↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

448/550

430 女子会



 急遽始まったのは男子禁制のお茶会。 

 イカれた参加メンバーを紹介するぜ。


「おっ、この紅茶……美味い。さすが耳長、葉っぱには気を遣ってるってか」


 ソバドアさん。アルマの先生であり、この中で最高齢かと思いきや実はそうではない。


「うるさいなあ。その通りだからそれしか言えないけど、言い方があるだろお」


 マールベリー元帥。王国軍の頂点の彼女がこのお茶会の中で最高齢。上位森人《ハイエルフ》なので、年齢は分からない。頭の上に作られたお団子は今日も綺麗な球体である。


「わたしは紅茶よりもコーヒー派だからなあ」


 と、絶賛失礼なことを言ってるのはぼくの妹であり、姉のアルマ。

 空気は読めないらしい。なんでこんなメンツの中でそんな顔をして居られるのかが分からない。同じ血が流れてるはずなのに、コミュニケーション能力だけは圧倒的に佳奈《アルマ》の方があると思う。


「コーヒーなら持ち歩いてるのがあるが、使うか」


「ありがとー!」


 そしてぼく。アイリス国定魔導士。心は男で外は女でやらせてもらってます。

 身体変化という種族固有スキルによって、少年の体から女性の体になっている。あ、そうか。心は男っていったけど、若干女性側に引っ張られてるみたいです。普通にしてたらただのクラディスなんですが、時折、あれれ〜って時がある。


 まぁ、そんな四人で小さな白いテーブルを囲んでお茶会。

 お菓子はこの世界で食べたどんなお菓子よりも上手くて甘いお菓子。お団子先輩が「国王から奪ってきた」と自信満々に言っていた。

 

「本当に最近はバタバタしてたから、こういうのがないとやってられん!」


 もぐむしゃとお菓子をほおばるお団子先輩に佳奈《アルマ》がうんうん頷いていた。

 バタバタしてたのか。まぁ、家にはいなかったからな。

 本当にいい紅茶だ。上手い。ぼくもコーヒー派だけど、これなら飲める。


「ほんの前までは落ち着いてたっていうのにねぇ」


「そうなんだあ」


「そんなに国が忙しくなるほどに何か出来事がありましたか?」


「あったあった。ここ一年くらいはホント忙しい」


 お団子先輩の愚痴から今年一年の出来事をまとめてみると、こんな感じになった。


 ・王国に魔族が襲撃。

 ・大陸全体の異常事態発生。モンスターの凶暴化。

 ・フーシェンが準上位血盟におちたことにより、治安が一部悪化。

 ・【紫蘭之団《オーキッド》】の編成。外部の人間を隊長に任命。

 ・最西の街に魔族が出現。討伐失敗。

 ・最西の森林地帯に魔族だと思われる人物の出現。討伐失敗。

 ・冒険者組合のデータ偽造が判明。無実な人間を転生者として処刑するところだった。

 

 これの半分くらいに自分が関わっていて、なんとも言えなかった。

 ごめんなさい。リリーさんが言っていた「君たちが外を歩くと問題が起こる」っていうのはあながち間違いではなかったみたい。

 転生者パワーおそるべしだ。振り回される側はたまったもんじゃないな。


「物騒な世の中になったもんだよ」


「……前にもこんな感じにバタバタした時期があったけど……」


 というとお団子先輩はティーカップに入れていた小さなスプーンをくるくると回して。


「個人的にまた、転生者が来たんじゃないかって……思ってる」


「だろうねぇ。わたしも長生きをしてるから歴史が大きく動く時を見てきた。今のところ、それは二回あったね」


「二回ですか?」


「一番最初は、ここの土地が死ぬという時。そして、王国間との戦争と領土戦線が続いた時。この二つはかなり大きな事件だったよ」


 この土地が死ぬ時……っていうのはいつのことを指すんだ? 

