400 救出作戦会議①
監査庁での話も簡易的なもので終わり、また二週間後にという話で落ち着いた。
帰る途中でアイリスからクラディスに姿を変えるのを忘れ、次に訪れたのはナグモさんの部屋。
『ナグモは今、色々奔走しておってな。忙しいのだ』
ティナ先生がそんなことを言っていたから居ないだろうとは思っていたが。
「いないか……」
自分の家に帰ろうとしても、佳奈もいなかった。
訓練の場所を変えたと言っていたし、寝泊まりも自由だと言っていた。
(佳奈はソバドアさんがいるから大丈夫か)
広く感じる部屋で一人、アイリスの姿のまま椅子に座って、天井を見上げた。
「…………どうやって…………ひっくり返すか」
頭の中では色々な算段が立てられていっている。
まだ、ぼくが持っている情報は少ないから立てようにも中々現実味のない計画ばかりが立てられていく。
残虐性の高いもの。捨て身で特攻。どれもが実現可能だ。
「……」
今、必要な情報はなんだ。
監査庁に侵入することは可能だ。身体変化で姿を変えて、入れば問題はない。
入った所で鉄格子を壊すことは可能か? あのアンの手枷の鍵はどこにある。
それらの情報が足りない。二週間でできるような内容か。失敗をしたら最悪、アンとぼくが死ぬ。
アンの冤罪を晴らすのが一番、平和的な解決ができる。
そのために必要な情報………………
「足らん」
情報も足りない。そして、情報があったとしても確たる証拠がない。
同情に訴えかけたとして、転生者の処刑を見に来た人の心が変わるとは思わない。
インパクトが必要だ。
アンを殺せ、という感情から、アンが可哀想なヒロインに仕立て上げるためのシナリオを考えろ。
どうやったら逆転ができる?
どうやったら一矢報いれる?
「アンを殺そうと手引をした奴の情報と証拠が必要だ」
家に放り投げていた収納袋から通信魔導具を出して、魔素を注ぐ。
その人はすぐに出てくれた。
「ペルシェトさん。ナグモさんとティナ先生はいますか」
『うん。ティナちゃんがいるよ。変わろうか?』
「変わるのは大丈夫です。ティナ先生と、ナグモさんにも伝えておいてほしいんですが……持っている情報を全てください」
『……クラディスくん、なにやるつもり……?』
「情報次第です。……けど、こっちとしてもそろそろ我慢の限界なので」
今まではレベルが足りずに負けてばかりいた。
ぼくはこの世界でまだまだ弱い。だから、戦闘をしたら負ける可能性が高い。
しかし、今のぼくは──アイリス。国に認められた賢者だ。
「一回くらいは反撃してやろうかなと思ってます」
ぼくの声は届く。ならば、土台は同じ。
あとはどちらが大衆の心を動かせれるかという話だ。
◇◇◇
「おまたせしました」
「情報があれば大丈夫です」
ナグモさんと予定を合わせれたのは二日後のことだった。
ティナ先生とナグモさんと流れでペルシェトさん。そして、会議の場所はペルシェトさんのお家だ。理由は一番片付いているからという理由と、両隣が空き部屋ということ。
「まず、情報を整理した上ですり合わせをしたいのですが、それでもいいですか」
「はい。そちらの方が認識の食い違いがなさそうでいいです」
「みんな何飲む?」
「ワタシはミルク」「ぼくはコーヒーで」「今日は紅茶の気分です」
はーい、とペルシェトさんが台所に消えていった。
よくナグモさんが遊びに来るし、食器の予備はたくさんあるのがペルシェトさんらしい。毎回洗い物をするのが面倒だからいっぱい食器があるのだと。
「まず、最初に……アンが監査庁に捕まりました。鑑定士に目の前で鑑定をしてもらったら、転生者だと。その人の名前はシエル。レベルは100にすら届いていません」
「ならば嘘の申告をしたということになりますね」
「冤罪なのは間違いありません。そして、それは鑑定士全体がグルである可能性が高いです」
「それはそうでしょうねぇ……一人だけを金を積んでも他の人が知らずに「転生者ではありません」と言おうものなら、即刻鑑定士としての信頼が失墜。監査庁の専属鑑定士はお金が高いですからねぇ〜。その地位をなくすのは恐ろしいでしょう」
「なので、平等に買収されている可能性を考えた方がいい」
「ですね」
「監査庁側のデータとしてはこの程度。執行日については聞かれていますか?」
「はい。そちらの方は問題有りません」
ここまでの持っている情報の認識の共有ができた。
では、次の段階の話をしよう。ナグモさんの持ち得ている情報がほしい。
「次なんですが、ナグモさんの持っている情報が欲しいです。なんでもいいので、情報をください」
「もちろんそのつもりで来たんですが。どのような形でアンさんをお救いになるつもりですか?」
「執行の日に私が相手方の情報を流し、アンの冤罪を証明します」
「具体的なやり方としては」
「今、この世界で唯一の解析士に依頼をしています。お金は既に払い終えています」
「リリーさんの力を借りるという訳ですね。莫大な金が必要だったと思いますが」
「ほとんどの貯金を使い果たしました。これでもまけてくれたんですけど」
「ならば、執行日にリリーさんの言葉を借りて、冤罪であることを証明する、という流れで……」
ナグモさんは場をまとめようとしていた。
ぼく側のやりたいことを聞いて、少し納得をしたような顔をしている。
「ですが、それだけではインパクトが足りない」
そこにぼくは待ったをかけた。




