389 村での寝泊まり
さて、4日が過ぎた。
はしゃぎすぎて時間の経過が早い早い。
麻央さんの刀で貫かれた背中の傷もゆっくりと修復しているから良しとしよう。
改めてみたら本当に黒色の瞳のほうが金色に近くなってる……白っぽいといえば、白っぽいけど。
それに、どこを探しても眼帯が無いことに気付いた。
攻撃を避ける時に紐が切れたのは分かってたけど……なぁ〜。おでかけ代わりに探したけど、どっかのモンスターの腹の中に収まってるか。ソレか冒険者に拾われたかなぁ。警察に行ってもないだろうし、というかそういう落とし物を届けるルールみたいなのこの世界じゃなさそうだし。
はぁ、レヴィさんからの貰い物を紛失するだなんて、ちょっと気分が落ち込んだ。
ちゃちゃっと報告も終わらせておこう。
「……これは……」
「山にいるとされた『人型の何か』とやらが身に付けていた装飾品と、首です」
村長の家で報告。顔が青ざめていた。
……ご存知なんですね?
「最近、住処を変えたのか、ここ辺りに顔を出さなくなってはいたが……まさか」
何か色々と勘違いをしてくれているみたいだから良しとしよう。
数ヶ月前に麻央さんが家の建築中に邪魔をしてきた山賊を葬った。それから音沙汰ないのは当然だろう。
というか、この人……色々と情報を隠し過ぎだ。
「コレが皆様が言っていた『人型のなにか』ということで間違い有りませんか?」
「そう……だと思いますが……その」
言い淀む様子の村長に、ぼくは首を傾げた。
「なにか?」
「いえ……」
この山賊の人物をエリルに探って貰った所、割と有名な山賊の主らしい。
懸賞金もかかっているし、実力は白金等級ほどと言われている。だが、その子分たちもあわせると僕一人じゃ厳しい。
もし、山賊だった場合、勝てたかどうかは分からない。
これが普通の冒険者なら間違いなく死んでいることだろう。まぁ、麻央さんでも死んでいただろうが。
「モンスターが使役されているという話でしたが、私の方ではそのようなことは確認ができませんでした」
「そんなことは! あれは、たしかに」
顔を段々と伏せていく。露骨に。
そんな態度でいいんですか……?
「たしかに……なんです? ぼくに話をしていない情報がありましたか?」
「いいえ……全て、お話しました」
依頼をして調査を受けた以上、これが正しい。
「ならば、依頼は終わりです。報酬を受け取って帰りたいのですが」
正直、帰りたい。
最初は友好的な村だと思ったが、あまりにも雑だ。
だが、依頼を発行できたということは資金があるということ。……本当にどこから資金が出てるんだか。
「報酬は冒険者組合の方に預けておりますので! また、そちらの方で手続きを踏んでくれましたら」
「そうですか。では」
立ち上がって出ようとしたら腕を引かれた。
「ちょっ、ちょっとお待ちを。もう日が暮れる。今夜は泊まって行かれてはどうですか?」
キャンプ上にみんなを待たせてはいるが……。
村長の家の中をぐると見回した。
「…………そうですね。お言葉に甘えさせて頂きます。ただ……手持ちがあまりなくて、宿屋代などは」
「ご心配はいりません! 依頼をしてくださったんですから! お金はいりません!」
「では、そうさせていただきます。ただ、ご飯は済ませているので……お気遣いなく」
ニコリと笑い、宿に案内をしてもらった。
ムロさん達の旅で村が経営している宿には泊まらせてもらったことが何回かあるし、最西の村ではユシル村で泊まったこともある。
そこら辺のやり取りは慣れたもんだ。ビジネスホテルとかを想像をしていたら痛い目を見るが、まぁまぁ、寝心地は悪くはない。
それに宿の貸出は村の収入源の一つだ。それを無料で使わせえもらえるなんて感謝をしなければ。
◇◇◇
「クラディスさん!」
「どうしたの?」
ぼくが宿に泊まるって話をどこからか聞き出したのか、あの子達が襲来してきた。
「立派な冒険者になるためにはどうしたらいいですか!?」
え、わからないんだけど……ぼくが立派な冒険者じゃないから。
だって、キミと……あ、この子も銀等級に昇級してるし。
同じ階級だからなぁー……我が物顔で何か語るのは遠慮するというか。
「えーと……」
「はい!」
「冒険者組合で、冒険者に向けて訓練をしてる制度って知ってる……? ぼく、そこで鍛えてもらったんだ」
「訓練、ですか?」
「そう。だから、割と秘訣とか特になくてー……その訓練ってのをしたら、キミも強くなると思うよ」
どんな訓練かは言わないほうがこの子のためになるだろう。
聞いた内容と実際にやってみるのとでは違うからな。魔素を使わずにモンスターを倒す、って聞いてもその内情が想像しにくいだろうし、事細やかに説明するのもちょっと疲れる。
「分かりました! 今度、冒険者組合に行った時に話をしてみます!」
「うん。頑張ってね」
悪いことはしていないはず。強くなれるのは事実だし。ただ、地獄への道案内みたいになったな。
話したいことが済んだのか、子どもたちは帰っていった。
この時間の村っていうのはかなり寝静まっている。
警備をしている人もいない。ここはそういえば、監視家もなかった気がする。
無用心だけど、案外、男手があるみたいだし、王国から近いからいいのだろう。
「……ちょっと、疲れた……寝るか」
横になって目を閉じた。
布団ってこんなにふかふかだったんだなって思う。
「………………」
しばらくは家に帰れないって皆には伝えてるから、割とゆっくりしても良さそうかな。
「…………」
キャンプ地もいい感じになってきたから、明日は皆に何をごちそうしよう。
皆強くなってるから、広場上でも心配する必要ないし。
それにモンドには魔素操作で、ダンカンには最上位種の固有スキルが出てくるとはなぁ。デイジーにもなにか出てくるのかな。まだまだ強くなりそうだから心強いや。
「……」
それに、本音で話せる存在って大きいよなぁ。
仲間って素晴らしい。昔の自分が今のぼくを見たらうらやましがるだろうなぁ。
ほんとに……こんな生きにくい世界で、仲間を見つけれて、ぼくは幸せだよ。
「──」
「それは、止めておいた方がいいですよ」
僕に武器を振り下ろそうとしていた人物の腕を掴んだ。




