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425 私ンだ



「で、呼ばれた訳だが……来てたのか、ログリオ爺さん。連絡の一つくらい寄越せば飯くらい奢ったぞ」


「色々と立て込んでいてね。長居をするつもりもなかったんだが。とりあえずは何か飲むかい? ここの店のおすすめは紅茶らしい」


「紅茶なんぞ貴族しか飲まんよ。私はミルクでももらおうか」


 チラとリリーさんと目が合った。本当に申し訳ありません。あと助けてください。

 

「クラディスのこと見ないで」とイブが唸る。


「なんでだよ。ってか……イブってお前のことか。あの時のガキが……随分と様子が変わってるな」


 ポリポリと金色の髪を掻くと、ぼくの横に座ろうとしてイブに睨まれ、ログリオさんの隣に座っていた。

 構図としてはぼくの真横にイブがいて、その前にログリオさんという、線で繋げば凄い尖った二等辺三角形のような形で座ってる。で、リリーさんがぼくとログリオさんの間に座ったことで、良くわからない形に。

 喫茶店の人もびっくりの座り方だろう。まぁ、屋外客席だからそこまで気に留めることはないだろうが……。


 いや、前言撤回だ。


 従業員というより、国民の目に触れる。

 さすがに意味の分からないメンバーすぎるのだろう。ハインストの血盟主とそこのルーキー、ティータの血盟主と良くわからん白髪の子ども。はたから見るとぼくが異質すぎる。ひそひそと話しされるのも大体がぼくのことだ。なんであんなメンツの中に一般人が……てな感じ。

 

「呼ばせてもらったのはほかでもない。クラディスくんのことさ」


「なんだ? この悪ガキが何かしたか?」


「いやいや、イブのお気に入りでね。血盟に勧誘をしているトコロなのだよ」


「へぇ〜。あんたらンとこの血盟加入の最低条件が白金等級じゃなかったか? この子は銀等級だぞ」


「環境が変わったのさ。今では有能な人ならば誰でも歓迎をしてる」


「ってか、ケトスのことも誘ったらしいな。聞いたぞ。そんな人のものに手を出す奴だったか?」


「欲しい物があれば、欲を出してしまうのさ。この年齢になってもまだまだ冒険者気質が抜けなくてね」


「それで今回はクラディスってことか」


「あぁ」


「却下だ」


「だそうだぞ、イブ」


「…………」


 話の流れでリリーさんもこの場を設けさせたのがイブであると気付いたらしい。

 このタイミングでのバトンパスはそういう意味。リリーさんは少し面倒くさそうに口をひん曲げた。


「クラディスと一緒にいたい」


「知らん。私はお前のことが嫌いだ」


「こっちこそ知らない。あなた誰?」


「数年前にお世話した奴の顔を忘れたかクソガキ。大人しくロベル王国に引っ込んどけばよかったものを」


「なにが? こっちの勝手でしょ? それとお世話したとかしてないとか、クラディスの話をしてんだけど」


「クラディスの話をする前に、その態度を改めろって言ってんだ。私はお前のことが嫌いだ。話し合いすらしたくない。……大英雄様もまだコイツを連れて歩いてるとはな」


「私の夢のためにはイブが必要なのでな。それで、どうだろうか。クラディスくんのことなんだが」


「やらんと言っているだろう」リリーさんは腕を組んだ。「何回も言わせるな」


「リリー……イブのお気に入りということは、どういうことか分かっているんだろう?」


「どういうことかをちゃんと分かってるからこそ言ってるんだ。そもそも、不確実な情報を元にソイツを連れて歩くのは止めろ。定着が進んでるのかは知らんが、危なすぎる」


「何が、なんで。さっきから失礼じゃない? オバさんがボクの何を知ってるの」


「全部知ってるよ。だから黙ってろ。今はあんたの飼い主と話をしてるんだ」


 眼圧でもってイブを怯ませ、ログリオさんの方に向き直した。


「ログリオ。ロベル王国の計画が頓挫した理由は知ってるだろ。なのに、まだソイツを連れて歩くのか」


「そりゃあそうさ。夢のために」


「爆発してない爆薬を肌身離さず持ってるのと一緒。危険すぎる。すぐにゴミ箱にでも捨てるんだな」


 言葉が荒くなるが、別に怒っている訳ではない。

 淡々と事実を話すような口ぶりにぼくは口を挟むことができなかった。


「大英雄様の言いたいことは予想が着く。ソイツがクラディスのことを気に入ってるから、その子が称号Ⅰ持ち(インファンテ)だって言いたいんだろ?」


 頬杖を突き、もう片方の手をヒラと動かした。


「だったら手を引くんだな」


「その理由は?」


「私がいる時点で想像は着くだろ。全部言わせるな」


 リリーさんは不快感を顕わにしてログリオさんと睨み合った。

 

「クラディス少年は白。あんたが期待してるようなことは起こらねぇよ」


「……本当だろうな」


 目を開けたログリオさんに物怖じせず。


「アンタならその答えを知ってるはずだ。私が今まで、何人、アイツらを殺してきた?」


「…………」

 

「さ、アンタらも暇じゃないんだろ。この子は私が貰い受けるから。というか、前々から声をかけてた奴を横から引っ張ろうとするな」


 シッシッと追い立てるように手を動かすリリーさん。

 そちらを見るイブの表情は────歪んでた。


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