355 盗み聞きばかりの軍人さん
「盗み聞きしてるヤツがいるとは思ってたが……軍人は礼儀のなってないのが多いねぇ」
「不思議な反応をする人が入ってきたら警戒もするだろう。それも、女王サマの部屋に入って仲良く話してるんだ」
光に完全に照らされると、眩しく感じた。
その子の周りにはふわふわと何かが浮かんでいるような気がする。特別感というか、目を引いてしまう星の下に生まれた子というか。
神々しいってこういう時に使うのが正しいんだろうなぁ。かわいいとか、美しい、とかじゃなく。目が留まる顔をしている。
「ルル。この人は」
「初代の国定魔導士。ソバドアだろう。聞いてたさ……顔が本当に変わらないんだね」
「歳を取るのをやめたのさ。女なら気持ちが分かるだろう?」
「わたしは森人なんでね。少ししか理解してあげれないな」
「それも、上位森人だろう。気配がアイツらとは違う」
先生は足を組み替え、ルルと呼ばれたお団子ちゃんの方を向いた。
「今の元帥は上位森人だと聞いてはいたが……随分と世俗に馴染んだ上位森人だこと。森に引っ込まなくて良いのかい?」
「引っ込みすぎて飽きたのさ。すると、女王サマに掴まって、あれよあれよと元帥さ。落ち着かせてほしいものだよ」
ジィと二人が相手を確かめるような視線を飛ばす。
うぅ、怖い。女社会って息苦しいんだよなぁー……もっと平和に生きたいよお。
「ルル!」
と女王様が声を上げると、ルルさんこてんと首を傾げていた。
「名前で呼んでって言ってるでしょう! いつもみたいにっ、ほら」
「…………今はいいんじゃないかなぁ」
「呼ばないなら出ていっておくれ」
「いや、レナ。出ていかれると話が進まないから」
「だったら、呼ばせて」
ハチャメチャな女王様にルルさんはやれやれといった様子で。
「……マグダレナちゃん」
「そう! 私を年下扱いしてくれるのなんてルルくらいなんだから。あら、ごめんなさいね。どうぞ、お話の続きを」
何気ない茶々。そう感じたけど、雰囲気を和やかにさせるためにやったのだと気付いた。
緊迫していた空気を一気に自分の息のし易い空気へと変える……。
「はあ〜。……で、ルルでいいかい?」
「好きにしてもらえたら」
「なら、ルル。話は聞いていたんだろう? 訓練場を使わせておくれ」
「使用用途は」喋ろうとしていた先生を止めて。「嘘は付かないでよ?」
「……あたしは禁忌魔法を正しく後継させたいだけ。そのためにこの子に今、色々と教えてる」
視線が流れ、私で止まった。
ごくりと生唾を呑んだ。目が合うと、本当にキレイだ。
お団子の髪型が雰囲気を柔和にしてるからまだ抑えられてるけど、目が離せない。
「……いいよ。空いている訓練場の使用許可を下ろそう」
「感謝するよ。ほら、アルマも」
「あ、ありがとうございます!」
なにがなんだかわからないけど、話が落ち着いたみたい!
やったー。でも、これで毎回王国の外で、森の中を歩かなくていいんだー。
雪でグジョグジョだったら大変だったし、シンプルに登山みたいな時もあったし……これで。
「ただし、その前に聞かせてほしいことがある」
「?」
下げていた頭を上げると、わたしに指がさされていた。
「君、魔族だろう。なんで、こんな場所にいるんだい」




