358 順調な迷宮攻略の模様
「あ、あーー。えー、うーー、おっ、繋がったかな?」
ほのかに光る通信魔導具を手にして、消えゆくモンスターの塵を足で払いながら上を見上げた。
「今、5階層をクリアしました」
魔素が晴れた状態で地上に居るペルシェトさんに連絡を入れてみた。
これで通じているのかなぁ。
『えっ、えっ!? もうクリアしたの? だって、まだ……』
通信魔導具越しに声が聞こえた。通じたみたい。何気初めてやるからできるか不安だった。
最西の時にはぼくが忘れちゃってできなかったし。
「アンがどうも楽しくなっちゃったみたいで」
5階層の端でくあとあくびをしてるアン。
ティナ先生との訓練の後にあんなスキルを習得してるとは……。
アンが5階層の戦闘で見せたのは──「能力向上」というスキル。位置的には身体強化の上位互換のようなスキルだ。ソレを使っていた人といえば……昔にシルクっていう戦闘奴隷と一緒にいたフーシェンの男冒険者が使っていた気がする。
『にしても……まだ一日しか経ってない……んだけど。なにしたの?』
困惑したようなペルシェトさんにぼくも思わず苦笑い。
「普通に頑張りました」
『……納得できるからなんとも言えない。で、どう? 魔導具は』
「あ、そうです。これ、すごいですね……」
『最初はびっくりしたでしょ?』
「はい。この映像も見えてるってことですかね?」
片手で持った通信魔導具を離して、手を振ってみせた。
『見えてる見えてる』あ、画質の悪いホログラムみたいなのが確かに見える。照明の関係で見えにくいけど。『あと、通信した日にちや時刻も記録してくれてる。最近の技術の結晶なのだ』
「そりゃあすごい……」
これで5階層を2回クリアして「10階層を達成しました!」って報告をしてもバレる訳だ。
それにしても映像まで通信することができるとは。
……まあ、広場に映像モニターがある世界だ。何をしてもおかしくはないけど……絶対に転生者の影響だよなぁ、アレ。
闘技場のパネルというか、タブレットも絶対に転生者が噛んでるだろうし。ファンタジーの世界にそういうのがあると、親近感はあるけど、ちょっとなぁー……。
『それで? ちょっと休憩して行く? 休憩時間は一時間までならオッケーだよ』
「うーん。アン、休憩はどうする?」
「いえ。構いません。行きましょう」
「だそうです」
『なら、記録は続行ね。3分後くらいから再開するから、それまでに魔石とかそういうのを取ったりしてね』
「分かりました」
通信魔導具の明かりが消えると、ぼくも息を着いた。
「じゃあ、魔石と……今回はドロップ品は壊さなかったね」
「反省を活かしました」
5階層にいたモンスターは骨の鎧をつけたオークが二体いた。
戦いやすい相手だったからすぐに倒せたし、持っていた武器が吸収されることなく手に入れることができた。
大きな大きな大剣だ。ムロさんが使っていた大剣と同じくらい。売ればいい値段になりそう。
(ただ、ちょっとダンジョン内で振り回すのは厳しそう。念の為に持っておくくらいにしとくか)
「じゃあ、行こう。六階に」
階段を降りていく。段々と魔素が濃くなっていくのを感じる。
そして、六階層に踏み入れたと同時に、感知を走らせた。
──最西のダンジョンでやったのと同じだ。
魔素感知の応用で、罠の感知。
ダンジョンの構造はほとんど一緒で、魔素の濃度だけが違うというだけ。
そこに異物としてあるのが罠でありモンスターだ。そのため、壁や地面を『白』として異物を『黒』としたら──ほら、見える。
「やっぱり、増えてきた」
ぼくらがダンジョン攻略が順調な理由は、普通に頑張ってるのもあるけど、過去の経験があるからだ。
最西のダンジョンだけでも三回は潜った。その時にある程度の具合が分かったのだ。
ダンジョンで障害となるのは、罠、そしてモンスターのみである。
水、食料は十分あるからね。まぁ、罠を感知してもアンは普通に破壊するから、魔素感知も必要が無い気がする。
「よぉし」ぐっぐっと体を動かし、隣のアンを見やった。「走ろっか」
「負けませんよ?」
「勝ち負けなんてないからね? あと、その前に」
すぐに勝負事に持ち込もうとするのは悪い癖だぞ。
といっても、モンスターの討伐自体もアンが大体壊滅させている。
地図なんて今回はないから手探りだけど……その点も一応、考えては来ている。
手のひらの上に火球を作った。それもたくさん。
そして、それらに魔素の紐をつけておく。
「じゃあ、正解の道はどこかな──っと」
通路に向けて放つと、正解の道が分かる。
ダンジョンというだけあってここは迷宮で、とても入り組んでる。
行き止まりが多いし、意味の分からない縦穴とか、ガスが充満した部屋とか色々。
じゃあ、正解の道っていうのはどういう道かと考えてみると、モンスターが他の所よりも多く、行き止まりではなく、下に続く階段がある場所が正解なのでは、となる。
さっきの火の玉が消えたら行き止まり。消えないのがあれば、そこが正解の道ということで。
「六階はだいぶ入り組んでるみたいだなぁ……」
魔素の紐は、ノアの使っていた技術の応用。
入り組みすぎて、火の玉の数が足らなかったみたいだけど、なんとか正解の道にいったのがある。
その魔素の紐を辿れば、次は七階だ。
「でも、わかった。走ろう」
「ちょっとくらいモンスターとか、寄り道、とか」
「いいよ。でも、ご飯をそろそろ食べたいからほどほどにね?」
こうしてぼくらは最短距離で、ダンジョンの攻略ができていた訳だ。




