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410 やることリスト



 今は家で一段落中。残念ながら家の中には誰もいない。

 アンは王国側に引き取られて諸々な話をされているトコロ。しばらくは会うことはできないと言われた。


「フーシェンが捨て身タックルをしてくる可能性もあるから、アンはしばらく隠居してもらった方が良いのは分かってるけど……」


 祝勝会と称してどこかに外食でも行きたかったけど、僕一人じゃなぁ……。佳奈《アルマ》もいないし。


 一応は、ちょっとだけ会話をすることができた。

 監査庁側の面倒事を片付ける前に、アンに袖を引っ張られて「信じてました」と。

 その言葉に「怖い思いをさせてごめん」と小さく返して仕事に連れ出された。


 アンの内になにか秘めたような顔を思い出し、天井に手を出してかざした。

 

「…………頑張ったよ、慣れないことばかりした」


 この手の出来事は常に負けっぱなしだった。

 相手は監査庁とフーシェンとロバート。そんな大組織に向かって、上手く立ち回り、たった一人を悪者にして丸く収めた。

 転生者側の初白星。これが武器を持った戦いじゃなく、口舌だというのもなんだかぼくらしい。


「人ってやろうと思ったら……なんでもできるんだなぁ」


 あんな演説のようなやり方。微妙な表情の変化を駆使し、皆を飽きさせないように、フラストレーションを調節しながら、最後にあのタヌキに矛先を向けさせる。

 丁寧に説明をしすぎちゃったかな。話が長かったら集中力も続かないだろうし。

 まぁ、あの時の街の皆の顔を見てたら大丈夫だと思ったけど。真剣に聞いてくれてたし。

 

 ──「そういえば、あるじは演劇というかそういうのが得意な気がします」

 ──「確かにそうだ。旦那の演技は最高だったな!」

 ──「なにかやられてたことがあるんです?」


 あの時は自分の気持ちを正直に言っただけだと答えたけど……。


「そういうの、得意なのかも。演劇……やっちゃうか」


 この世界にきてから自分の特技が増えた気がする。いや、「腹を決めたらなんでもできる」ってのが正しいか。普通にピンチになったら焦るし、表情にはまだまだでるだろうしなぁ。

 

 感情が顔に出過ぎるのが問題なんだろう。それが良いように転じて、演技というか『気持ちが乗ってる時』に当てはまってると考えるのがいい。


「くあー……まぁ、でも、とりあえず」


 【アイリス】の存在を確立することができた。目的は達成だな。

 しばらくは【クラディス】の方のことをしてもいいだろう。ゲームとかならキャラチェンをして、タスクが見えるー……とかなんだろうけど。そういうのは搭載をされていない。


「消耗品の購入と……何があったっけ」


 しばらく家のことができてなかったから家のことはするとして……収納袋や簡易的な冷蔵庫の中身も空。ほんと、佳奈(アルマ)はどこほっつき歩いてるんだ。ちゃんとご飯は食べれてるのか?

 あとは……


「あーー、武器と防具の新調かぁ……」


 下位ダンジョンに行く前から武器が安い小刀で代用してたから、それも買わないと。


 武器でそんなに変わるのかって話だけど、結構変わる。

 切れ味とか取り回しとかグリップ感とか色々ある。

 【ホワイトボグの短剣】をどこぞのユットロールがぶっ壊してくれやがったからな……たまに思い出すけど、本当に腹が立ってきた。思い入れのある武器だったのにさ。くそぅ。


 アンの拳殻もそろそろ修理か買い直しか何かしないとか。

 佳奈《アルマ》は……どうなんだ? 死霊術士(ネクロマンサー)ってなに? 杖? 骸骨でもプレゼントしたらいいのかな。

 

 まて、三人分の武器とか防具の金なんてないぞ?

 お金は今は【紫蘭之団《オーキッド》】が結成される時に渡された奨励金みたいな金と前の貯蓄を切り崩してる。小刀を湯水のように壊してるから、それもばかにならないし……。


「依頼……しないとだな」


 とりあえず、金稼ぎを頑張らねば、ということが分かった。

 あとは?…………ええい、こういう時は紙に書き出すに限る。

 ってな訳で、書いてみたんだけど。

 

「うわ……いっぱい……」


 ・武器と防具の新調。あと、タルトさん達に使用感の報告。

 ・日用品・食材の購入。

 ・二次転職の報告を忘れていました。

 ・そういえば、女装の件ってどうなったんだ?

 ・アサルトリアの皆さんは帰国してます?

 ・フォリスの大森林のみんなと話もしたいし。

 ・というか金がない。

 ・魔素操作の練習とか、最近は勉強を疎かにしてた。

 ・まず、第一にレヴィさんから借りてた本とかを返すのを忘れてた。

 ・まじで金ないな。ほんと。


 腕を組んで唸る。これは、えーと……何からするべきか。

 とりあえず、すぐに終わらせれるのから終わらせるのがいいか。

 すぐに終わりそうなのは……うん、よし、これからやろう。


「読み終えた中級魔導書をレヴィさんに返しにいく次いでに、冒険者組合によって二次転職の達成報告とかを、えーと……してっ!! それでレヴィさんだからアサルトリアの人達が帰ってきてるのかを確認、ということで」


 うし、これで二つは終わる。仕事なんぞは後に回したら回しただけ面倒くさくなるものだ。

 暇な時に終わらせておこう。

 これでいいよな? 他にやることとか……懸念点とかないよな。

 足を机の下でぷらぷらと遊ばせてみて、んー、と喉を唸らせる。


「とりあえず、ちょっと、おでかけ、しますか」

 

 なにかあってもなんとかなるだろう。

 まずは冒険者組合だ。


「って、眼帯が無くなったから包帯を巻かないと……くそ、消耗品め……!」

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