416 邪魔だ
「なっ──」
一瞬にして地面に押さえつけられ、腕を固められた。
「ぐあっ!?」
速すぎる! 感知の範囲は50mはあるんだぞ!?
それを一気に詰めれるなんて……!
もがけど、拘束がゆるまることはない。大の大人に上に乗られ、辺りを囲まれた。
「この少年が、連絡にあった『転生者』で間違い有りませんね」
上から声が聞こえる。ぼくはその声に聞き覚えがあった。
アイリスの時に新聞用に一緒に写真を撮った男。一際大きく、監査庁の中でも武闘派だと感じさせる体格をしている。
戦闘をして、監査庁を呼んで、拘束。
監査庁がこれほどまで早く動くなんて……!! まだ、呼びに行くっていう声が聞こえてから二分も経ってないんだぞ!?
想定外のことが起こりすぎだ!
「あぁ、そうだ。悪いな、対応してもらって。暴れて暴れて……対応に困ってたんだ」
完全獣化を解いたスケアは疲れ切ったような顔を浮かべながらも、ぼくの顔を覗き込んできた。
勝ち誇った顔を浮かべ、
「精々、調べてもらうといい。何が出てくるかはわかんねぇけどな? ハハハハハッ!!」
「──っ」
どうする!?
このまま捕まるとそのまま鑑定されて──さすがにアイリスのように上手くはいかない。
その前にこのスケアがどこまで考えてコレをしてるのかも分からない。
アンの時のように鑑定士がでっちあげる可能性だってある。
「ぼくは転生者じゃない! アイツが勝手にいってることです!」
「調べりゃあ済む話だろうがボケ」
「だからっ……話が通じないなぁ、お前は!」
「そりゃあテメェだ。なんでそんなに焦ってるんだ? もしかして……本当に転生者なのかあ?」
「──っ」
監査庁をはねのけるのは、転生者だっていってるものだ。
不当な拘束だと叫べど、鑑定をされたらぼくが称号Ⅰ持ちなことが分かる。
──動かせ。もがけ。
これだけはダメだ。
捕まったら、ぼくは……!!
「襲ってきたのはアッチですよ!?」
「それはテメェが転生者だろうがボケ。転生者じゃなかったら、その時に謝りゃいいんだろ?」
なんだそのデタラメ論は! 頭に何が詰まってるんだ!
こんな交通事故みたいなやり方で、ぼくは死ぬのか!?
ふざけるな、こんな終わり方なんて……許せれる訳がない!
「監査庁はそれでいいんですか!? ぼくを拘束する前にアイツを拘束するべきじゃないんですか!?」
「我々が手を下すのは転生者のみだ。あの男は昔に転生者じゃないと証明している。だが、キミはまだだ」
「……っ!」
「暴れなくていい。鑑定したらすぐに解放をしてやろう」
ダメなんだよっ、それじゃあ……!!
それだったら、ぼくが転生者だってバレるんだって!
「下位ダンジョンの記録保持者のクラディス」
くそ、くそ! くそっ……!!
もう何もすることができないのか!?
あれだけ頑張って強くなったってのに!
この、意味の分からない逆恨みのせいで、ぼくは──死ぬのかっ……!?
「転生者の疑いで拘束をさせていただきます」
「……っ」
グッと押さえつけられ、石畳に顔面が擦れた。
大の大人に組み伏せられて、体重を乗せられて。
ぼくは、監査庁に捕まる…………
「────邪魔」
ハズだった。
ぼくに乗っかっていた男の体重が無くなったかと思って、顔をあげると困惑するスケアがいた。
「おまえ……」
「だから、退いてって」
狼狽えるスケアをその何者かが押しのけると、どこかで見た靴が目の前にきた。
──この靴。
ゆっくりと顔をあげようとすると、向こうが顔を覗き込んできて──先に前髪が落ちてきた。
紺色の髪色。そして、見えたおでこと瞳に意識を連れ去られた。
「あ、やっぱりだ。クラディス〜! 会いたかったよぉ〜!」
満面の笑みで再会を喜ばれ、体を持ち上げられた。
何が起こっているのかが全くわからないまま、ぼくは助けてくれた少女の名前を口にする。
「イブ……」
「うへへ。久しぶりっ!」
そこにいたのは、ぼくがこの世界で二番目にできた友人だった。




