387 焚き火を囲むは冬山の者たち
ぱちぱちと焚き火をしているのを取り囲んでいるのはボクと冬山の隊長達。
上位ダンジョンの上にお邪魔させてもらって、今は腹ごしらえ中だ。下位ダンジョンのときに調理用の物を入れていっていたが、使わずに攻略しちゃったからそれで使ってみた。
普段は調理がされていない肉やら魚やらを食べてた皆からは大好評を頂いた。
ペルシェトさんに連れて行ってもらった飯屋の美味しそうな料理も真似して作ってみたが、そちらは味が薄かったみたいであまり人気は出ず。
みんな胃袋が若いから、脂っこいものでもなんでもいいんだもんなぁ。中高の男子が好きそうな奴は大体食ってくれるし、いい反応だし。作りがいがあるってもんだ。
「──それで、冒険者を追い返した訳ですよ」
「なんだかんだ森に上がってくるのか。あれだけ灸をすえたのに」
「俺たちにゃ手が出ないからってゴブリン達やウルフのに手を出そうとするヤツも出てきてですね。まぁ、それでも追い返されてる訳なんですが」
「みんな強いんだ。でも、森の入口辺りは護る必要がないよ。薬草やら何やらで入ってくる冒険者の邪魔をしたらそれはそれで可哀想だし」
手についたタレをペロと舐め取り、ダンカンはふむと頷いた。
「ゴブリンとウルフの警備を任せてる皆にはむしろ縄張りの警戒の方や、魔王の領土から降りてくる可能性がある北側の警備をしたほうがいいと思う。存在感をアピールしすぎたら、王国側が動くかもしれない」
「そういう風に言っておきます」
「冒険者が入ってこようものなら、ダンカンの覚えたてのスキルで一掃してもいいからさ」
「人間相手は本気が出せんので面白くはないですな」
「まぁまぁ。威圧のスキルならみんなビビって帰っていくと思うから、戦闘をしないという意味でもね」
冬山の方の話を聞いていると、主従契約の影響か僕の持っているスキルが従者側の皆にも発現をし始めたのだという。
モンドに『魔素操作』が発現をしていたのは知っている。が、他の皆にはなかった。
そんな中、ダンカンに出てきたのは──『下位種制圧』という聞いたことがないスキルだった。
(ゴブリンキング以下のモンスターと、自分よりもレベルの低いモンスターと人に対して有効な威圧)
鑑定をしながら顎に手をやって考える。
「普通の威圧とは違うみたいですけど、オレにもまだ何がなんだか」
「……普通のよりは効果が広くなってるみたい。ゴブリンとレベルの低い冒険者には効果のある威圧ってことみたい」
通常の威圧が『耐性の低い者』に対して効果的なのに対し、このスキルは「オレのほうが立場が上だろ」ってな感じで、レベル差がある人やモンスターには効果を望むことができる。特に、ゴブリン種に関しては『ほぼ確実』にアドを取れるスキルだ。
「モンドの方は? なにかあった?」
「特に変化はございません」と毛づくろいをしている。かわいい。
「魔素操作がある時点で、凄いことだから……ホイホイなにかあったらそれはそれでアレか」
鑑定で見ながら、話を進めていく。
気になるところはこんな感じかな。
レベルがバク上がりしてるのは他の縄張りのモンスターと戦っているかららしいけど……。
──ダンカン:Lv.389。
──モンド:Lv.394
(強くなりすぎじゃないか……主人として顔が立たないよ)
そして、我が子。──デイジー:Lv.344
「えーと、デイジー……? 強くなったね?」
「強くなったよ!」
「……うーん。強くなりすぎかも、みんな」
「「「??」」」
「あっという間にぼくのレベルを超えそうで、嬉しいような悲しいような」
「……? 何を仰ってるのですか? 我々は主人のレベルに応じて上がっていくのですよ?」
「……えーと?」
なんだそのはなし。
「主人が強くなればなるほど、主人のレベルに引っ張られるのです。もちろん従者側の個々の経験なども含みますが」
「えーーー……そうなんだ」
なんかそんな話を聞いたことがあるようなないような。
でも、それなら僕が強くなればなるほど、皆はそれに引っ張られるようにレベルが上がりやすくなる……か。
尚更レベルアップ頑張らないとだ。
「ご主人さま。体の調子はいかがで? 腕の件は」
「うーん、順調といえば順調かな」右手につけている手袋を外した。「ただ、ちょっと……ね」
魔障は明らかに酷くなっていっている。そのせいかおかげか、魔素の回路は常人のソレよりも何倍にも大きくなっている。
回路が広くなると魔素の出力が上がるため、魔法の威力などが上がる……のだけど。
(麻央さんとの戦闘の時、すぐに魔素ロストしちゃった)
右手に隔離されている『魔障』を使用したとしても、スペア程度の魔素量しかない。
なおかつ、自分側の魔素の結合数を高めた場合、シンプルに魔素一つに対しての効率が上がるのだが、魔素の全体数が少なくなってしまう。
今のぼくは『威力は高いけど、すぐにガス欠になる奴』という訳。
課題はたくさんある。クリアしていかないといけない。
「ただねぇ〜……ゆっくりと成長をしようとしても、なかなか環境が許してくれないんだぁ〜」
モンドにもたれかかって、ぐぐぐと体を伸ばした。
「みんなとのんびり暮らしたいなぁ」
「「「!!」」」
ぼそっと呟くと皆から凄い目で見られた。
え、食われる?
「旦那がそう言ってくれるだけで、オレぁ……!」
「ご主人さまの帰りを待っておりますので、いつでも帰ってきてくださると」
「ママと一緒に暮らしたいよ!! 帰ってきてよぉ!」
体をもみくちゃにされて、わわわ、と。
モンドの唾液まみれになって、デイジーにお腹あたりをつつかれて、ダンカンに抱きしめられて。
くるしい……。
なんとか抜け出して、追いかけっこみたいな感じになっていたら……。
「──また山で何者かが暴れていると思ったら……」
ズルズルという音を立てて、木々の奥から彼は姿を現した。
「……? あ……」
「クロの友人よ……キミは騒がしいのだな」
「大蛇さん!」
なんと白色の大蛇さんの再登場である。




