427 血盟加入①
想像をしていたよりもトントン拍子で話が進んで解散をした。
イブともう少し話したかったというのもあるが……あの様子だと少し難しかっただろう。
というか、最後の方、イブの様子が変に感じたのは気の所為なのかな。
……あれだけゴネていたのに、最後だけやけに素直だった。
(情報がごちゃごちゃしてて気持ち悪いな……誰か、整理してほしい)
頭の並行処理くんとか、そういうのが頑張って頭を落ち着かせてほしいものだ。まぁ、色々と腰を据える前に……。
「リリーさん、ありがとうございます」
感謝を伝えておかねば。
「キミは私のことを保護者か何かだと思っていないかい?」
「いやぁ……何かあった時に助けてくれるのはリリーさんくらいなので」
「まぁ、頼れとは言ったが……なぁ? それでもだぞ」
ケトスがリリーさんを何か事付けて呼んでいたのが分かる気がする。
この人は中々どうして使い勝手が良い。言葉の響きは悪いが、本当にそうなのだ。
血盟主というポジションにいるというのにフットワークが軽い。話しやすいのに、ちゃんと大人としての仕事もしてくれる。
ちゃんとした立場がある人間でここまで気軽に絡めるのはリリーさんの人柄の良さをもってこそだろう。
「あと! ログリオ爺さんには気をつけろよ。機嫌が良かったみたいだから助かったが、タイミングが悪かったら手段なんて選ばんからな」
「……そんな人なんですか?」
「癖が強いのさ。あのレベルの人間で真っ当な奴は少ない。私を含んでな。まぁ、とにかくだ。キミと……あと、佳奈。外をほっつき歩くの禁止な」
「「えーーーーー」」
タイミングを合わせた訳じゃないが、声が重なった。
顔を見合わせて、リリーさんの方を向く。すると上機嫌にクスクスと笑われた。
「そっくりのばか兄妹が。お前らが外を歩くだけで何かが起きてんの! 良くも悪くも何かを呼び寄せるのは宿命なんだろうが……首輪つけて柱にくくりつけられたくなかったら、素直に言う事聞きなさい。それとだ……クラディス少年。キミはケトスとの約束と真反対のことをしてどうする……?」
「……? 真反対……というと」
「目立たせたくない方を目立たせて、目立たたせるべき方がなんだか上手く行ってるじゃないか。どうなってんだ」
「あ……」
ケトスとの約束は『アイリス』の方を目立たせて『クラディス』はひっそりと暮らすというもの。
だが、今は『アイリス』は賢者として認められて比較的過ごしやすいのに『クラディス』の状態だと何も後ろ盾もなく、なんなら下位ダンジョンやら何やらのせいで知名度を獲得してしまっている状態。
うわぁ……言われてみれば……。確かに、真反対だ。
「あはは……そんなつもりなんてなかったんですけど」
「笑って済む問題じゃないから、しっかりと反省しろばか」
「……はい、すみません」
「ったく……」
うぅ……ばかって言われた。つらい。
それでも優しく叱ってくれたほうなのだろう。
本当ならもっと危機感を覚えた方がいいんだろうが……なぁー……。
ただ買い物に出かけただけで、こんなイベントが発生するなんて。昔に見ていた探偵モノの作品で、主人公が行く先々に事件が起きるってのがあったな。作品を作る都合上、仕方がないことなんだろうが……それと似たような状況ってことだ。
うむぅ……動くにしてもクラディスの方ではなく、アイリスの方で動いた方がいいか。
「それで……なんですけど」
「なんだ」
「なんで、佳奈と一緒に?」
忘れてしまわないうちに聞いておこう。
接点なんてなかったと思うんだけど、いつの間に仲良くなってたんですか。
佳奈も懐いてるみたいだし、普通に兄妹であることとかバレてるし。
「最近、一緒に行動することが多くてな。暇そうだったから連れてきた。外の空気を吸うのは久しぶりだろうからな」
「……転生者ということは」
「知っとる。というか、魔族であることも知っとる。びっくりした」
その横で佳奈はドヤ顔。なんでそんな顔ができるんだよ。
魔族とか転生者とかの話になって、ぼくと兄妹とかって話になって、佳奈が懐いた……って感じか。簡単に想像できるな。
「一緒に行動してるのは……新しい訓練場と何か関係が?」
「そうだな。説明を受けていないのか?」
「説明は……はい。佳奈の先生に訓練関係は一任してるので、首を突っ込むのは、と」
視線が隣の佳奈に流された。お前はどうなんだ、という促しだ。
「わたしは……お兄ちゃんをびっくりさせようとしてぇ……内緒にしてたんです」
「なら説明は彼女の方からあるだろう。楽しみにしておけ」
「はいっ! 驚かせます!」
「なら良い。じゃあ、クラディス少年」
ビシッと指をさされたので姿勢を正した。
なんだ、何を言われるんだ。
「アレ以降、あっちの姿で何もしてないだろ。今、一番注目を集めてる奴がいないから、王国はバタバタしてるぞ」
「あーーーーー……えーと、一応、まぁ、いいかなぁって……」
「そんな軽い気持ちで王国を振り回すなんて才能があるなぁ、転生者クンは」
「……すみません。顔を出すようにします」
「わかったなら良し。じゃあ、手続きをしておくぞ」
「? 手続きって……」
「なんだ。恩寵ノ集に入るんだろう? 言い逃れはできんぞ」
「え”っ”……」
「ログリオの前で入る予定ですって言い切ったんだ。筋は通せ。これで、変な所に入ろうものならまたアレが来るぞ」
「…………血盟加入……ですか」
ログリオさんの前で「ティータに入る」と言ったのは、その場しのぎの嘘というか、嘘八割、本音二割だった。
入りたくない訳じゃないけど、別に乗り気で入ろうという訳でもない。
というか、そもそも血盟に入るつもりなんてなかったのに……。




