↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

404/550

386 引っ越しまでの間の過ごし方



 その後、微妙な雰囲気が流れると、麻央さんは色々な物を投げるように渡してきた。

 引っ越しをするから要らないものをくれるそうだ。

 それらを受け取り、玄関らしい玄関を出て、外で大蛇と遊んでいたデイジーを呼んだ。


「あ、終わったの?」


 警戒を頼んでいたけど外で暇をつぶしてくれてたみたいだ。 

 話が盛り上がってきたタイミングで静かに離れて行ってたもんな。気を遣わせて申し訳ない。

 デイジーはほんとできた息子だよ。

 

「それじゃあ、お邪魔しました」


「うん。またね」


「あと、蛇のキミ。色々と傷つけちゃってごめんね」


「気にしてはいない。クロの友人だからな」


「そっか……ありがとう」


 バサッと羽ばたくデイジー。真下を見れば、麻央さんと大蛇の姿があんなに離れた所に見える。

 まだ手を振ってくれてるのを見て、少し優しい気持ちになった。


「って、あ」


「どうしたの?」


「いや……色々と聞きたいことがあったのに……忘れちゃった」


 なんで黒い魔素を出せるんですか。

 その鎧はなんで修復するんですか。

 くそぉ……まぁ、転生者の何かしらのスキルなんだろうけど……ぐああああ、転生者の話で盛り上がりすぎた。


「まぁ──……いいか」


 あの様子なら、たぶん、またどこかで会えるだろう。


「…………あとは、これをどうやって村に報告するかだけど」


 麻央さんから貰っていた【討伐証明】は、かつてこの山にいた山賊が身に付けていた装飾品と首。

 数ヶ月前にこの森にやってきた麻央さんが家造りをしてたら襲ってきた、とかなんとか。なのに、首を丁寧に収納袋に入れちゃってる辺り、どこかで換金しようとしていたのが伺える。お金に抜け目がないのは主婦のアレなのかもしれないが、精神衛生上良くないですよ、ソレ。


 その他にもモンスターの爪、とか、眼球とか武器や防具にできそうなものを貰った。麻央さんは必要ないって言ってたから貰っちゃった。ぼくが振るった武器が一瞬にして壊れたから、その代わりという意味もあるのだろう。ダンジョンで手に入れた物なので、と言っても押し付けられた。明らかにレベルが高そうなモンスターのがあるけど……。


 一応は、住処を移動するのに3日くらい欲しい、という話を聞いている。

 ということは何かを報告するにしても4日目か。


「4日……ねぇ、デイジー?」


「なぁに?」


「ちょっと、上位ダンジョンの所に連れてってほしいなぁって思うんだけど、いい?」


「わっ! どうしたのママ! やっぱり長になるつもり!?」


「ふっふっふ。行ってからのお楽しみであるぞ」


「なら──」


 バンッとまるで大砲のような羽ばたく音が聞こえ、デイジーは急加速をした。


「ぐぇ」


 少しでも力を抜けば飛ばされそうな風圧に耐えながら、顔が凄いことに。

 これにはまだ慣れはしない。慣れる気がしない。

 まぁ、おかげで十分くらいで上位ダンジョンの上に到着。広場にゆっくりと着地をして、ぼくは耳に手を当てた。


「──あ、もしもし〜?」


「ママ。次は次は?」


「あ、ちょっとまってね。そうだねー……えーと、場所を確保してくれるとありがたいかも」


「おりゃあー!」


 わー、すごい。魔法なんか使わず羽ばたいて敵を飛ばしてる。

 

「で、どう? 暇〜? 暇ならちょっと7日間くらい遊ぼうかなって思っててさ──あ、来る? 分かった。じゃあ、二人だけ……え? みんな? あーー……ちょっと厳しいかも。呼び出せて二人までかなって。うん……ごめんね」

 

「ママ! 場所確保ッ!」


「でかした。じゃあ、呼ぶね」


 空中に魔法陣を展開して、通話先の二人を呼んだ。

 もう魔素がからっからになっちゃったけど、良しとしよう。


「旦那ッ! お久しぶりです!」


「ご主人さま! お会いしたかったです!」


「っしゃー、モンドとダンカン、久しぶりっ!」


 ダンカンと腕をあわせて、モンドの頭を撫でて。


「二人を呼んだ理由は分かるね?」


「分かってます。殺戮ですな」


「この山も手に入れるということで」


「キャンプをします」

 

「「きゃんぷ……」」


 殺戮だのなんだのと血の気の多い子たちだよ全く。


「珍しく休みがもらえたので、ちょっとゆっくりしたいなぁって思って。食べて、運動して、寝る! 分かったかな!」


「「お、おー……?」」


「じゃあ、さっそく寝床の準備だ!」と言いながら、質素な小刀を取り出した。「──なので、まずはこのダンジョンの上を制圧します!」


 意図が伝わったらしく、二人は目を輝かせた。


「よしきた」と拳を合わせて戦闘態勢へ。


「やはり、そうこなくては」後ろ足を引き、喉を鳴らした。


「え、殺す?」デイジーだけは可愛らしく首を傾げている。


「デイジー、言葉遣いが汚い。退いてもらう、が正しいよ」


「どいてもらう……」


「ただし、手段は問わず! 会話ができる個体は会話して、退いてもらう! そうじゃなきゃ! 自由に!」


「自由に! じゃあ、殺す!」


「さすがデイジー。良く分かってるな」


「渡黒鴉《レイヴン》の子らしくなってきた」


 デイジーの言葉遣いが荒いの、絶対、君たち二人のせいじゃん。

 はぁ、可愛かったデイジーに汚い言葉を教えちゃってさ。


「まぁー、いいか」


 変に人間らしく育てるというより、モンスターにはモンスターの成長の仕方がある。

 長く一緒にいるダンカンやモンドの影響を受けるっていうのはむしろいいことだ。

 

「うし。いくぞー! とりあえずは、そこのオーク」


 持っていた小刀で、デイジーの風で飛ばされていたオークを指した。


「オマエが今日の晩飯だ」


 久々の自由時間をどうやって謳歌しようか。ちょっと楽しみである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。