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 何か無理をしているような感じではなく、いやだったという素振りもない。


「あぁ、そう……だね。既成事実……か」


 これは、あれか。

 アンの性知識に関係がある話だ。

 ペルシェトさんは『男を逃さない方法』は教えたけど、具体的にどこまでしたらいいかとかは言っていないのだろう。

 だから、たぶん、こんな生殺し的な展開で終わってしまったのだと思うが。


「アン……はさ、子どもってどうやって作ると思う?」


「こども、ですか……?」


 うーん、となやんだような素振りを見せた。


「キスをしたら、コウノトリが連れてきてくれると……昔に両親が言ってた気がします」


 わぁ……やっぱり。性知識がキスが最上級で止まってるんだ。

 こんな世界でこれほどまでに純粋な子がいるなんて。

 ……の割には、さっきの積極的なアプローチは……意味も分からずに動いていたのか。


(……)

 

 なんだか、一気に恥ずかしくなってきた。

 無知な子が腰を押し付けてきて、胸も押し付けて……。


「はああ〜…………」


「あ、あるじ?」


 でも、正直、ぼくの気持ちは晴れていない。

 きょとんとした顔で覗き込んでくるアンの顔に、お腹の下が熱くなった。


「…………」


 でもここで手を出したら問題になるよなぁ。

 アンの”最初”をダンジョンで奪うだなんて、ちょっと考えると最悪な野郎だと思うし。

 ちゃんと相手のことを考えると、ムードだったり、場所だったりは考えたほうが、いいのは……分かってる。


 だが、ごめんなさい。


 ぼくも男の子なんです。


「……アンがぼくを離したくないから、キスをしたみたいにさ」


 さっきよりも距離が離れても、まだ手が届く範囲にいるアンの手を引いた。


「ぼくもアンには逃げてもらいたくないんだ。だったら、どうしたら良いと思う?」


「どうしたら……女の子を、満足、させる……とかですか? えへ……今、満足はしてますが」


「ならいっか〜」といつもなら言うんだろう。


 正直な話をすると、今はアンの好意がぼくの方を向いているけど、明日、明後日……それかいくつかの日を跨ぐと、アンの好意が誰かに向くかもしれない。

 ぼくはこの世界において、そこまで魅力的な人間じゃない。

 というか、転生者である時点で傷物というか、相手にされない。

 

 そんな中で、悩みを共有できる存在は貴重だ。なおかつ……アンは可愛い。

 従者だ、奴隷だ、そういうのは抜きにして、彼女にはずっと横にいてもらいたいと思っている。

 

 とか言いながら、このその気にさせたんだから、発散をさせてほしいというワガママもありつつ。

 

「だったら、ごめんね。怖いかもしれないけど──」


「あ、あるじ……? なにを」


 少し腰の引けたアンの唇を先程の優しいやり方ではなく、強引に奪い、舌をねじ込んだ。

 

「!!!????」


 グイッと首の後ろに手を回し、呼吸を奪っていく。


「っぱ、ぅ、あっ……っ!」


 目がチカチカしてるアンの顔を見上げながら、口内を蹂躙していく。

 どれくらい繋がっていたかは分からないが、苦しくなって息継ぎをするために顔を離すと、唾液の橋がかかった。


「はぁ……はぁ……っ」


 何が起きたのか分からないまま、新たな快感に目を見開いて、口から唾液が滴っていくアンの表情──服もはだけて、褐色肌があらわになっているその姿を見て。


 理性なんて、弾けとんだ。


(エリル。起きてたらごめんね──)


 一応、断りをいれておく。

 起きてたら気まずいだろうなぁ、て。

 でも、ごめん。もう、止まらないんだ。



 ………………

 …………

 ……





「…………つかれた」


 事を終えて、後片付け。

 若い体ってすごい。……継続時間というか、体力というか。

 アンも剣闘士なだけあって、体力がすごいあるし。でも、途中で気絶をしてしまった。

 上手くリードはできたとは思う。初めてって、本当に怖いだろうし、異物感はすごいだろうから。


 なにはともあれ……うん。

 地面で横になっていて、ぼくの服を被せているアンを見て、唇に手を当てた。

 

「……大人のキスまでで。なんとか踏みとどまれた」


 勢いで行ってしまいそうな所をなんとか堪えた。

 本当に危なかった。


(さすがにダンジョン内で初めてを奪うだなんて最低だもんな……あぶない……若いって恐るべし)


 理性が爆発したが、すぐに立て直した。ここらへんは大人な部分が上手い具合に動いてくれた。

 まぁ、やることやったとしても……まだこの体、精通してないだろうし。


「性知識が大人なのに、体は子どもだから変な感じするな……」


 アンが寒そうにしていたので服をかけ直そうとして、行為中を思い出して、ササッと直した。


「ダンジョンの最速記録を狙ってるのに……何やってんだって話だ」


「ますた〜?」


「アンッ──じゃなく、エリル……」


 にやにやとした顔のエリルが出てきた。

 

「途中で気づきましたけど、どうしたんですかぁ? 積極的じゃあないですか。あらあら……女の子をこんなめちゃくちゃにしちゃって。優男のますたーがねぇ。狼になって」


「……仕方ないでしょ。止まらなくなったんだ……。ぼくだって、男だし」


「亜人ですからね。仕方ないですけどねー……」


「亜人とか関係ある?」


「一人しかいないんですよ? 王たる器を持つ種族ですから、女の子の一人や二人はいてもらわないと示しが付きませんよ」


「二人って。あとは誰も考えてないよ」


「わたしは置いてけぼりですか?」


「煽らないでって。エリルはぼくのことなんて眼中に無いでしょ? 観測者さんなんだから。神様とかたくさんいるでしょうに」


「ふっふっふ。鈍感ですねぇ〜。まぁ、ますたーらしいといえば、そうか」


「なにさ」


「いーえ? ただ、夢中になって気がついてなかったみたいですが……上のコレ気がついてます?」


「上……?」と言われるがままふいと目を上げると、そこにはボードが浮かんでいた。「えっ」


 今度はなんだ、と思ってたぐり寄せてみた。

 そこに書いてあったのは……。


『王たる器を持つ者が、己のモノを支配する欲を見せつけました。種族スキルが追加されます』


 その下にあったのは、なんとも仰々しい名前のスキル。

 

「……【支配者領域】」



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