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362 またコレを経験することになるとは


 【支配者領域】


 効果はなんと【主人と共にいる従者達のステータス向上効果、並びに他の者の主従契約の影響を受け付けず、精神支配、肉体的支配を排除する】というもの。


 なんともまぁ、独占欲強めのスキルというか。


 要するにこのスキルは、オレのものに手を出すな、というスキルなわけだ。


「それにしても……独占欲が発動条件とか……」


 どうなってんだ、本当に。

 

(……明らかに亜人の力に芽生えてから……自制するのが難しくなってる気がしたが……関係あるのか?)


 前の自分だったら……ぼくはアンに手を出していないだろう。

 他にもいい人がいるかもしれないから、って。

 なのに──離れてほしくないという思いから、行為に及んだ。


(やったのは……大人なキスまでだけど)


 それでも前の自分を考えると自制できていない。


「………………」

 

 そう思えばいくつか思い当たる節がある。

 

 最西の街にいる嫌いな血盟にイタズラという名の報復をしてみたり。

 ちょっと言葉遣いが荒くなったり。

 身体変化をしたからといって、ナグモさんにドキッとしたり。

 態度が大きくなった……こともある。

 

 前の自分では考えられないようなことばかりだ。

 

「称号Ⅰは過酷な運命を強いる……だったら、それよりも希少な亜人は……何か、特別な力があるってことなのか……?」


 歴史を見ても亜人という種族は出てきておらず、唯一分かっていることとしては──人間側の最上位種族ということ。

 そして他の最上位種として君臨しているのが、魔王という存在。

 人間側の王としての器がある。そんな実感はないけど、何かが悪さをしている可能性は十分にあった。


「エリル…………これさ。ぼく、おかしくなってるのかな」


 自分はクラディス・ヘイ・アルジェント。

 そして、平野明人だ。


 だけど、どこか、別人になっていっている気がする。

 何かによって、自分が、自分らしくなくなっていっている。

 明らかに態度が大きく、そしてワガママで、欲深くなっている。それが少し、怖く感じる。

 まるで、異世界に染め上げられているような……感覚が。


「そうですね……」


 エリルは神妙な面持ちのまま。

 

「──もしかしたら、思春期も関係があるかもしれませんね」


「へっ……? 思春期……」


「です」


 緊張感が漂う中で聞こえたその言葉はなんとも場違いに聞こえた。

 前にもエリルはそんなこと言ってた……けど。


「ちょうど、ますたーくらいの年代の子はそんな感じですよ?」


「で、でも……ぼく、中身は大人だし……」


「今は子どもじゃないですか。思春期なめんじゃねーですよ」


 まあ、たしかに12歳とか、13歳とかは丁度多感な時期だ。


 父親が持っているそういう本を夜な夜な読んだり、コンビニのそういうコーナーを横目でチラチラと見たり、DVDショップの奥側のコーナーに興味を持つ時期。

 男の子なら誰でも訪れるヤツ、だけど。


「思春期だけ……? 亜人は関係ない?」


「関係はあるとは思いますよ? それこそ、絶滅危惧種が繁殖しようと思うとしてるみたいな。英雄が色を好むってのも当てはまると思います」


「あ、この右手のこととかは」


「それは関係ないんじゃないです? 上手く隔離されてるみたいですし……いや、でも魔族の攻撃性が精神に影響を与えている可能性もなくはない……か?」


 えぇ、こわ。


「……まぁ一番は思春期だと思います! 体が大人になろうとしてる。他のことは微々たるものでしょう!」


「と、いわれても……」


 いまいち、ピンときてない自分がいる。


「ますたー、考えてみてください。元の世界の多感な時期、さっきみたいに誘惑してくる幼馴染がいたらどうします?」


「…………こまる、かも」


「やることやるに決まってますよ。だって、人間だし、男の子だし。そういうのは仕方がないんです。むしろ、誘惑してきたコイツがいけないんです」


「エリル? 怒ってる?」


「ずっと仲良かった男の子。……それも、ちょっといいなぁって思ってた子が奪われた気持ちです」


 わぁ……。


「えーと、ごめんね? というか、大人なキスだけで大げさな」


「大袈裟なんかじゃないですっ! そうだっ! わたしともやることやりましょう! 数えるのが億劫なくらい歳を取ってますけど、いいですか!?」


 上着をバッと脱いで真剣な目で見てきた。そんな顔されても。


「あははー、えーと……エリルはそういう目で見れないかな」

 

「──────」


 すっごい絶望をした顔になっちゃった。

 ぼく、そんなにいい男じゃないのになぁ……モテるのは男としては嬉しいけど。

 

「エリル。ぼく、女たらしじゃないから何とも言えないけど……エリルはぼくにとって特別な人で、大好きだよ」


「……うぅっ……慰めなど要らぬッ!」


 あ、体内に消えていった。


「あはは……」


 でも、ちょっと色々と理由が分かってよかった。

 

 この体は……亜人として成長をしていて、どうやらソレがオラオラ系というか、THEオスみたいな性格らしい。生物学的に強いオスってことはまぁ、そういうことだもんなぁ。


「まだまだ成長をするとすると……こっから……厳しいだろうなぁ……それに」


 加えて……この体。


「二度目の思春期かあ……」

 

 要するに今の僕の体はこんな感じの状態らしい。


 ◯最上位種として自覚し、覚醒をし始めている。

 ◯右手の魔障から体の精神が侵食されている可能性。

 ◯思春期


 こうみるとすごく不思議な体をしている。はじめの二つに比べて、最後の思春期だけなんか普通の顔してるのが面白い。でも、一番影響を与えてる可能性があるのが思春期って。


「思春期ってそれくらい大変なんだなぁ……」


 なんかちょっと思考放棄をしてる自分がいる。

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