370 下位ダンジョン祝勝会
夜に全員集合と言われていたがギリギリになるまでアルマが帰ってこなかった。
下位ダンジョンから帰ってきてからというもの、佳奈が家に帰ってくる頻度が少なくなっていたのだ。
ソバドア先生に聞けば、心配することはない、訓練をする場所を変えただけだ、と言っていたから心配はしてないけどさ。
住み込みとまではいかないけど、勉強会から死霊術の訓練をそこで完結できるようになったってことだよな? どこにそんな便利な場所があるんだろうか。
「おまたへー……こっちの方まで来ることなかったから、道に迷いそうだった……あぶねっ……」
ということで、佳奈が来た。ちょっと疲れ顔で、汗すらかいてる。
遅刻ギリギリだったのはアレか。ここが王国の南部っていうまぁ、あんまり来ない所だからか。遠いっちゃ遠いしな。ティナ先生との訓練で西部から東部まで普通に通ってたぼくからしたら大したことはないんだが……まぁ、地道で行けば数時間はかかる。
「うし、全員参加! 入るぞ!」
「あれ、ナグモさんは?」
「声かけたけど忙しいんだってさ〜。ナグモさんも行きたいって言ってたのにさっ」
ナグモさんが忙しいのに、ペルシェトさんが自由にしてるのは……えーと、同じ副職員長ですよね。
まぁいいか。
「とりあえずっ! 下位ダンジョンおめでとー!」とグラスを掲げるペルシェトさん。
「わーい!」ととりあえず乗ったぼく。
「う、うぇーい」と乗り遅れたアン。
「いやっほー、私行ってないけど〜」とゲラゲラ笑うアルマ。
この四人での祝勝会が始まった。
この店は肉屋らしく、調理された肉が色々と出てくる。形としては酒のツマミみたいなもんか。まぁ、そのつもりだったのかはわからないけどペルシェトさんは既に酒をのんでる。大人っていいなぁ。
高級料理店という訳ではないので、出てくる料理もでっかい皿にイタズラみたいに小さいのが乗ってるってことはなかった。
「こういうのでいいんだよこういうので」
「あー、めっちゃ分かります」
うわ、これうっま。びっくりした……今度作ってみよ。
「おぉ? やはり、クラディスくんも前はこんな感じだった?」
「前って……」一応感知系のスキルを使って周辺チェック「まぁ、酒は飲まなかったですけど」
個室だからまぁでかい声じゃなかったら大丈夫か。
「お兄ちゃんはお酒飲まかったよ。コーヒーばっかり!」
「だそうです。一緒に過ごしてた妹がそう言ってるので」
「なっ、二人は一緒に住んでたのか!」
「一応、兄妹なので」「だよだよ。ラブラブだった」
雰囲気に酔ってる様子の佳奈が手を伸ばして来たので握って握手していた。なんだそれ。アンがありえないくらい渋い顔をしているじゃないか。ごめんて。
「そっかぁ……まぁ、私もさ? お酒はそこまで飲まないんだぁ。あまり飲んじゃうと食べ物の味がわかんなくなるしぃー……」
そこまで飲まないというか、そこまで飲めないのではない、じゃないだろうか。言うのは野暮か。
「あ、あとペルシェトさん。ぼく、全然手持ちないんですけど……」
「なに言ってんだよ!! 私の奢りらァ! お祝い会だからなぁ!」
「じゃあ、美味そうなの全部頼みますね」
「おうおう、やれやれ〜。破産させてみろ〜、わたしぉ〜」
よし、一応は言質を取ったな。他人のお金でご飯を食べさせてもらおう。
ペルシェトさんは金持ちだなんだってナグモさんが言ってたから遠慮はしなくていいだろう。
で、たくさんの料理を頼んだ。
アンと佳奈が止まらなかった。すごいや。本当に遠慮しなかった。
さすがにペルシェトさんからストップがかかるかと思うと「いや、本当に遠慮しなくていいよ。金はあるから」ときっぱり。こういうのって酔った時の勢いでいったから〜って話になるのかと思ってたのに。
みんなで散々美味い飯を食って、話をして……
「佳奈。聞いて欲しい」
「うぇ……なに、おにーちゃん……」
満腹すぎてお腹を擦っていた佳奈に声をかけた。
話す内容がつきたし、なんだかんだ解散ムードに入りかけてたから、話すならこのタイミングかと思った。
「……お兄ちゃん。思春期に入ったみたいだ」
「………………へ?」
思春期のことを打ち明けておいた。




