429 新規団員紹介
このタスクだけが溜まっていく感じ、本当にきついなぁ。
考えることが多いというか。アイリスとクラディスの二つの人生のことを考えないといけないから大変だ。
でも、生きているので良し。いきてりゃなんでもできる。
(ゲームで言うと、次のメインクエストが出てくるまで何かしてたらサブクエストが溜まっていく感じかな)
別に放置していてもいいんだろうけど、気になる人には気になるって感じ。
モンドにわしゃわしゃとして癒やされたい……会いたい。吸いたい。猫吸いをする人の気持がよく分かる。
(まぁ、直近でしないといけないことはない……はず)
なにかしなかったらどこからか催促が飛んでくるだろう。
まぁ、それ待ちということで。別に月額サブスクライブに登録してる訳でもないから、お金がむしり取られるってことはないだろうし。
「さて、と」
正直、一段落をして次の目標やら何やらを立てたいんだけど……顔を覗かせておかないとな。
ノックをして、扉の前の奥の人物に入室の合図を送る。返事が返ってきたら。
「アイリス国定魔導士、入室します」
と言って扉を開く。
「久しぶりだな、助手くん。って前もそんな風に出迎えたか」
「先日の転生者の件は、協力をしていただきありがとうございます」
「よいよい。良いモノを見せてもらえてこちらも若返った気がした。すっきりしたよ」
扉の奥にいるのはお団子先輩。依頼は受けずとも、ぱたりと音沙汰無くなるというのは人が生きている以上ありえない。
あと、この人が砦内部の情報を見せてくれたおかげで助かった部分もある。
「キミ宛の依頼は全部、あの職員くんに渡してるよ」
「話は聞いています。ただ……ナグモさんがほとんど断っている様子で、あまり耳には入ってこないですが」
「まぁ、無視をするのは大事だ。全部を受けてたら時間なんて足らない。それこそ助手くんは研究の手伝いをしてもらいたいからね!! それもあの職員くんに伝えてるんだがね!!」
「すみません。少しバタバタとしていて」
「まぁ、いい。でもどうしようか。今日、来てくれるとは思ってもみなかったから何も用意をしてなくてね……勝手に頼んだらまた怒られそうだし」
「大丈夫です。少し挨拶に来ただけですので、お仕事のお邪魔をしてすみません」
頭を下げつつ、今日、ここに来た目的の話を聞くことに。
「そういえば、あの転生者だと疑われていた少女は」
「心配要らないよ。この王城の中にはいないがね。信頼できる人物の所に行ってもらってる」
「というと」
「それは内緒さ。何分、彼女は敵が多いらしい。ほとぼりが冷めるまでは王国側が護らせてもらうことになった」
「そうですか」
外面はクールな感じで対応をしたが、内心ほっとしている。やはり捨て身タックルの対策はしておいた方が良い。
おそらく、リリーさんも噛んでいるだろうから、アンのことは任せておいて良さそうだ。
「あと、その相方の少年の件にも同じような案内をするつもりだ。まぁ、まだまだ手続きができていないんだがな」
その少年っていうのはぼくのことか。ぼくにもなにか案内が……ふむ。それを待っておくか。
「分かりました。でしたら、今日は」
「っと、待ちたまえ。さすがに来てもらったんだ。手ぶらで帰す訳にはいかない」
「依頼ですか?」
「しないと言っているだろう。キミは隊長だ。だから、団員の情報は共有をしておこうと思っていてね」
首を傾げた。団員の情報とはなんぞや。
「入っていいぞ〜」
お団子先輩の声に応じて、後ろの扉が開いた。
魔素感知には反応はなかったけど……。
「って……」
「紹介しよう。【紫蘭之団】に新たに加わった子だ」
扉の前に立っていたのはなんとも見覚えのある顔。
「アルマ・ハイドレンジです! よろしくお願いします!」
なんでお前がこんな所にいるんだよ。
◇◇◇
すごく緊張した面持ちの彼女はアルマ。
何を隠そう、僕の妹であり、お姉ちゃんだ。
(なんで、アルマがいるんだよ…………!!)
