます」
ニコリと微笑むと、ロバートも笑顔を返してきた。
その後も少し話をすると、次の仕事があるので、と帰っていった。
お前がやってることは奴隷を痛めつけることだろうが。
「アイリス。良いのか?」
「良いんですよ。監査庁には昔から興味があったので」
ソファにもたれかかって、疲れた様子のお団子先輩に応える。
あいつのことは嫌いだが、上手い具合に動いてくれた。こういう機会を得られるとは思っていなかったが……やはり、人の交流というのは疎かにしてはダメだな。
敵のことを詳しく知らねば、対策なんてできようもない。……ありがとうロバート。
「私が気にしているのはそっちではない」
「?」
「キミへの依頼などはあの組合員を通さねばだろう!?」
あ……しまった。そうだ。
「なにキミが二つ返事で返してるんだ! それにどんな集まりか分からないまま誘いを受けて!! キミの動きというのは、今、皆が注目をしている。軽率な行動は慎むべきだぞ」
「すみません……」
「ったく……まぁ、キミの籍は軍人であることを再三伝えておく。どうせ、キミの知名度を利用をしたい輩がたくさん群がるだろうがな」
呆れられちゃった。でも、こんな機会を前にして手を出さない訳にはいかない。
どんなことが待っているかは分からないが……心の準備はいくらしておいても足りないだろう。
「あと、男性関係は気をつけるんだぞ。一気に広まるし、キミを取り込んだら一つの軍隊を手中に収めるようなものだ。変な噂は立てずに、付き合うにしても相手をちゃんと考えるんだぞ」
「あはは。またまた〜。大丈夫ですよ」
「……キミは、アイリスという人間を一番理解してないみたいだな。……まぁ、忠告はした」
さすがに大げさすぎる。それに、ぼくは一応はクラディスっていう少年だ。
だから大丈夫だろう。うん、そのはずだ。…………ナグモさんにときめいたのは、まぁ、気の迷いだろうし……。
「…………」
王城の中のトイレ。鏡に映る自分を見た。
「……一応は、警戒をしておくか」
やっぱり、このアイリスは人を惑わす姿をしてる。刺激が強すぎるんだよ。