 歴史のことは学んだつもりだが、もっと前の話かもしれないな。


「元々、ここの第四地区は魔王に完全に占領されていた。今は三体の魔王だけど、当時は四体いたんだ」


 なるほど、これはアレだな。


「一体の魔王を倒して、この南西の土地を奪い返したって話ですか」


「そう。当時、私も生きてはいた。まだまだ子どもだったからそこまで覚えてはないがな。……でも、すごかったよ。今の私達が倒せれていない魔王を、当時の彼らは倒せれたんだから。それも、絶望的な状況で、だ。それが今、おとぎ話にもなっている最初の勇者の話さ」


 最初の勇者──という名前ではないが、それに似た話なら聞いたことがある。


 四人くらいの勇敢な者たちが魔王を討ち滅ぼし、人間の住まうことのできるエリアを広げた。そして、次に魔王を倒しに旅をしにいったその四人はしばらくしてからボロボロの状態で帰ってきたと。

 

 そうしてこう言った──「ほか三体の魔王は殺せはしなかった。が、しばらくは何もできないだろう」と。


 つまり、倒せはしなかったが、深手を負わすことに成功したという意味だ。

 その魔王が完全に復活する前に人々は生活圏を広げ、度重なる魔王軍からの攻撃を耐え、今あるこの第四地区の四分の一領土を人類の生活圏とした。

 

 これが今、何百年前……下手したら何千年前の話。

 おそらく、お団子先輩の言っている話はコレだ。というかさすが不定命(イモータル)。長生きですね。

 

「…………で、その転生者っていうのは?」


「可能性の話だからなんとも言えないが、何か歴史が動く時の中心には称号Ⅰ持ち(インファンテ)がいるってのは世の常。良くも悪くもな」


「……? えーと……」


「むっ、なんだ助手くん。しばらく会わないうちに理解度が低くなったか? 歴史が動くとしても、一人の称号Ⅰ持ち(インファンテ)が生まれただけではそんなに動くこともない。運命を引き寄せる力が弱いと言うべきかなんというか。……だから、歴史が”大きく”動く時はかなりの数の称号Ⅰ持ち(インファンテ)が存在している可能性がある」


「……あ、勇者や賢者が同時多発的に生まれることが考えにくいから、転生者が来たと考えた方が」


「そう。理にかなってる」


 なるほど……。

 確かに言われてみればそうかも、って言う話だ。

 この多くの事件の発端はぼくがこの世界に転生してからのことが多い。……まぁ、ぼくが絡んでる話がほとんどだ。

 いや、まてよ……いま起きてる事件が、本来なら転生者がたくさん来て起こすレベルのことなら……ぼくって結構疫病神な可能性がないか? 一人で何人分の事件を引き起こしてる……。


(えー……気の所為だといいけど……)


 まぁ、この国以外で色々な事件があるかもしれないし。表沙汰になってない事件もあるだろう。

 むしろそっちの方が多そうじゃないか。うん、そうだ。きっとそう。そうじゃないと、ぼくが本当に疫病神扱いされるもん。


「じゃあ、その『土地が死ぬ』っていう時期にも転生者がいたということですかね?」


「そこまでは知らないけど、無いと思うぞ。勇者が滅ぼした、という話だし、当時は転生者なんて存在は発見されていなかったからな。発見されたのは、前回の領土戦争の時からになる」


 ……第一期転生者がこの世界にやってきたのは……確か、数百年前って話。

 正確な時期が分からないから何とも言えないか。

 が、大きな事件の中には彼らがいるってのは意識しておいた方がいいな。いち称号Ⅰ持ち(インファンテ)として。


「はあ〜。この前の転生者の処刑に関してもそうだけど、転生者が紛れてるんだろーなぁ〜。はぁ〜……面倒くさいことにならないといいけど」


 この様子から見るに、佳奈《アルマ》が転生者ってことはバレていないみたいだな。

 逆になんで魔族だけバレてるんだよ。何も考えてなさそうにボリボリお菓子を食べてるけど。


「一国制にしたほうが、何かと自由が聞くのはそうだろうけど」


「やめといた方がいいだろうねぇ」


「分かってるって……ロベル王国はなにかときな臭い。自由にさせてはくれないだろうし」


「ロベル王国はペネロ王国を属国にしたって聞きましたけど……あちらは一国制にする気満々なんじゃあ……」


「そりゃあそうさ。魔王と戦うだけでも大変なのに、国同士で睨み合ってるんだ。前の領土戦争の時みたいに疲弊しているタイミングで襲撃なんてあったらたまったもんじゃない」


 魔族と亜人種だけではなく、亜人種同士も戦争を起こす可能性がある。

 共通敵として魔王を掲げているが、身近な所に敵がいる。

 戦争を起こす理由はいつも資源不足。魔王に勝利をして資源を獲得するより、隣の国を襲撃した方が簡単に資源を確保できる……とか、そういうのなんだろうか。あーやだやだ。

 そんな悩みの種が尽きないなか、


「──なーんか、みんな色々考えて大変だなあ〜」


 クッキーを片手に持ち、もう片方にはコーヒーカップを持っているアルマがそんなことを言い出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。