向こうは僕のことに気付いていない様子。
名前は一緒に決めましたよね? アイリスですよ。アイリス。アルマとアンっていう『ア』から始まるからってみんなで話して決めましたよね。覚えてませんか? あ、でもなんだかそれっぽい雰囲気は感じ取ってるみたい。
「…………アルマ、さん」
「はいっ! アイリス隊長!」
(気付いてねぇな)
気の所為だった。名前は聞いたことがあるけどなぁ〜って感じか。まあ、同じような名前が多い世界だ。
それに……ピシッと敬礼をしているが、足は腰幅に開いてるし、なんならちょっとガニ股だし。敬礼ってのは足まで揃えるんだぞ。どこで習った敬礼だよソレ。
「彼女は魔族で、私の研究のために手を貸してくれているんだ」
「はぁ」
「驚かないのかい? 魔族だよ、魔族」
「別に。仲間なら仲間で問題は有りません。それに先輩が殺してないということはそういうことでしょうし」
「なぁんだつまらん」
冷淡な態度だと思われるかも知れないが、まぁ、そんなリアクションに富んでる訳でもない。「えぇ〜、そうなんですかあ〜?」って口元に手を当てて驚きはしない。すっ転んで目を丸くすることもしない。したほうがいいならするが、『アイリス』はしないだろう。
ってか、魔族ってバレてるのかよ。何してんだ。
「この王城の地下にある訓練場を使っているから、何か用事があったら顔を覗かせると良い」
「はあ」
「お。あんたが新しい国定魔導士ってヤツかい?」
「あ……え……?」
「この人は、このアルマという子の先生をやってる人。残念ながら【紫蘭之団】には加入はしてくれないらしい」
「よろしく。私はソバドア。ただの魔法使いさ」
次から次へと……。なんだ。なんで知り合いばかり出てくるんだ。
まぁ、でも、アルマがいるからソバドアさんもいるのは当然か。
ティナ先生が軍事顧問とかなんとかだから、王城にツテがあるのか? そう考えるのが普通か。さすがに佳奈だけがぽっと出てきたら警戒するが、王国の内部に通じている人が側にいたら話し合いに持ち込める……のか?
まぁ、なにか、このお団子の琴線に触れたんだろう。変わってるし、この人。
「……アイリスと申します。国定魔導士に任命されまし──」頭を下げて、上げると仮面をはぐられた「た……?」
「年上と話す時には顔を隠しちゃいけないよ。お嬢さん」
「〜!? かえ、して!」
手を伸ばせど、ソバドアさんは高身長おばあさん。ぼくの手が届くわけもない。
ポンッと頭の上に手を置かれ、にやりと笑われて……諦めるしかなかった。
「わああああああ、かわいいーーーー……お人形さんみたい絵teん」
「後半なにいってるのか分からなかったです」
「こんな顔と体して賢者だなんて、男が寄り付く訳だよ」
「バインバインの体で戦えるわけないだろってな」
「だけど、武闘賢者とも言われてるんだろう? 武器を持って並行詠唱をすると聞いた」
「ぶっとい賢者……太もものことかなぁ……アイリス隊長はむちむちですね……うわあ〜」
「何を食ったらこんな体になるのかと疑問に思うな。森人は肉をあまり食さないから肉か……」
「たしかに、お肉を食べる人はデカくなるって聞いたことがあるかも」
「この胸、尻、二の腕。どこをとっても柔らかい。だが、筋肉質であるのもそうか。……それにしても武器を握るにしてもこの胸は──」
「あのっ!!!」
三人に囲まれ、色んな場所を無遠慮に触られて。堪えきれなかった感情が爆発した。
「やめて……いただけると……嬉しいです」
女性同士のスキンシップは確かに男のあれとは違うとは思っていたけど……こんな感じなのか?
普通にお尻とか太ももとか触ってくるし……。
「「「わあ〜」」」
にやにやとした顔をされ、肩を小さく畳んだ。
女性歴が圧倒的に短いぼくは何が正解で、何が違うのか分からない。
「傭兵育ちでここまで初なのも珍しい」
「えっちだ!」
「何か飲むかい? お茶会でもしようか」
「…………」
早く帰りたい。助けて、アン……。




