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401 救出作戦会議②



「……!」


 ぼくの瞳を見て、ナグモさんは少し驚いたような表情になった。

 今までおそらく「及第点」の話だと思っていたのだと思う。

 冤罪を晴らすために、もっと世間的に信頼のできる組織からのアプローチというのは、ぼくではなくても誰でも思いつくような作戦だ。


 だが、ぼくは知っている。それだけでは足りないのだ、と。


「転生者を殺したい奴らが集まった熱が「冤罪でした」で、矛先が向こうに行くわけがない。だから、ナグモさん。私はナグモさんの性格を信用して、お願いをします。なにか、情報をください」


 話の意図が伝わったらしく、ナグモさんはここ一番で楽しそうな顔を浮かべた。

 

「素晴らしい……小さな転生者さんが成長しましたね」


「成長しないと殺される世界なら、ぼくはいくらでも成長してやります。ぼくしかできないやり方で、どんな風にでも」


「それでこそ、私の教え子です」ナグモさんは持ってきていた鞄から資料を取り出した。「ここ数ヶ月もの間、私はとある人物の捜査をしていました。別に、これといった理由はないのですが……まぁ、人の弱みほど握っていて楽しいものはありませんので」


 一緒に笑ってやりたいが、ちょっと苦笑い。

 ゲスい。さすがナグモさんだ。


「で、これにはティナちゃんも加勢をしてくれてて、ちょっと前から一気にできることが広がったんですよ」


「オマエのためではないからな!」


 牛乳をズゾゾと飲みながら口周りにおヒゲを作りながらVサイン。

 発言と行動が噛み合っていないんですが。


「助かります」


「精々感謝しろ」

 

「その結果、得られた情報はこの通りです」


 ナグモさんが出した情報に目を通して行くと……情報が乗っていた。ほしかった情報が。


「……!!」


 タヌキと呼ばれていた人物は、冒険者組合の情報部の長であるナクソンという男。

 その人物の情報が、血盟報告会や冒険者組合の報告会辺りから今日にかけて事細やかに。


「コイツが……ぼくとアンの情報を流してた奴ですか」


「えぇ。情報部を収めてるだけありますよ。中々尻尾を掴ませてくれなかった」


「……どうやってこの情報を?」


「この世界は転生者さんのおかげで情報屋にある程度の人権がありましてね。前々からお世話になってる所に依頼したんです……最初はちょっとした興味だったんですがね」


「その人、ナグモさんに資料をぶん投げたんだよ。会議中に」


「え」ペルシェトさんの説明に驚いた。「それで……?」


「怒ってる訳じゃあありませんよ? ただ、倍返ししてやろうと思っただけです」


「あぁ……」


 それがこんな形になるなんて思ってもみなかっただろう。喧嘩を売る相手を間違えるとこうなるんだな。


 その後、ぼくは資料を読んでいった。そこに書かれてあった情報というのはほんとうに事細やかなものばかり。


 出身地。趣味。給金の使い道。自宅。女性関係。出入国の情報。交友関係。懇意にしている友人の情報。いつどこの店に誰と立ち寄ったか──……。


 途中から、段々と読む手が止まらなくなった。

 読んでいく中で、頭の中で計画とシナリオを構築していく。


「……」

 

 どうすれば、アンを助けることができる? 

 なにをしたら、コイツを陥れることができるか。

 大衆のヘイトを管理するためにはなにが必要だ。

 これは使えるか、あれは使えるか。これとあれをつなぎ合わせれば──イケるか。


(いや、イケる。これなら、冤罪を晴らすだけじゃなく、皆の意識をナクソン(コイツ)に向けさせれる……!)


 脳内で練った計画を確かめているとナグモさんが悪そうな顔を浮かべた。


「ソレはちょっと演技力が必要かもしれませんが、大丈夫ですか?」


「……! まさか、何をしたいか分かりました……?」


「えぇ、同じところを繰り返して読み直してましたから」


「ははっ!」


 ぼくが何をしてやろうと思っているのかが手に取るように分かるようだ。

 おそらく、同じ思考回路。ティナ先生の方に毒されていたと思っていたが、実はナグモさんの方にも毒されていたのか。

 まぁ、本当に、師匠と弟子だ。似なくても良いところまで似る。


「冤罪をふっかけてくるような相手です。こっちとしてもし(・)て(・)も(・)良(・)い(・)こ(・)と(・)が(・)多(・)い(・)」

 

「元よりそのつもりでした。が、これは想像以上です」


「証拠がないなら作れば良い」


「えぇ。ところどころ、難しい場面はありますが……上手くやってみせます」


 ペルシェトさんやティナ先生が何のことか分かっていないような顔をしている中、ぼくは身体変化で体を変化させる。

 それはこの資料に書いてある容姿、髪の長さ、性別、年齢。

 あっという間に、高身長で長髪で細身だと言うのに胸が大きく、30代前半ほどの女性の体へ変化させた。


「わっ、わっ!」ペルシェトさんが急いで服を上から着させて。


「ナグモッ! 見るなっ!」とティナ先生がぼくの前に立った。


 ぶかぶかだった服が身体変化によりパツパツになり、とてもではないが男性には見せられないような体になった。

 が、そんなのこと知るか。


「ナグモさん……」と先生の横から顔を出して、笑った「この世界に、髪染めってありますか」


「紹介しましょう。あと、他にもやりたいことがあれば言ってください。手はずを整えましょう」


 ニコリと笑ったナグモさんを受け、計画を一気に進めていく。

 残りの期間でやれるだけのことはやってやる。

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