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366 監査庁への愚痴



「──っ!?」


「……これは……」


 二人して顔色が悪くなっていく。

 顔写真まで載っているとは思わなかった。


「あるじ、少しまずいかと」


「だよね……コレ」


 最年少で、少人数で、最速記録。話題にならないほうがおかしい。


「それだけじゃない。アンの顔写真付きってことは……フーシェンが動くかも」


「もう少し手を抜くべきでしたか」


「…………」


 今思えば、前回の最速記録更新の時もコレくらいの大きさで書かれてたきがする。少し考えたら分かることだった。

 ただの無名の冒険者から、一気に大躍進だ。本当なら喜ぶべきなのだろうが……諸手を挙げて喜べるほどこの世界を知らないわけじゃない。


「あ、この記事で【転生者疑い】になるかもしれないって心配してるの? 多分大丈夫だと思うけどな」


「へ?」


 転生者疑い……? って、あぁ、『監視』と『奴隷』と『監禁』と『極刑』の四種類の話か。

 全員を鑑定できれば一番楽なんだが人数に限りがあるし、レベル差というのがある。そのために設けられた区分だな。そんなに機能はしてなさそうだけど。


「あ、いや……別に嬉しいなぁとは思ってるんですけど」


「顔色悪くなってたろ。まぁ、ぼくらもなぁ〜……監査庁からクドクド言われるんだよ」


「は、はぁ……」


「ほんとうるさいんだよなぁ、アイツら」


「でも、お二人は……違うんですよね?」


「そうだよ。そう言ってるんだけど、この年齢でその躍進はちょっと〜……みたいな。いや、だったら鑑定しろよって思わない?」


 すごく色々なことを喋ってくれる。要するに、この人は今現在は『監視』の段階ってことか。


 ◯転生者っぽいので気にかけますよ──『監視』

 ◯転生者かもしれない。称号Ⅰに何かあるぞ──『拘束』

 ◯転生者だった──『処刑』

 ◯転生者じゃなかった──『解放』


 この前に捕まりかけた感じだと、こんな感じか。


 前の四種類は、監査庁とか鑑定士との連携が上手くできていなくて転生者へのヘイトが溜まっていた時の遺物だろう。


 さすがにすぐに奴隷ってなるのは恐ろしいしな。

 というか、監査庁はそんなことを言ってくるのか? 鑑定士の数不足はあるだろうけど、なんていうか『お前らに目をつけてるからな。鑑定する気満々だぞ』って感じだ。

 

「……? そういえば、キミはギルドで稽古をつけてもらってなかったか?」


「え、あぁ……まぁ」


「飲み食いしてたらキミみたいな子どもをよく見かけたからな」


 お。ぼくのことを知ってくれてるのか。ならよかった。

 ここらへんに住んでる冒険者なら西部ギルドは利用するだろうし、会ってる可能性もあるのか。


「それなら下位ダンジョンくらいならクリアするだろうし、心配する必要はないんじゃない? まぁ、監査庁から変な手紙は来るかもだけど」


「……ははは」


「あと、キミ。ケトスの友達でしょ」


「ケトスのこと知ってるんですか!?」


「知ってら〜。だって、俺らケトスの先輩だもん」


 ぼくらが食べていた食事のミートボールを1つ摘んで魔導士は笑みを浮かべた。


「ってことは……ティータの冒険者さん?」


「そ。ケトスを迎えに来たときとか、奥からちょいちょい見てたんだよ? 気が付かなかったっしょ。デンはそこら辺に突っ立ってたら鎧置きに間違われることもあるし」


 なんだ……じゃあ、遠慮しなくてもいいか。リリーさんの仲間ってことだったら、ある程度の信頼はしてもいいだろうし。


「転生者疑いの制度めんどくさいよね」


「いや、ほんと、それです」


「実際、ぼくの周りの人でも何人かはそんな感じで手紙を貰ってるんだって。鑑定の順番待ちの札を配られてる気分」


「悪いことしてないのに、悪いことしてるみたいな気分になりますね」


「そう! ほんとソレ! なんか、実績をあげることを奨励してるけど、若いうちに実績あげたらそれはそれでくどくど言ってくるし……ほんと嫌いだよ、アイツら」


「ミゲル。それは酒が入ってるからって喋り過ぎだぞ」


「デン〜? 止めないでおくれよ。事実だろう。僕らも昔の紛争で色々あったんだけど……ほーーんと、転生者転生者って煩いの」


「悪い癖だ。ごめんね少女お二人」


「い、いえ……」


 ちょっと顔が赤いと思ってたら酒を飲んでたのか。


「って少女お二人? ん?」


「ミゲルは酒が入るとめんどくさいんだ。ほら、席に戻ろう」


「酒なんてこれっぽちも飲んでないじゃないか!」


「いいから、来い」


「じゃあねぇ、ケトスの彼女さん〜」


 首根っこを掴まれて引きずられていった。

 

「…………ぼく、ケトスの彼女になってたのか」


 頬杖を突き、ふふ、と笑った。 

 アンからすごい視線を浴びせられていることに気づいていて、目を逸らした。

 

「アン、これからの方針が決まったね」


「えぇ? なんです? あのクソ眼鏡の彼女さん」


「わぁ……露骨に……」


 いや、ケトスのことだから余計か。


「……やっぱり、しばらく目立つことは控えよう。冒険者でギルドに来る人ならぼくのことを知ってるかもだけど、そうじゃない人にも目に留まる。何かやるにしても……先にギルドの階級だけでも上げておいたほうがいい」


「……ですね」


 僕たちが目立つ理由はギルドの階級が低いことと、ぼくの年齢だ。


 アンは森人《エルフ》系の血が流れているから見た目年齢よりも年上だ。何歳かは聞かないけど。

 アンの方で目立つ要素といったら、闘技場の最長連勝記録保持者ということ。さっきみた新聞記事にはそういうのが書いてなかったから、そこまで深掘りはされていないだろうが……。


 先の話。

 冒険者以外にもこの新聞は広まっていく。 


 その中に、アンのことを知っている人がいた場合──ちょっと面倒なことになるかもしれない。


 

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