422 友達ではなくなる
聞き間違いかと思った。
だって、それ……ってつまり。
「……転生者ってこと……」
自分は罪人であると公言したのと一緒。
それならイブが強いのにも理由が着く。
「イブ、本当に──」
「違うよ。あんな奴らと一緒にしないで」
ピシャリと切るような言葉でそう言った。
「で、でも……今、別の世界から来たって」
「ボクは異世界からやってきた。でも、転生者じゃない。……ボクは転移者だよ、クラディス」
「転移者……?」
口から言葉が流れ落ちていく。
転生者ではなく、転移者……って。
「ロベル王国が研究している分野で転移魔法があるの。それで異世界から呼ばれたのがボクらしいんだ」
「まって、なにが……何を言ってるの……?」
「そうだよね。信じられないよね。でも、信じてほしい」
「……違う。そこじゃない……ロベル王国が研究して、異世界から人を呼んだ……? そんなことって……可能なの?」
「たくさん失敗したらしい。別の世界からこの世界を繋げることは技術的に不可能。だから、ロベル王国の研究者達は……転生者に選ばれる人の体が向こうの世界で消失をする前に、この世界に呼び込むことに全力を尽くしたみたい」
…………何を言ってる。
これはなんだ? なんのイタズラだ?
イブは何をさっきから言ってるんだ?
「……それで、ボクは97番目の試験体。ようやく成功した個体らしい」
待って。本当に待ってほしい。お願いだ。
理解をしたくないというのに、話についていきたくないのに──頭はイブの話を理解してしまう。
「イブのその体は……転生者の元々の肉体……ってこと?」
「うん」
「じゃあ……イブは……? どうなるの。どういう、原理で……それって──」
と混乱をしながらも、この話が最初の話に繋がることに気づく。
「だから……記憶がないのか」
「ってことみたい。ごめんね……気持ち悪いよね、こんな話して……ごめん」
申し訳ない、と謝るイブに胸の中がざわついた。
転移者を研究しているロベル王国。その成功体がイブで、イブの体は元々は地球の人間の体。
その人間の体の魂はこちらの世界に転生をしている。が、その外身をロベル王国はこちらの世界に呼び寄せた。
──記憶喪失というのはそういうことか。
魂の部分が記憶を持っていたため、体の部分は記憶を宿さずに連れてこられた。
つまり、イブは今の年齢になるまでの記憶がごっそりと無い状態でスタートをしている。
「でも、クラディスには……正直に話しておきたかった……ボクの大好きな人だから……知っておいてほしかったんだ」
「…………」
信じられない話だ。
だけど、ぼくが転生者である以上、この手の話を100%否定することなんてできない。
「……そういうことなら……わかったよイブ。分かった」
「! 本当!? ボクのこと……嫌いになったりしない?」
「うん。しないよ」
「良かったあ……本当のことを言うのって怖いね」
安心して笑うイブの手前で、ぼくはまだ心のなかにざわつきを感じていた。
ロベル王国は監査庁との結びつきが強い──これはエヴァーチェのみんなから聞いた話。
だから、イブは監査庁に対して強く出ることができる。
だが、イブは転移者という存在。監査庁にとって『転移者』は障害ではないということ。
「じゃあ、なんでロベル王国って……その転移者を研究してたのかな」
背中に冷や汗が伝う。
ぼくの仮説が正しければ、イブがこの世界に転移をさせられた理由は──
「転生者を探して、殺すためだよ」
やはり、そうか。
「だからボクも探してる。まぁ、上手くはいってないんだけどね〜。転移者も転生者も称号Ⅰ持ちって扱いになるし、元の世界が一緒だから惹かれ合うんじゃないかって……釣果は0なんだけどね」
「……そうなんだ」
今日、感じていた疑問の全てが分かった気がした。
ロベル王国は監査庁と蜜月な関係。
そんなロベル王国が研究していた転移者という存在。転生者が転生する時期を算出し、ピンポイントで転生者の体をこの世界に強引に引っ張ってくる。
で、イブの能力はとても強い。
そこに神様という存在が介入しているかは定かではないが──彼女のステータスは常人のソレではない。勇者のケトスと同等だ。
そんな彼女を呼び寄せた理由は……転生者を探して殺させるため。
「記憶を戻すためには、転生しているボクを殺す必要がある。から、今、頑張って探してるトコ」
「……大変だ。それは、本当に」
「クラディスも手を貸してね! 転生者探し!」
「…………うん」
あぁ、なんで……こうなった。
運命って奴は本当に残酷で、転生者というのは本当に真っ当に生きるのが難しい。
この世界でぼくにできた友達──イブ。
それすらも奪って行こうとしてくるんだから。
──イブは、ぼくら転生者の敵になる存在だった。
だから、もう、ぼくは……イブのことを友達として見ることができなくなる。
そう思うと、喉が締め付けられる気がした。




