409 大仕事を終え
かくして、久々に見つかった転生者の処刑執行は王都襲撃の内通者の告発の場と姿を変えて幕を閉じた。
その後、監査庁のお偉いさんと握手をしている姿を写真に撮られたり、王国側になんか大量に恋文が届いたのだと。
各方面から色々な依頼が届いたらしく、貴族の警護依頼も中には入っていて正直に言って驚いた。
まぁ、色々なことがあった。で、一番驚いたこととしては。
「ナクソン氏の代わりに、ルースが代理で情報部を務めることになりました。あと、情報部や他の管轄を一度洗いざらい調査するので冒険者組合はちょっとお休みです」
とのこと。
情報部の中から部長を選ぶのではなく、できそうな人材として丸さんが抜擢されたと聞いたときは心象をお察しした。
ただでさえ忙しい職員長から、もっとハードそうな場所に飛ばされて気の毒。
あと、会う機会が減ってしまうと聞いて、悲しいなぁと思った。
これを教えてくれたのはナグモさんだったのだが、なんだか凄い楽しそうな顔をしていた。
どうやらあの広場にいたらしい。で、近くに落ちてきたナクソンを捕まえて、色々なことを根掘り葉掘り聞いて、ついでに愛のある暴行をして、道端に投げ捨てたのだと。えげつない。
ナクソンに関しては、王国の機関が色々な調査をしてくれることだろう。
情報部の部長という地位にいた彼は、ナグモさんの話によると血盟の順位にも携わっていたらしい。もしかしたらそっちにも影響があるかも、と言っていた。ぼくには関係ない話だけど、血盟の順位で店が割引してくれたり、依頼の数とか変わってくるから大変だろうなぁ〜。
ティナ先生は広場には行かずに、ナグモさんの部屋で昼寝をしていたみたい。
終わったことを報告すると褒めてはくれたけど、寝癖が着いたままだった。
ちなみにあの写真はアンの処刑執行日までの間に、変装したぼくがナクソンと店に入っていく所を写真に撮ってもらったものだ。
さすがにそんなグットタイミングで写真を撮る人なんかいないし、この世界はそもそもまだ写真が一般化されていない。上流階級やマスコミ辺りには広まってるが、庶民にはまだまだ手が遠い代物。
だから、捏造をした。
『ナクソンが王都襲撃前に赤髪の女性と一緒にいた』という話は確かなものだった。
見た目も概ね一致している。
あとは証拠として写真があればいいなぁということで、ぼくが犠牲になった訳だ。
身体変化で体を変え、赤髪の女性になり、ナクソンに接触をした。
あの日は最悪で最高の日だった。ベタベタと触れてくるナクソンにほほえみを返し、たくさんの宿を紹介してもらった。男女が宿ですることとしたら一つだけだ。行為に入る前に抜け出したが、手の甲や頬、首筋に残った跡が中々消えなかった。
実際に彼が外患誘致をしていたのかどうかは知らない。
そこらへんは王国側が調べてくれるだろうし、正直、手引をしていなくても魔司者なら自分で調査くらいするだろう。ノアがそうだったんだから。
そのほかに捏造したこととして、依頼書の押印が上げられる。
あれは確かにナクソンのものだが、元々の依頼書には押印の欄にナクソンの押印がされていなかった。
だから、押した。単純だ。
課長というのがナグモさんが情報部の知り合いらしいので、快く承諾をしてくれた。
捏造したのがバレたらどうするのか──そんな心配はしていない。
徹底的に穴が無いように調査をしたし、酒場だから日によって『のぼり』が違うということもない。天候なども雨などではない。あるとしたら、酒場の店主の証言だろうが、赤髪の女性なんて人はこの世界には多いのだ。どうせ、赤髪の女性と飲み交わした回数というのも多い。
また、フーシェン側が依頼書のでっちあげに気づく可能性はあった。
だが、今回の件は「ナクソン」という一人の男に標的を絞って徹底的に糾弾した内容になっているため、フーシェンは大人しくをしていた方が飛び火を食らわずに済む。もし、証言があったとしてもフーシェン側の依頼書というのはこちらが所持しているので、物的証拠がないから強く出ることができない。
最後に、コレは捏造とは違うが鑑定士のシエルという少女のことだ。
これは……今からそれの話をするからとりあえずは置いておこう。
「金で靡く人のことをぼくは信用できない。けど、君のことを引き取りたいって人がいるんだ」
案内した場所は王国の南部に位置する血盟の拠点。
「やっ。この前ぶりだね、監査庁から追い出された子」
そこにいたのはリリーさん。
そう、解析士としてのお仕事の中間にシエルという少女を挟みたいという申出があったのだ。
解析士への依頼料は膨大な金額になる。だけど値段を低く設定するのも嫌だ。ということで、比較的安価で依頼を受けれるフリーの鑑定士を雇いたかったのだという。
そのため、色々な責任を取らされて監査庁を辞めることになったシエルの引取先になってくれたのだ。
(まぁ、リリーさんはコレが目的で付き合ってくれた訳だけど)
依頼料をぼくの貯金で賄えた理由もコレ。
色々なサービスをするという体で良心的な金額に収めてくれた。
ちなみに、このシエルという少女には主従契約をしている。
血液を与えて契約をしている。彼女には悪いが、監査庁から出た所を拉致させてもらった。
名前とレベルと職業が一致している人が監査町の建物から出てくる所を出張っていた訳だ。
可哀想だとは思ってはいない。アンを護るためならなんだってやってやるつもりだったから。
という感じで、一件落着だ。
後始末がちょっと面倒くさいくらいか。
アイリス側に依頼が舞い込みすぎて、ナグモさんが一生断り続けてくれている。
ナグモさんがいなかったらぼくは王城に拉致され、仕事に駆けずり回っていることだったろう。
「はあ〜…………疲れた……」
やりきった感が充満。
ぼくは上手く立ち回れただろうか。




