357 吉報! ぷー太郎からの脱却!
……えーと、ということは。
レナさんは女王様で。
王様になれるのは嘘がわかる……ってことで。
じゃあ、レナさんは……わっ!
「うそおー! 嘘が分かるんです!?」
「そう。で、今のところ、アルマちゃんは一度たりとも嘘をついていない! 人の心を持ってるってことさ」
「!」女王様のウインクを受け取り、ルルを見やって「!」ため息をつきながらも納得したような顔で。
「せんせいっ! すごい! うそ、わかるんだって!」
「だから連れてきたのさ。わからない時はコイツに会わせたら一発でわかるようになるんだからね。王族だけに発現する【看破】。色々とお世話になった」
「? 先生も何か私でわからないことがあるの?」
だから連れてきたってそういうことだよね? 現代文的に。
「あっ……もしかして、なんで真面目に取り組まないのか、とか知りたいの?」
「……いーや。私の件はもう見たから十分さ」
「見た? なにを」
「うっせ。今はあんたの質問に答えてる暇なんてないの。それで、訓練場はいいんだろうね。ちゃんと書面でおくれよ? 口頭だったら今回みたいなことが起きたら困るんだ」
「わかったわかった。その代わり、その魔族にわたしの手伝いを頼みたいんだ」
「嫌だね」
「痛いことなんてしない。最近できたばかりの助手くんを連れて行かれて手が回ってないんだ」
「ルルはね。こう見えて仕事人でね。それにさっきみたいに言葉がキツイ時があるから、兵に苦手意識を持たれてるんだ」
「さっきのはわざとだっての。それに、別に嫌われてなんかない……と思う」
うわ、急にかわいい。
「交換条件だ。わたしを手伝えば、訓練場の使用許可を出そう」
「森人の。悪いことは言わないから止めておいたほうがいいよ。この子は言葉も常識も知らないんだ」
「言葉も常識も無くてもできる仕事はある。ソバドアさん、あなたと同じく私も研究している分野があるんだ。……魔石の効果的な運用。魔素の伝達。自動で動く兵を作りたいんだ。そのためには魔族の仕組みを理解しておきたい」
「解体するつもりかい?」
「言ったろ。痛いことはしないって。単なる意見交換と雑務をしてもらいたいだけさ。会話できる魔族はいれど、友好的な魔族はいない」
「はあ……だそうだ。どうする? アルマ」
「どうするったって……」
「仕事をしてるなら、それよりも良いお金を出そう」
「いやっ……しごと……してなくて……」
「? じゃあ、どうやって生活を──」
「おっ、おっ……」
「お?」
「弟っ! のすねをかじって生きてますッ!」
正直に告白をしたら、事情を知らない二人の目が点になってた。
「はっはっは!! いいじゃないか。ルルはこの国の元帥様だ。それに仕えるとなると、良いお給料を貰える」
「! それって、そのっ、どれくらいになりますか! 冒険者の……えーと……金等級、とかそこらへんの稼ぎに」
「そんなのと比較されてもなぁ」悩む様子のルルは唇を尖らせて。「お金っていうのはその人にしかできない仕事だったら跳ね上がるものだ。魔族……あー、アルマ? の望みならばある程度の交渉は受け入れるつもり」
「じ、じゃあっ……弟の稼ぎよりも多くもらいたいですっ。それで……家賃、とか、食費とか……」
「はいはい。……で、その弟っていうのも魔族?」
「いや……えーと」
やばい、なんて言ったらいいんだろう。
「魔族ではなくて……でも、面倒を見てくれてる……男の子です」
「複雑なご関係なのね。まぁ、今はいいや。じゃあ、問題ないってことでいい?」
「は、はいっ! それでっ、お願いします!」
「よかったじゃないか。新しい訓練場と、仕事までもらえて」
「へへへへ。これで、ちょっと発言権を持てる……へへ」
今までの家庭内の貢献度は0。居心地はいいけど、置物みたいな感じだった。
お兄ちゃんもアンちゃんも何も言ってこないけど「なにかやらないと感」はすごかった。
だから皿洗いとか、掃除とか頑張ったけど……全部から回りするし……。
(これで、ソファでぐーたらしたり、ご飯を催促したりできる! やったぜ!)
今までは要求しても「だって、オマエ働いてないじゃん」で一蹴されるのが怖くてしなかったけど、今度からはそうじゃないんだ。
──がちゃ。
「?」
「失礼します」
また来客が来たかと思うと、見知った人たちが入ってきた。
「あっれ〜……えーと、なぐもさん……? どうしてここに?」
「あら。こんなところに知った人がいるとは」
「むっ。……あ、ソバドアもおるのか」
「おぉ、ティナ嬢も一緒か」
後ろからひょこっと顔が覗いたのは、アンちゃんとお兄ちゃんの先生。ティナ先生って呼ばれてる。
ワインレッドの髪色で、ナグモさんと同じ髪型にしてるからたぶん姪っ子とか、妹とかそういう感じなのだと勝手に思ってる。
「近場で魔族の反応があったと聞いて、女王様に呼び出されたんですよ。この子と一緒にね」
あ、それ私です。
というか結界の外? で戦ってたって言ってたけど、結局バレてたのか。
魔素使うとすぐにバレちゃうみたい……大変だ。
「そのことだが解決した。だから帰ってもらっても構わないぞ〜」
「というと? 倒したんですか?」
「いんや。わたしの勘違いだったみたいだ。なにより結界には反応が残っていないしな」
そうですか、と話すナグモさんがこっちを見た気がする。
あっれ、魔族ってのは伝わってないハズなんだけど……勘ぐられてる?
「ということは、呼び出され損な訳ですね」
「こっちだって暇じゃないんだぞ! いい加減にしてくれ!」
「そこまで忙しくもないんですがね。……ですが、できる限りは王国軍だけで対処していただけると助かります。ティナちゃんならまだしも、私はただの組合員なんですから」
「まぁまぁ。ほら、ナグモ坊とティナ嬢もお菓子を食べていくといい」
「それはもらいますけど」「やったー!」
清々しいまでの掌返し。皆さん仲良いみたいで。ちょっと疎外感だ。
でも、もう私の分のお菓子なさそう。喉乾いたな、何かもらえたりしないかなぁ。
「あ、そうだ。アルマさん」
「どうしました?」
「彼、ダンジョンをクリアしたみたいですよ」
彼? 彼って……えっ、もしかして──お兄ちゃん?
「えっ……ホントです?」
「嘘をつく理由もないんですが……その手続き中に呼び出されたので」
「ということは……帰ってくる! あと無事だったし、クリアもできたし!」
わーい! と両手を上げてバンザイをした。
思ったより早かった。だって、まだ……2日? 3日だっけ? それくらいしかかかってないもんね?
やったーー。お兄ちゃんと会える〜。
「でも、さすがに早すぎないかい……? この前に出ていったばかりじゃないか」
「たしかに。ちょっと早すぎるか」
「えぇ。だから、ティナちゃんはともかく、私のほうは忙しいんですよ」
ナグモさんはどこか誇らしげに笑った。
「なんていったって……下位ダンジョンの最速記録が更新されたんですから」




